そらに光る星~誇り高きぼっちの青春譚~

もやしのひげ根

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51.愛に包まれて

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「あ、あのね......そら君に話があるの」

 まぁだいたい予想はしていた。場所を探すといいながらも歩みに迷いが無かったし、今日はいつにも増して積極的だった。三井が竹田を連れていったのも不自然だしな。

「......なんだ?」
「............わ、私!そら君のことが好きです!だ、だから……私と付き合ってくだしゃい!」

 あ、噛んだ。至近距離で見つめる如月の顔は茹だったように赤い。 告白するというのはどれほど勇気がいることなのだろう。しかも同じ相手に2度告白するなど。
 だが、俺はその勇気に対して最悪の答えを口にしなければならない。今度は誤魔化さずに、俺自身が出した答えを。

「ごめん。付き合えない」
「......うん、知ってる。......ね、ここにいたのが私じゃなくてあかりちゃんだったら違う答えだった?」

 だというのに、如月はあっさりと「知ってる」などと口にした。断られると分かっていて告白したのか?そして、まるで俺があかりを選ぶかのような問いかけ。

「いや、答えは変わらない。俺は誰とも付き合う気は無い」 
「そっかぁ」 

 あかりは義妹として支えると宣言した。その事実は俺とあかりしか知らないのだろう。まぁ祭りの時も今日も、俺の隣を如月と竹田に譲っているから三井は気づいているかもしれないが......。 

「あー、それともう1つ。前に告白してくれた時、罰ゲームとかドッキリとか言って悪かった」
「......えっ」
「告白自体無かったことにしてしまえばいいと思ったけど、それも傷つける行為だったな」 
「ううん、おかげさまで諦めてやるもんかって思えたから大丈夫」 

「......俺の両親って子供のことなんか見向きもせずに両方とも浮気しててさ。まぁその浮気相手があかりの母親だったんだけど。で、中学でも色々あって、それで誰とも関わらないようにしようって決めたんだ。傷つくのも傷つけるのも嫌だったから」
「そっか......。でも私のことも、あかりちゃんのことも助けてくれた。そんな優しいそら君だから好きになったんだよ」 


 その時大きな破裂音とともに、俺たちは頭上から照らされた。 
 ——それは一瞬の出来事だった。
 俺の後ろで打ちあがった花火の音に気を取られたその瞬間——俺と如月の距離は0になっていた。
 さらに花火が数発打ちあがってようやく、硬直した俺から体を離す如月。俺は唇に残った感触に鼓動が高鳴っていくのを感じた。

「......ごめんね。だけどこれは宣戦布告。私は1度や2度フラれたくらいじゃ諦めないんだから。絶対振り向かせて見せるから......だから、覚悟しててね」

 そう宣言して微笑む如月。真っ赤にしながらも笑みを浮かべたその表情は、不覚にも可愛いと思ってしまった。

「悪いが、俺は恋愛よりまずは友達ってのを作るところから始めないといけないんでな」
「友達ならもういるよ。私にあかりちゃん、亜美ちゃん、ちぃちゃん、兵動君、静浦君。みんなそら君のこと友達だと思ってるよ?」
「そう、だな。好きとかそういう気持ちはまだ分からないから、まずはそっちと向き合いたい」

 ずっと、1人でいいと思っていた。そのほうがラクだし傷つくのも傷つけるのも嫌だったから。
 でもマイナスなことだけじゃない。一緒にいることで救われることもあるのだと知った今なら、違う答えを出せるかもしれない。 

「分かった。じゃあさ、まずは私のこと名前で呼んでみて?友達なら普通でしょ?」
「......愛衣」
「ふふっ。これで1歩前進だね!」

 それは俺のことを言っているのか、自分の恋を言っているのか。 

「まったく、お前は強いな」
「そりゃ、恋する乙女ですから!」

 そういうことを言いたいのではないのだけど。まぁたしかにこいつらの行動が恋の力なのだとしたらとても手ごわくて厄介だ。



「——ね。もっかい、する?」

 愛衣が自分の口を指して誘ってくる。

「......勘弁してくれ」

 本当に厄介だ。

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