そらに光る星~誇り高きぼっちの青春譚~

もやしのひげ根

文字の大きさ
上 下
11 / 52

11.悪因悪果の末路

しおりを挟む


 場所は昨日ぶりの職員室の応接スペース。そこで俺は如月と座っていた。
 あの3人は錦野先生に別室で事情聴取をされている。

「......ねえ、あれ本当なの?」
「あん?本当も何も実際にそうだったんじゃねえの?」
「そうだけど。でもいつの間にあんなの録音したの?昨日結局昼休み終わっても戻ってこないし、荷物もないし......」
「別になんでもいいだろ」

 イジメにあっても教師すら味方をしてくれないことを知った俺は、ならばとボイスレコーダーを持つようになった。何かあった時に自分で証拠を確保するためだ。それをこいつに話す気は無いけど。
 小学生などは直接罵倒したり暴力を振るったりと明確なイジメが多い。しかし成長するにつれて、バレないように知恵を使うようになるのだ。
 あかりをシカトした件も、あいつらは履歴が残るメッセージアプリではなく通話でシカトを指示した。そうすることで通話履歴は残るが、その内容は残らない。
 今回は幸いにもボイスレコーダーのおかげで真相は簡単に究明できたが、これが無かったら警察を呼んでもっと大事になっていたかもしれない。

「じゃあ、なんであんなことしたの?授業なんて、誰とも関わらない神谷君らしくないよ?」
「俺らしく......ね。別にそれで助かったんだからいいじゃねえか」

 慣れないことをしたのは認めるけど、俺らしいとか勝手に決めんじゃねえよ。

「それに、錦野先生とも仲いいんだね」
「は?別に良くはないだろ」
「でも今日も神谷君に頼ってるし」
「先生だって面倒ごとはないに越したことはないし、誰かがやってくれるならそのほうがいいだろ」
「ふーん、まあそういうことにしとくね。......ふふ、でもこれで、神谷君も友達できるんじゃない?」
「は?ふざけろ。そんなもんいらねえよ。そもそもレコーダーしかけるような気持ち悪い奴に近づこうなんて思わねえだろ」
「そうかなあ。それで少なくとも私を含めた3人は助かったし、悪用してるわけじゃないから別にいいと思うけどなあ」

 次から次へとやかましいな、おとなしく座っていられないのか。喋らなきゃ死ぬ病にでもかかってんの?

「お前こそ今度はちゃんとした友達作れよ」
「うぐっ。......しばらくはいいかなあ。ずっと1人で強い神谷君に憧れてたし。......結局告白は勘違いされたままだけど」

 後半はゴニョゴニョ言ってて聞き取れなかった。

「え?なんて?」
「べ、別になんでもない!」

 やがて、別室から錦野先生が出てくる。

「一通り事情は聞いた。本人たちも一応認めてるからあとは職員会議で処分は決める」
「そうですか」
「あと、神谷。お前と話がしたいそうだが?」
「俺と......?別に構いませんが」

 俺たちは3人がいる部屋へと入る。

 泣いている者、俯いて震えている者、こちらを睨む者と三者三様だった。

「なんだ? 話って」
「......アンタどういうつもり?」

 問いかけてきたのは予想通り、一ノ瀬だった。

「は?」
「いつから、というかどうやって気づいたのよ」

 こいつ、まだ反省してねえのかよ。

「ハァ。お前らがきっと何か企んでるんじゃねえかと思って昨日レコーダーを仕掛けた。あとはそれ聞いて会話にあった名前を検索すれば一発だったぞ。まさかこれほど早くボロを出すとは思ってなかったけどな。証拠が残らないようにしてるんだろうけど無駄だ。後ろめたいことがあればどこかで綻びが生じてしまう」

 子供の姿になった某高校生探偵だってわずかな手がかりから事件解決しちゃうしな。
 俺も将来探偵やってみようかな。いやでも黒い人たちとか妙に冴えてる小学生とか現れそうだからやめておこう。

「......っ」
「悔しいか?これからどんな目で見られるか怖いか? イジメられたヤツはそれ以上の苦痛と恐怖を毎日味わってんだ。他人を犠牲にして自分たちだけいい思いしようなんて考えが甘すぎるんだよ」

 言葉と共に冷たい視線を浴びせる。

「話はそれだけか?」
「............」
「ああ、そうだ。俺からも言いたいことがあったんだ」

 いまだ不機嫌さを隠さずに再び睨みつけてくる一ノ瀬。

「テメエが誰を好きで嫌いかなんてどうでもいいし勝手にすればいい。......けどな、ソレを人に押し付けんな。テメエの中で処理しやがれ。
 あと横の2人。お前らもただ流されるだけじゃなくてもっと自分の頭で考えろよ。自分の行動くらい自分で責任取りやがれってんだ」


 一見、金髪の安藤が仕切ってると思われがちだが、彼女は単純でバカだ。そんな頭はない。一ノ瀬がうまく操っているのだろう。
 黒髪ショートの北大路は2人の陰に隠れている。おそらく、彼女は自分が標的にされるのが怖くて一緒にいるのだろう。
 そうやって流されて逃げていればラクだろうが、いくら逃げ続けても自由にはなれない。そしてこういう結果を招く。自由は自分の意志で勝ち取らねばならない。
 ま、これで処分が決まればおとなしくなるだろうし、あいつらのこれからなど微塵も興味がない。ミジンコのほうが興味があるくらいだ。俺もしばらくは好奇の視線に晒されるかもしれんが、数日もすればなくなるだろう。
 あとはあかりのほうだな。あいつがいつまでも引きこもってしまうようでは困る。一刻も早く俺の『ぼっち城』を取り戻さねば......!
 そのために、帰ってもうひと仕事するとしようか。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

浦島子(うらしまこ)

wawabubu
青春
大阪の淀川べりで、女の人が暴漢に襲われそうになっていることを助けたことから、いい関係に。

【完結】偽りの告白とオレとキミの十日間リフレイン

カムナ リオ
青春
八神斗哉は、友人との悪ふざけで罰ゲームを実行することになる。内容を決めるカードを二枚引くと、そこには『クラスの女子に告白する』、『キスをする』と書かれており、地味で冴えないクラスメイト・如月心乃香に嘘告白を仕掛けることが決まる。 自分より格下だから彼女には何をしても許されると八神は思っていたが、徐々に距離が縮まり……重なる事のなかった二人の運命と不思議が交差する。不器用で残酷な青春タイムリープラブ。

ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。 日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。 ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。 人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。 そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。 太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。 青春インターネットラブコメ! ここに開幕! ※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

Missing you

廣瀬純一
青春
突然消えた彼女を探しに山口県に訪れた伊東達也が自転車で県内の各市を巡り様々な体験や不思議な体験をする話

処理中です...