恋愛ゲームの世界から出られません

プロローグ

「アリアお姉様、大丈夫です。
きっと上手くいきますよ。」

半ば自分に言い聞かせるようにして、ドレッサーの前で不安そうに目を伏せている金髪の17歳の少女を励ます。
上手くいかなくてはならないのだ。
もし、ここで公爵子息との婚約が破棄されれば、ゲームオーバーになるだろう。
それだけは絶対に避けなくてはならない。
今回こそはちゃんとクリアせねば。

「そうだと良いのだけど...」

「私が今まで間違えた事はなかったじゃないですか。今回も大丈夫ですよ。
安心してください。」

大丈夫じゃないといけないのだ、じゃないともう一生現実世界に戻れなくなることを覚悟しなければならない。

「そうよね。
マリーがそう言うもの、きっと何も悪い事なんて起きないわよね。
ありがとう、元気が出たわ」

やっと自信がついてきたのか、彼女も微笑みを返し、瞳と同じ翠色のドレスの裾をひらりと揺らして、ドアに向かった。
これが最後の試練だ。
この舞踏会を無事に終わらせて、ハッピーエンドを見届ける。
そして、元の世界に帰るのだ。