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40.コイバナ
しおりを挟む「第1回恋バナ大会in神谷家~!パチパチ~!」
神谷家にて行われている勉強会。その休憩時間にそう声を発したのは、ゆるい三つ編みおさげの少女ーー三井亜美だった。
「恋バナですか!楽しそうですね~!」
やはりというべきか、最年少の竹田千豊が飛びつく。反対に怪訝そうな……やや嫌そうにも見える顔をするのは神楽坂星と如月愛衣の2人だ。
「恋バナって......何話すの?」
「そりゃもっちろん!ソラっちのことに決まってんじゃん?ここにいるってことは皆ソラっちのことが好きなのは分かりきってるんだからさ~。情報共有と敵情視察も兼ねて?みんなで盛り上がろ~的な?」
当の本人が隣の部屋にいるのにも関わらず大胆なものである。
「え!?みんなって......亜美ちゃんも!?」
愛衣がひとりひとりの顔を見渡してから驚きの声をあげる。
「あ、私は違うよ?興味はあるけど皆とは違くて。ソラっちが誰を選ぶのかな~っていう興味ね」
「ほー。では、私たち3人の勝負、ということですね!」
楽しそうな声を上げる千豊。
「ま、そゆことだね。私が参戦しちゃったらキミらじゃ相手になんないし?」
「え?」
「はい?」
「......?」
3人揃って首を傾げる。
「なに不思議そうな顔してるの?だって進展どころか意識すらされてなさそうだし?今どき小学生のほうが積極的なんじゃない?」
「えー、お昼食べる時とかけっこうボディタッチしてるんだけどなぁ。センパイ無駄にガード固くてぇ......」
「え、なにそれ!いつもすぐ教室出て行っちゃうんだけどどこで食べてるの!?」
千豊の発言に愛衣が飛びつく。
「それは2人だけの秘密なので言えませーん!でもこれって私が1歩リードってことですか~?」
「......私はおうちでいつも一緒。......頭、撫でられたし、膝枕もした」
「「なにそれずるい」」
星の発言に今度は愛衣と千豊の2人が反応する。家で2人というのは仕方ないにしても撫でられただの膝枕だのは2人は未経験だ。ただし、頭を撫でられたのは星が寝ぼけていたし、膝枕の時も宙の意識が半分なかったようなものであるという事実は星しか知らないのだが。
「で、あいちんはなんかないの~?」
亜美が煽るように愛衣に問いかける。
「わ、私は......一応、告白したんだけど......」
「はぁ!?」
「うそ......」
「え、なにそれいつですか!?」
これには3人とも驚きを隠しえない。
「えっと、GW明けてすぐ。でもなんか、罰ゲームとかドッキリとか勘違いされてそのまま......」
「うわぁ......ソラっちそれはダメでしょ~」
「............」
「でも愛衣センパイっていかにも陽キャって感じだしそう思っちゃうのも分かるかも~」
ただひとり、ソラの過去を知っている星だけは黙っている。千豊の言う通り陽キャという存在は特に苦手なのは自分も同じだからだ。実際話してみると怖いとか嫌な感じはしなかったのだが。
そして過去にトラウマを持つからこそ同性異性問わずに人間そのものに苦手意識があるということも知っているが、本人の許可なしに過去について話すわけにもいかず黙っているしかない。
「うーん。でもこれだけ美少女に囲まれてるのに反応薄いって......もしかして女に興味ないの?」
「「「............」」」
おもわず全員が黙ってしまう。無いとは分かっているが、恋愛対象が女ではなく男だとしたら自分たちにはひとかけらの希望すら無い。
「でも、さ。そら君って錦野先生とかなんか仲良さげじゃない?」
「錦野先生?......あー、どうだろ。仲いいというか信頼してる?でも大人だからってのもあるし......」
「でもでも!センパイって授業乗っ取ったんですよね?それって他の先生だったらさせないと思います」
「「たしかに......」」
愛衣の発言に亜美と千豊がそれぞれの意見を述べる。
まさかの第4のライバル登場か!?と悩んでしまう女子高生たち。たしかに錦野先生は美人だし性格もサバサバしていて生徒からの人気も高い。いつも1人でいるソラが好きそうなタイプと言われると納得も出来てしまう。しかし大人の魅力を出されてしまえば、まだ高校生の自分たちでは太刀打ちできるはずもない。
「......こうなったら皆で攻めるしかないわね」
「攻めるっていってもどうやって?」
「これ以上はさすがにキツイですよ~」
「......難しい」
「甘いね皆!もうすぐ期末テスト!それが終わったら何がある?」
「夏休み~~~!」
1番楽しみにしていると言わんばかりに千豊が答える。
「そう!そこで距離を縮めるのよ!いい?来年になれば私たちは受験生。そうなれば余計に恋愛なんて厳しいわ。だから今年が勝負よ。それに、夏だから必然的に露出も増えてアピールもしやすいでしょ?それで物理的に距離を縮めれば向こうだって意識せざるを得ないはずよ」
「すごい、亜美ちゃんって策士だったんだ......」
「キャー!亜美センパイ頼りになる~!」
「(コクコク)」
「ってわけで、明日は勉強会はお休みにして皆で水着買いに行くからね!目指せ悩殺!」
「「「お~!」」」
その頃ソラは、ロックオンされているとは知らずに隣の部屋で呑気に昼寝をしてた。何かに押しつぶされるような夢を見たとか見なかったとか......。
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