51 / 52
51.愛に包まれて
しおりを挟む「あ、あのね......そら君に話があるの」
まぁだいたい予想はしていた。場所を探すといいながらも歩みに迷いが無かったし、今日はいつにも増して積極的だった。三井が竹田を連れていったのも不自然だしな。
「......なんだ?」
「............わ、私!そら君のことが好きです!だ、だから……私と付き合ってくだしゃい!」
あ、噛んだ。至近距離で見つめる如月の顔は茹だったように赤い。 告白するというのはどれほど勇気がいることなのだろう。しかも同じ相手に2度告白するなど。
だが、俺はその勇気に対して最悪の答えを口にしなければならない。今度は誤魔化さずに、俺自身が出した答えを。
「ごめん。付き合えない」
「......うん、知ってる。......ね、ここにいたのが私じゃなくてあかりちゃんだったら違う答えだった?」
だというのに、如月はあっさりと「知ってる」などと口にした。断られると分かっていて告白したのか?そして、まるで俺があかりを選ぶかのような問いかけ。
「いや、答えは変わらない。俺は誰とも付き合う気は無い」
「そっかぁ」
あかりは義妹として支えると宣言した。その事実は俺とあかりしか知らないのだろう。まぁ祭りの時も今日も、俺の隣を如月と竹田に譲っているから三井は気づいているかもしれないが......。
「あー、それともう1つ。前に告白してくれた時、罰ゲームとかドッキリとか言って悪かった」
「......えっ」
「告白自体無かったことにしてしまえばいいと思ったけど、それも傷つける行為だったな」
「ううん、おかげさまで諦めてやるもんかって思えたから大丈夫」
「......俺の両親って子供のことなんか見向きもせずに両方とも浮気しててさ。まぁその浮気相手があかりの母親だったんだけど。で、中学でも色々あって、それで誰とも関わらないようにしようって決めたんだ。傷つくのも傷つけるのも嫌だったから」
「そっか......。でも私のことも、あかりちゃんのことも助けてくれた。そんな優しいそら君だから好きになったんだよ」
その時大きな破裂音とともに、俺たちは頭上から照らされた。
——それは一瞬の出来事だった。
俺の後ろで打ちあがった花火の音に気を取られたその瞬間——俺と如月の距離は0になっていた。
さらに花火が数発打ちあがってようやく、硬直した俺から体を離す如月。俺は唇に残った感触に鼓動が高鳴っていくのを感じた。
「......ごめんね。だけどこれは宣戦布告。私は1度や2度フラれたくらいじゃ諦めないんだから。絶対振り向かせて見せるから......だから、覚悟しててね」
そう宣言して微笑む如月。真っ赤にしながらも笑みを浮かべたその表情は、不覚にも可愛いと思ってしまった。
「悪いが、俺は恋愛よりまずは友達ってのを作るところから始めないといけないんでな」
「友達ならもういるよ。私にあかりちゃん、亜美ちゃん、ちぃちゃん、兵動君、静浦君。みんなそら君のこと友達だと思ってるよ?」
「そう、だな。好きとかそういう気持ちはまだ分からないから、まずはそっちと向き合いたい」
ずっと、1人でいいと思っていた。そのほうがラクだし傷つくのも傷つけるのも嫌だったから。
でもマイナスなことだけじゃない。一緒にいることで救われることもあるのだと知った今なら、違う答えを出せるかもしれない。
「分かった。じゃあさ、まずは私のこと名前で呼んでみて?友達なら普通でしょ?」
「......愛衣」
「ふふっ。これで1歩前進だね!」
それは俺のことを言っているのか、自分の恋を言っているのか。
「まったく、お前は強いな」
「そりゃ、恋する乙女ですから!」
そういうことを言いたいのではないのだけど。まぁたしかにこいつらの行動が恋の力なのだとしたらとても手ごわくて厄介だ。
「——ね。もっかい、する?」
愛衣が自分の口を指して誘ってくる。
「......勘弁してくれ」
本当に厄介だ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】偽りの告白とオレとキミの十日間リフレイン
カムナ リオ
青春
八神斗哉は、友人との悪ふざけで罰ゲームを実行することになる。内容を決めるカードを二枚引くと、そこには『クラスの女子に告白する』、『キスをする』と書かれており、地味で冴えないクラスメイト・如月心乃香に嘘告白を仕掛けることが決まる。
自分より格下だから彼女には何をしても許されると八神は思っていたが、徐々に距離が縮まり……重なる事のなかった二人の運命と不思議が交差する。不器用で残酷な青春タイムリープラブ。
ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした
黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。
日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。
ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。
人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。
そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。
太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。
青春インターネットラブコメ! ここに開幕!
※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる