39 / 52
39.参戦!
しおりを挟む「セーンパイ!今日もおうちにお邪魔して——」
「ダメだ」
「......って、なんでですか~!」
「お前そんな遊んでばっかでテスト勉強はどうした」
「うっ......。だって1人じゃどうしてもやる気が......。センパイが教えてくれればやる気がでるんだけどなぁ」
「俺は関係ないだろ。1年から赤点取ってるようじゃこの先どうするんだ」
「だ、大丈夫です!勉強なんか出来なくても!センパイのお嫁さんという道が!」
「ねえよ。勉強もダメ、料理も掃除も出来ないんだろ?一方的に世話されるってそれじゃ結婚どころか、もうペットじゃねえか」
「ペット......。でもセンパイのペットなら悪くないかも......えへへぇ」
やっべえ。こいつもう何言っても効果ないのかよ。ペットって癒されるもんだろ?世話だけしてストレス溜まるって誰も飼わないだろ。
「とにかく勉強は自分でなんとかしろ。次のテスト赤点取ったらお前とは2度と喋らんからな」
「うえええ!?それは横暴ですぅ!私はこれから何を糧に生きていけば......」
「じゃ、頑張れよ。元後輩」
「え、ちょっ!元ってなんですか!絶対そんなの嫌ですぅぅぅぅ」
1人で騒いでいる竹田を放置して先に教室に戻る。ホント、どこにも落ち着ける場所が無くなってしまった。どこで間違ったんだろうな。なんだか最近はトラブルもあってストレスが溜まりっぱなしだ。
7月に入り、気温もぐんぐん上昇している。うだるような暑さにただ歩いているだけでも汗が流れ出てくる。
平日だというのにウチで勉強会をやると言われ、買い物をしてから帰宅した俺の目に衝撃の光景が映った。
「......おかえり」
「ソラっちおかえり!」
「お邪魔してます」
「ま~す!」
迎えたのは4つの声。思わず買ってきたものを落としそうになってしまった。
「......おい、なんでお前までいるんだ?竹田ぁ」
「来ちゃった!」
ダメだ。これ以上構っていたらストレスでハゲてしまいそうだ。落ち着け。落ち着くんだ、俺。俺の代わりに相手をしてくれると思えば......。
「ちゃんと勉強しろよ。あと飯は4人分しか材料無いからな」
それだけ言って自室へ籠る。着替えてスマホを確認するも通知は無し。いつも通りだ。
無心で宿題をこなしてスマホで小説を読む。少しでもストレスをどうにかしないと、テストの度に風邪を引いてしまうなんてことにもなりかねない。せっかくあと少しで夏休みなのにそれは勘弁願いたい。
そう、テストさえ終われば夏休みが待っている。快適な環境で引きこもり放題なのだ。待ってろよ、俺の夏休み......!
如月と三井はやはり優秀なようで、あかりと竹田は小テストの点も順調に上がっているらしい。俺の家以外で勉強会をしてくれれば言うことないんだがな。
そしてようやく迎えた期末テスト。俺はいつもよりストレスを抱え込みながらも、あかりの勉強を見る必要がなくなったのでケアレスミスもほぼなく、前回よりマシな点数だった。
「やっと終わった~!」
「あかりちゃんも無事全教科平均以上取れたし良かったね!」
「みんなのおかげ。ありがとう」
「ちぃも赤点無かったです~!ホントにありがとうございましたっ!」
「......で、なんでテスト終わったのにウチに集合してんだ?」
「そんなの、テスト終わったらお疲れ様会やるに決まってんじゃーん!」
そんなの聞いたことねえぞ。テストから解放されて嬉しいのはいいが、ここに集まる必要はないだろうに。
「あ、ねえそら君、今回は合計何点だった?」
「あ?......1128だ」
期末テストは中間テストの主要教科に加えて、実技系の4教科が加わって合計12教科に及ぶ。
各教科の難易度も上がっていくのでテスト返却の際は沈鬱な表情の者が多かった。
まぁ俺は普段からやっているし自分の勉強に集中できたから平均94点といいほうだった。
「うわ、すっご......。私1057だぁ。やっぱりそら君って頭いいね!」
いや如月もそれだけ取れてれば十分なんじゃね?他の奴の勉強見てるんだし。
「え!センパイってそんなに頭良かったんですか!?ずるいです!ちょっと私と脳みそ交換しましょうよ!」
「ホント、頭良くて家事も完璧。優良物件だよねぇ」
「......ソラくんはすごい」
竹田はいつもながら発言がもう頭悪そうだよな。能天気なのは羨ましいが、こいつの思考回路にだけはなりたくない。後の人生が大変そうだ。
ともあれ、難易度が上がっているのにあかりと竹田の成績もあがったことは良いことだと言える。これで俺が面倒を見ることも減るだろうしな。
さあ、これで夏休みだ。引きこもりぼっちの本気を見せてやるぜ......!
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
雨上がりに僕らは駆けていく Part2
平木明日香
青春
学校の帰り道に突如現れた謎の女
彼女は、遠い未来から来たと言った。
「甲子園に行くで」
そんなこと言っても、俺たち、初対面だよな?
グラウンドに誘われ、彼女はマウンドに立つ。
ひらりとスカートが舞い、パンツが見えた。
しかしそれとは裏腹に、とんでもないボールを投げてきたんだ。
M性に目覚めた若かりしころの思い出
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
彗星と遭う
皆川大輔
青春
【✨青春カテゴリ最高4位✨】
中学野球世界大会で〝世界一〟という称号を手にした。
その時、投手だった空野彗は中学生ながら152キロを記録し、怪物と呼ばれた。
その時、捕手だった武山一星は全試合でマスクを被ってリードを、打っては四番とマルチの才能を発揮し、天才と呼ばれた。
突出した実力を持っていながら世界一という実績をも手に入れた二人は、瞬く間にお茶の間を賑わせる存在となった。
もちろん、新しいスターを常に欲している強豪校がその卵たる二人を放っておく訳もなく。
二人の元には、多数の高校からオファーが届いた――しかし二人が選んだのは、地元埼玉の県立高校、彩星高校だった。
部員数は70名弱だが、その実は三年連続一回戦負けの弱小校一歩手前な崖っぷち中堅高校。
怪物は、ある困難を乗り越えるためにその高校へ。
天才は、ある理由で野球を諦めるためにその高校へ入学した。
各々の別の意思を持って選んだ高校で、本来会うはずのなかった運命が交差する。
衝突もしながら協力もし、共に高校野球の頂へ挑む二人。
圧倒的な実績と衝撃的な結果で、二人は〝彗星バッテリー〟と呼ばれるようになり、高校野球だけではなく野球界を賑わせることとなる。
彗星――怪しげな尾と共に現れるそれは、ある人には願いを叶える吉兆となり、ある人には夢を奪う凶兆となる。
この物語は、そんな彗星と呼ばれた二人の少年と、人を惑わす光と遭ってしまった人達の物語。
☆
第一部表紙絵制作者様→紫苑*Shion様《https://pixiv.net/users/43889070》
第二部表紙絵制作者様→和輝こころ様《https://twitter.com/honeybanana1》
第三部表紙絵制作者様→NYAZU様《https://skima.jp/profile?id=156412》
登場人物集です→https://jiechuandazhu.webnode.jp/%e5%bd%97%e6%98%9f%e3%81%a8%e9%81%ad%e3%81%86%e3%80%90%e7%99%bb%e5%a0%b4%e4%ba%ba%e7%89%a9%e3%80%91/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる