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36.七不思議
しおりを挟む「センパ~イ!七不思議って知ってます?」
「七不思議?階段が1段増えたり減ったり、銅像が動くとかそういうのか?」
「ちっちっちっ............センパイ古いですね。仕方ないから特別に!この私が教えてあげましょう!」
「いやいらん」
「相変わらず!せっかく私が調べてきたんですから聞いてくださいよーう」
「ええい、分かったから引っ付くな」
最近はますます鬱陶しくなってきた気がする。やかましいし室温が上がるから静かにしてほしい。
「やったぁ!えーとまずは、黒塗りの高級車!毎日放課後になると、正門のところに黒塗りの高級車が止まっていて怖がる生徒がたくさんいるらしいです。運転手と目を合わせると連れ去られてしまうとか......」
「いや普通に生徒の迎えだろ。どこの金持ちかは知らんが、運転手なら普通に見たことあるぞ。スーツにグラサンの妙な人だけどお辞儀してきたし悪い人じゃないだろ」
「センパイの目付きが悪くて怖かったんじゃないですかぁ?」
「あー、なんか急に右手で何かを鷲掴みにしたくなってきたなー。ちょうどいいサイズの顔面とかあったら握り潰せそうなんだけどなー」
「ひぃっ!あ、でもセンパイがどーしても触りたいっていうなら、少しだけ触らせてあげてもいいですよ?」
「あ、汚れそうなんでいいですごめんなさい」
「よごっ......。こんな可愛くて清純な女子高生をなんだと思ってるんですかぁ!謝られると余計傷つくし!むきぃ!」
なんかこいつの扱いも慣れてきた気がするな。今なら後輩取り扱い検定7級くらいなら受かりそうだ。
「で、あとは?」
「えっとぉ、とある女性教師が結婚できない呪いにかかってい——」
「それだけはやめろ。お前、命が惜しくないのか?その先を口にしたら生きて校舎を出られないぞ?」
「え......センパイはいったい何を知って......いえ、やめときます。はい次。えー、無人の部屋から人の気配を感じる」
「むしろ気配を感じ取れるそいつの方が不思議なんじゃね?」
まさかヤツ以外にもエージェントが潜んでいるってのか?この学校ヤバいのしかいねえな。
「次、教頭の髪型永遠に変わらない」
「ただのヅラだろ。むしろ知らない奴いんのか」
「午後一の世界史やめてほしい」
「ただの要望じゃねえか。分かるけど」
教師が延々と教科書を朗読するだけの授業。満腹状態でそんなことをされれば眠気が襲ってくるのも仕方ない。
「授業中、手を挙げてないのに当てられる」
「知るか。教師に言え」
碌なのがねえな。大丈夫かこの学校。
「えー、次が最後ですね。だけどこれだけどんな内容なのか分からないんですよね。......『みかんのタピオカ』」
「なんだそれ。みかんとタピオカって合うのか?そもそも学校じゃタピオカ売ってないだろ。......いや、待てよ?タピオカ......?」
口の中で単語を繰り返していく。
「あー、分かったわ。それ『みかんのタピオカ』じゃなくて、『異端の谷岡』だ」
「いたんのたにおか」
「昔、谷岡って生徒がいたんだよ。自称帰宅部エースのな」
「きたくぶえーす」
「で、一度だけ帰宅部の大会があったらしいんだよ。だけど張り切って会場に行ってみると出場者は自分しかいない。つまり不戦勝で優勝したんだ」
「きたくぶのたいかい」
「俺たち帰宅部は、そういう部活っぽいことが嫌で帰宅部なんだから大会なんか出るはずないんだ。ただ帰宅して時間を有意義に使うのが目的だからな。だけど谷岡は大会に行ってしまった。だから異端扱いされて帰宅部からも除名されたって話だ」
登録すらしてないのにどうやって除名するのかも謎だが。
「ちょっと何言ってるのか分かりません」
「大丈夫だ、俺も分からん。ただ聞いた話だしな。まともに理解しようなんて思わないほうがいいだろ」
「谷岡さん、その後はどうしたんですかね......」
「今は結婚して普通に働いてるらしいぞ。ただ知り合いから弄られまくるから婿に入る形で相手の名字にしたんだと」
「へ~。っていうかセンパイなんでそんなに詳しいんですか?」
「あ?あー、その結婚相手ってのが、飯塚先生なんだよ。保健の」
「えーーーーー!!!!!じゃあ、まじで実在したんですか?異端の谷岡......」
「ああ。もう10年近く経つってのにいまだに語り継がれてるってやべえよな」
「名字まで変えたのに黒歴史って恐ろしいですね......」
むしろ帰宅部が正式に存在していないのに大会などあるわけがない。次期主将を自称してる俺でも行かないぞ。 そんな語り継がれるような黒歴史だけは作らないように気を付けなきゃな。
「あ、ちなみにだけどな。七不思議って7つ全部知るとどこかに引きずり込まれるらしいから気を付けろよ」
「えっ!どどどどうしよう!センパイ、私の人生ここまでなんですかぁ!?」
まぁ引きずり込まれるのは生徒指導室だけどな。特に2つ目の不思議について出所とか洗いざらい吐かされそうだ。
「......強く生きろよ、竹田」
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