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こんばんは、葵です
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こんばんは。
葵です。
健二がどんな人か知っている人達は何があったのか、予想が付くと思いますが説明します。
ってか糾弾します。
「葵の方が歳が近いし話も合うだろう」って意見には「話が合う」って所に異論はあったけど、一応妥当だと納得して引き受けた。
しかし待ち合わせ場所に向かう時点で、この役割分担が間違いだったと確信した。
「右だ」、「真っ直ぐ」、「この電車だ」って背中からこっそり囁くのだ。
クライアントの楓ちゃんとはまだ合流して無いのだから、言いたい事があるなら普通に話せばいいのに、振り返れば「俺はいないよ?」って知らん顔をしようとする。
不審にも程がある。
そう来るならこっちもこっちで徹底的に無視を決め込んだけど、そうもいかなかった。
神社に行けば、隠れているつもりなのか腰を屈めてお賽銭を渡してくるし、お昼ご飯にって行った回転寿司では何故か席を取って、こっちだってニコニコと手を振ってるし、ウインドウショッピングしているとラックの影から変な服を差し出して「これを勧めろ」ってウィンク……
邪魔なんだよ!!
ウザいんだよ!!
気になるんだよ!!
見えてんだよ!!
丸見えなんだよ!!
話しかけなければそれでいいと?!
無言で近い所をうろちょろされる方が不気味で不自然なんだよ!!
最後の方はもう真横に並んでニコニコされて限界が来た。「帰れ」って言ったら「俺がいなくても大丈夫か?」だって?!
健二がいるから倍疲れたよ!
「健二さんが馬鹿だって改めて思い知りました」
「お前な、言いたい事があるならはっきり言えよ、葵と楓ちゃんを観察するのが俺の役目だろ」
「見てるのが仕事でしょう、何で真後ろで会話を聞いてるんですか、何で先回りするんですか、何で席を取ってるんですか」
「え?……そりゃ…」
平日だかと何も考えずに選んだ大型の商業施設は予想外に混んでいたのだ。ちょうど昼時でどこの店も既に行列が出来ていた。
特に二人の間で話題に出た回転寿司は人気があるのか店先に人波が溢れている。
あんまりにも待ち時間が長いとせっかくの雰囲気が壊れるかもしれないから先回りして席を確保した。
ちょっと気をきかせただけだ。
「楓ちゃんには見えないように気を付けたからいいだろ」
「見えないように?どこが見えないようになんですか、馬鹿みたいに嬉しそうにこっちこっちって手を振ったでしょう」
「それは……葵が中々気付かないからだろう」
「じゃあ何で真後ろの席に座るんですか」
「楓ちゃんがどんな子か客観的に聞くチャンスだろう」
「混ざりたいなら混ざればいいでしょう、無言でコソコソする癖に丸見えなんて楓ちゃんから見たら不気味としか言いようがないです」
「それは………葵がボーっとしてるから楓ちゃんが退屈そうに見えてだな……見えてた?」
「見えてたも何もないです!馬鹿!」
「そんな事を言われたって……」
馬鹿は酷い。
大体葵は人の事を馬鹿馬鹿と言い過ぎる。
物凄く心配だったけど、帰れと言われたから何も言わずに帰ってきたのだ。そりゃ楓ちゃんの観察と言うより葵の観察になってたけど、デートが上手く行かなければ仕事も上手くいかないのだ。
反論しようとすると「ちょっと待て」と椎名が手を上げた。
「何だよ珍しいな、口出しすんのか?言っとくけどこれは喧嘩じゃなくて仕事の話だぞ」
「いや……それはいいんだけど何だか面倒臭いから……」
「だから?何?」
「俺は帰ってもいいか?」
「駄目です!」と喚いた葵が逃げようとする椎名の腕にぶら下がった。
「何やってんだよ、いいだろ別」
「よくないよ!椎名さん!帰らないで!見捨てないで!俺と健二さんではこの件は無理なんです!楓ちゃんの要望はストーカーとか暴走族なんかよりも難易度が高いんです。客観的な常識が欲しいんです!」
「え~……」とあからさまに嫌な顔をした椎名には、楓ちゃんから請け負った一見簡単そうに見える安い依頼がどんなに難しいかわかっているらしい。
いつもならノリノリで口を出して来るくせに、
「もう死ぬ」ってくらいの必死な葵をズルズルとドアまで引きずってから、「何もしないからな」と断りを入れて渋々と戻って来た。
そしてソファに座り、膝に葵を乗せる。
「………ちょっと待て葵。何でそこに座る」
「逃げないように重しです」
「重しなんて必要ないから俺の横に来いよ、逃げたら逃げたでいいだろ」
「だから俺と健二さんじゃ楓ちゃんの依頼は無理なんです」
「何でだよ」
「だって……健二さんが邪魔だから……」
「邪魔ってな」
「その邪魔じゃ無いんです、いや、実際に邪魔だったけど、物凄く邪魔だったけど、ウザかったけど、そうじゃなくて、俺の常識って健二さんと同じになっちゃってるって言うか、健二さんに染まってるって言うか、嫌われる原因を教えて欲しいって言われても他の人がどうなのか、普通の人がどうなのか…もうわからないんです」
「どういう事?」と椎名が葵の腰を引き寄せて肩に顎を乗せた。葵も何だか当たり前って顔で椎名に凭れてる。
何だそのラブイチャは。
この事務所に来た頃は椎名に対しては特別ピリピリしていたくせにいつの間にか仲良くなったもんだと思う。
「どういう事か聞く前にさ、葵、お前椎名の膝から降りないか?気になって話が出来ない」
「じゃあ丁度いいから健二はちょっと黙ってろ、葵くん、常識が同じって何?例えば?」
「まず葵くんの話を聞こう」と椎名が言うと、葵はちょっと困った顔をして手で丸を作った。
葵です。
健二がどんな人か知っている人達は何があったのか、予想が付くと思いますが説明します。
ってか糾弾します。
「葵の方が歳が近いし話も合うだろう」って意見には「話が合う」って所に異論はあったけど、一応妥当だと納得して引き受けた。
しかし待ち合わせ場所に向かう時点で、この役割分担が間違いだったと確信した。
「右だ」、「真っ直ぐ」、「この電車だ」って背中からこっそり囁くのだ。
クライアントの楓ちゃんとはまだ合流して無いのだから、言いたい事があるなら普通に話せばいいのに、振り返れば「俺はいないよ?」って知らん顔をしようとする。
不審にも程がある。
そう来るならこっちもこっちで徹底的に無視を決め込んだけど、そうもいかなかった。
神社に行けば、隠れているつもりなのか腰を屈めてお賽銭を渡してくるし、お昼ご飯にって行った回転寿司では何故か席を取って、こっちだってニコニコと手を振ってるし、ウインドウショッピングしているとラックの影から変な服を差し出して「これを勧めろ」ってウィンク……
邪魔なんだよ!!
ウザいんだよ!!
気になるんだよ!!
見えてんだよ!!
丸見えなんだよ!!
話しかけなければそれでいいと?!
無言で近い所をうろちょろされる方が不気味で不自然なんだよ!!
最後の方はもう真横に並んでニコニコされて限界が来た。「帰れ」って言ったら「俺がいなくても大丈夫か?」だって?!
健二がいるから倍疲れたよ!
「健二さんが馬鹿だって改めて思い知りました」
「お前な、言いたい事があるならはっきり言えよ、葵と楓ちゃんを観察するのが俺の役目だろ」
「見てるのが仕事でしょう、何で真後ろで会話を聞いてるんですか、何で先回りするんですか、何で席を取ってるんですか」
「え?……そりゃ…」
平日だかと何も考えずに選んだ大型の商業施設は予想外に混んでいたのだ。ちょうど昼時でどこの店も既に行列が出来ていた。
特に二人の間で話題に出た回転寿司は人気があるのか店先に人波が溢れている。
あんまりにも待ち時間が長いとせっかくの雰囲気が壊れるかもしれないから先回りして席を確保した。
ちょっと気をきかせただけだ。
「楓ちゃんには見えないように気を付けたからいいだろ」
「見えないように?どこが見えないようになんですか、馬鹿みたいに嬉しそうにこっちこっちって手を振ったでしょう」
「それは……葵が中々気付かないからだろう」
「じゃあ何で真後ろの席に座るんですか」
「楓ちゃんがどんな子か客観的に聞くチャンスだろう」
「混ざりたいなら混ざればいいでしょう、無言でコソコソする癖に丸見えなんて楓ちゃんから見たら不気味としか言いようがないです」
「それは………葵がボーっとしてるから楓ちゃんが退屈そうに見えてだな……見えてた?」
「見えてたも何もないです!馬鹿!」
「そんな事を言われたって……」
馬鹿は酷い。
大体葵は人の事を馬鹿馬鹿と言い過ぎる。
物凄く心配だったけど、帰れと言われたから何も言わずに帰ってきたのだ。そりゃ楓ちゃんの観察と言うより葵の観察になってたけど、デートが上手く行かなければ仕事も上手くいかないのだ。
反論しようとすると「ちょっと待て」と椎名が手を上げた。
「何だよ珍しいな、口出しすんのか?言っとくけどこれは喧嘩じゃなくて仕事の話だぞ」
「いや……それはいいんだけど何だか面倒臭いから……」
「だから?何?」
「俺は帰ってもいいか?」
「駄目です!」と喚いた葵が逃げようとする椎名の腕にぶら下がった。
「何やってんだよ、いいだろ別」
「よくないよ!椎名さん!帰らないで!見捨てないで!俺と健二さんではこの件は無理なんです!楓ちゃんの要望はストーカーとか暴走族なんかよりも難易度が高いんです。客観的な常識が欲しいんです!」
「え~……」とあからさまに嫌な顔をした椎名には、楓ちゃんから請け負った一見簡単そうに見える安い依頼がどんなに難しいかわかっているらしい。
いつもならノリノリで口を出して来るくせに、
「もう死ぬ」ってくらいの必死な葵をズルズルとドアまで引きずってから、「何もしないからな」と断りを入れて渋々と戻って来た。
そしてソファに座り、膝に葵を乗せる。
「………ちょっと待て葵。何でそこに座る」
「逃げないように重しです」
「重しなんて必要ないから俺の横に来いよ、逃げたら逃げたでいいだろ」
「だから俺と健二さんじゃ楓ちゃんの依頼は無理なんです」
「何でだよ」
「だって……健二さんが邪魔だから……」
「邪魔ってな」
「その邪魔じゃ無いんです、いや、実際に邪魔だったけど、物凄く邪魔だったけど、ウザかったけど、そうじゃなくて、俺の常識って健二さんと同じになっちゃってるって言うか、健二さんに染まってるって言うか、嫌われる原因を教えて欲しいって言われても他の人がどうなのか、普通の人がどうなのか…もうわからないんです」
「どういう事?」と椎名が葵の腰を引き寄せて肩に顎を乗せた。葵も何だか当たり前って顔で椎名に凭れてる。
何だそのラブイチャは。
この事務所に来た頃は椎名に対しては特別ピリピリしていたくせにいつの間にか仲良くなったもんだと思う。
「どういう事か聞く前にさ、葵、お前椎名の膝から降りないか?気になって話が出来ない」
「じゃあ丁度いいから健二はちょっと黙ってろ、葵くん、常識が同じって何?例えば?」
「まず葵くんの話を聞こう」と椎名が言うと、葵はちょっと困った顔をして手で丸を作った。
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