そらに光る星~誇り高きぼっちの青春譚~

もやしのひげ根

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42.ちーほー!

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 車を走らせてしばらく。到着したのは古民家風の一軒家。ここが錦野先生の実家だ。こういう古い家って趣があって落ち着くんだよなぁ。
 音が聞こえたのか、車が到着すると同時に玄関から人が出てきた。

「おお、来たか。いらっしゃい。ソラは大きくなったなぁ」
「ご無沙汰してます」

 車をぞろぞろと降りた俺たちに声をかけたのは錦野先生の父親、俺の伯父に当たる人だ。もうすぐ50になるはずだがまだまだ元気そうでなによりだ。 前回会ったのはいつだったか。たしか両親クズ共が険悪になる前だったな。 あの頃はよくここへ遊びに来たものだ。

「暑かったでしょう。そちらがお友達ね......あらあら可愛い女の子ばかり。さ、とりあえずお上がりなさいな」

 伯母さんはさっそく女子に視線がいっている。外で挨拶もなんだしということで玄関をくぐり全員が土間に入ると、真っ白な猫が1匹ちょこんと座って出迎えてくれた。

「うわぁ!真っ白な猫ちゃん!」
「可愛い~!」
「お前、ミコか。でっかくなったなぁ」

 指を近づけると、においを嗅いでから顔を擦りつけてくる。覚えていてくれたのか。靴を脱いで上がるとまとわりついてきて今度は足にグリグリと顔を押し当ててくる。しゃがんでみると、待ってましたとばかりに飛び込んでくるので抱き上げる。

「8年経っても相変わらずソラに懐いてるな」

 8年か。口にされるとそんなに経ったのかと実感してしまう。 ミコも昔はあちこちと走り回っていたのに今はこんなにもおとなしい。
 障子を開ければそこには一面の畳。懐かしいな。畳のにおいが好きで寝転んでるとよくミコが背中に乗ってフミフミされてたなぁ。......たまにやんちゃな誰かさんも乗ってきて潰されてた記憶もあるけど。

「お茶用意するから座って待ってて。彩加さやかは手伝いなさい」

 伯母さんはそう言って先生を連れて台所へと向かっていった。 テーブルが2つ並んでいるということはわざわざ出してくれたんだろうが、問題は誰がどこに座るかだ。全部で8人いるのに、男は俺と伯父さんの2人だけだ。
 伯父さんは奥のテーブルの端に陣取ったので、さりげなくその隣に座る。さらに隣にあかりを座らせればいいだろう。向かい側には端に伯母さん、俺の対面に先生が座るはずだ。あとの3人は勝手にしてくれ。

「さて、では自己紹介といこうか。彩加の父の敏成としなりだ」
「彩加の母、小百合さゆりです」
「私とソラはいらんだろ。はい次」

 まぁ俺たちは全員知ってるしな。隣のあかりを視線で促す。

「神楽坂あかりです。ソラ君の、義妹いもうとです」
「話は聞いていたがやっと会えたな。俺たちとも親戚なんだから気軽に接して欲しい」
「そうね。こんな可愛い妹が出来てソラは幸せものね」

 ノーコメントで貫こう。ウチに来たばかりのあかりを知らないからそう言えるんだし。あかりももう自分の名前を言う時に声が小さくならない。自信が付いたようで何よりだ。そのまま頑張って1人暮らししてくれよな。
 みんなが自己紹介しているなかで、俺はミコに構っていた。

「ほーら、お土産だぞ~」

 鞄からある物を取り出してミコの顔の前を右に左にと動かす。すると、ミコの首も一緒に左右に動いて面白い。

「ミコ、おやつ!」

 号令すると、ミコはすぐさま俺から飛び降りてお座りをする。俺が右手を差し出すとその上にちょこんとちっちゃい右手が添えられる。

「よし、いいぞ」

 許可を出すとすぐさま俺が左手に持ったチューブタイプのおやつに飛びついてペロペロと舐め出す。

「え、すごーい!猫ちゃんもおすわりとかお手出来るんだ!」
「ふふ、これはソラが小さい頃に仕込んでね。今でもご飯の時間になると自分からおすわりして待ってるのよ」


 如月の驚きの声に伯母さんが答える。俺がいなくてもずっとやってたのか。習慣ってすごいな......いや、ミコが賢いのか。

「いいないいな~!私もやりたーい!」
「やめておいた方がいいぞ。ミコは知らない人の手からは食べないから。今でも俺にはあんま懐かないしな」

 三井のはしゃぐ声に、伯父さんが悲しげな声を出す。そうだったんだ。伯父さんドンマイ......。
 ミコは綺麗に完食すると再び俺の膝に乗って満足そうに喉をゴロゴロと鳴らす。

「ソラ、持ってきたぞ」

 ミコを撫でていると、先生が猫用のオモチャを持ってきた。

「あら、いいわね。ソラも彩加もいなくて退屈だったろうから遊んであげて。私はお昼の支度してくるから。彩加、手伝いなさい」
「えー、料理はちょっと......」
「料理くらいしなさい。まったく、彼氏も作らないで何やってるのかしら」

 さすがの先生も母親には勝てないようだ。去り際にこっちを睨むのはやめてほしい。俺は今ミコと遊ぶので忙しいんだ。
 女子組もおもちゃを手にミコの気を引こうとしているが、如月だけはみんなの後ろでおとなしい。猫被ってるからって同族嫌悪か?まぁどうでもいいけど。

「ソラ、ご飯食べたら久しぶりに麻雀しないか?」
「あー、いいですけど今はゲームくらいしかやってないですよ」

 昔は伯父さんの趣味に付き合わされて伯母さんと先生と4人でやったものだ。









「——ロン。彩加は自分の手だけじゃなくて全体を見なさいな」

 伯母さんがアガりながら注意する。たしかにリーチかかってるのに無筋むすじ4連はさすがに無理だろ。

「だぁぁぁ!こっからが本番よ!ソラ、覚悟しやがれ!」

 何故か俺を狙う気まんまんだ。これ麻雀だからね?というか先生400点しかないけど大丈夫?

「おっしゃぁ!私の親番!ドロー!こいつは行くっきゃねぇ!」

 ダーン!と捨て牌を叩きつける。丁寧に扱おうよ。まさかまた国士狙ってんの?それしか役知らない説あるな。

「あ、ツモ。地和チーホー

「「「......え?」」」

「呼びましたか!センパイ!」
「呼んでねぇから帰れ」


 女子組は居間でミコと遊びながらゲームしていたはずなのにどうなってやがる......。聴力も瞬発力もありえないだろ。

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