メンヘラ疫病神を捨てたら、お隣の女子大生女神様を拾った。

もやしのひげ根

文字の大きさ
上 下
42 / 42

ex.新婚さんごっこ

しおりを挟む

 撫子なでしこと付き合ってからはや4カ月。

 撫子は甘えん坊で寂しがりでとにかくくっつきたがる。
 俺が我慢しなくていいよと言ったからなのだが、それまでどれだけ我慢していたのやら。
 起きている時も寝ている時も、まるで磁石で吸い寄せられるかのようにくっついている。
 座るのも俺の上が定位置となっているので、せっかく買った座椅子が少しかわいそうだ。



 そしてこのたび、俺たちは同棲することにした。
 俺が「今更だけど、ほぼ同棲してるようなもんだよなぁ」と言ったら撫子がすっかりその気になってしまったのだ。
 ただ、春は新生活を始める人が多くていい物件が空いておらず、また色々と準備もあるためにお盆休みに合わせて引っ越しすることに決めた。
 お互いの希望条件を出し合ってそれを元に物件を探したり、新調する家具を見に行ったりもした。
 普段からお金を使わず、4月に無事に昇進したおかげもあって蓄えは十分にあるから、これを機に1人用を2人用に、ボロボロだったものも買い替えることにした。


 一番緊張したのはなんといっても、撫子の両親への挨拶だろう。
 撫子は別にいいと言っていたが、大事な娘さんを預かる以上黙っているわけにはいかない。
 正直、殴られる覚悟で行ったのだが、思いのほかあっさりと承諾された。
 お母さんは撫子がさらに大人っぽくなっておっとりしたような感じで「あらあらまあまあ」と口にしていた。
 小さいころから友達すら家に連れてきたことが無く、いきなり彼氏で同棲でとビックリしたものの微笑みながら祝福してくれた。
 お父さんは気難しそうな顔をしていたが、どうやら緊張していただけだったみたいで最後には「娘をよろしく頼む」と頭を下げられた。
 まるで結婚の挨拶に来た気分だ。

 その日は東雲母娘おやこの手料理をご馳走になり、酔っぱらったお父さんがアルバムを持ちだして撫子がいかに小さいころから可愛かったかを熱く語っていた。
 良い人たちだし、将来は俺の家族にもなるであろう人たちだ。この繋がりを大切にしようと思った。






 ——ガチャ


「おかえりなさい、。今日もお疲れ様」
「ただいま、撫子」

 仕事から帰宅すると、新居のやや広めの玄関で撫子が出迎える。ハグとキスがセットで言わずともついてくる。とてもお得だ。

「ごはんにする?お風呂にする?それとも......わ、わた......」

 最後まで言えずに顔が真っ赤である。なにこの可愛い生き物。俺の彼女の可愛さが留まることを知らない件。
 呼び方もあなたにランクアップしてるし、新婚さんごっこかな?理性が吹き飛ぶからやめてほしい。

「じゃあ、全部貰おうかな」

 仕返しとばかりに撫子をお姫様抱っこしてリビングへ連れていく。撫子はこれ以上ないくらいに顔を紅潮させてされるがままになっている。

 まずは用意してくれていたお風呂をいただくことにする。
「一緒に入る?」とからかってみると、「うぅ......もう少し待って......」と抱き着いてきた。可愛い。
 前のマンションとは違って2人でも入れるくらいのスペースはあるのだが、あとは撫子の心の準備次第だ。
 一緒に入れるようになったら温泉旅行も行きたいなぁ。旅館に泊まって、お風呂上りの浴衣をぜひとも見てみたい。いかん、想像するだけでにやけてしまう。

 お風呂から出ると交代で撫子が入り、戻ってきたら髪を乾かしてあげる。
 しっとりと濡れた髪を丁寧に乾かしていく。
 以前は肩上くらいだった髪が、今は肩甲骨辺りまで伸びている。本人曰く、実際に短いのと長いのを俺に見せてどっちが好みか知りたいらしい。
 そう言われてもどっちも似合ってしまうのだから困る。撫子の髪は長いとそのサラサラ感が増すしアレンジもしやすいがその分手入れも大変である。
 だがやっぱり撫子といえば、出会ったころのボブの印象が強い。あまえんぼうでたまに子供っぽいところを見せる撫子にはそっちのが似合うのかもしれない。

 それから2人でキッチンに立って料理をする。残業が無い日にはこうして料理を手伝って教わっている。
 今後撫子が忙しくなった時にサポートするためと、そうでなくてもたまには撫子が何もしなくていい日を作りたいからだ。
 普段は天然なところを見せる彼女も、料理に関してはミスがなく教えるのもとても真剣だ。その甲斐あってか俺の料理スキルも上達してる......ような気もする。

 食後はゲームをしたり映画を見たり、次のデートでどこへ行くか相談したり日によって違うのだが、毎日欠かさない時間がある。
 それは——「ご奉仕タイム」だ。
 お互いに日替わりで相手に甘えるというものだ。昨日は俺がマッサージをしてもらったから今日は撫子を甘やかす日である。
 膝枕をする日、ひたすらハグし続ける日、撫子の椅子になる日 (これはいつもだが)と色々あるのだが、今日は俺の上に向かい合わせで座ってきた。
 何をするのかと思いきや、抱き着いて首元に顔をうずめてクンカクンカとにおいを嗅ぎ始めた。
 においを嗅がれるというのは何故かめちゃくちゃ恥ずかしいのだが、これは一応ご奉仕なので断るわけにはいかない。

 そういえば初めて会った日も俺のコートのにおい嗅いでたっけ。においフェチなのかな。
 プレゼントしたアロマライトもハンドクリームもお気に入りのようでずっと使ってるし、今度好きなにおい調べてなにかプレゼントしようかな。石けんなんかいいかもしれない。
 ......ちょ、首元で深呼吸されるとくすぐったい。
 そんなに気にいるにおいなのかね?自分じゃ全然分からない。撫子のほうがずっといいにおいなんだが、それも本人じゃ分からないのか。
 たっぷり時間をかけて俺のにおいを堪能した撫子はご満悦の表情だ。ホントに可愛いなぁ。

「撫子」
「ん-?」
「好きだよ」

 そう言って目の前にあった可愛らしい小さな唇を唇で塞ぐ。
 撫子は突然で驚いたのかビクッとしてから、俺に抱き着きながらさらに唇を押し当ててくる。

「......もう、急にそんなずるいよ」
「こういうのは思ったときに言ったほうがいいだろ?」
「そしたら私ずっと言い続けるもん!好き好き。優太さん大好き」

 今度は撫子からキスの雨が降り注ぐ。





 俺はそのまま撫子を抱え上げて、寝室へと向かうのだった——








_______________

以上で完結となります!
お付き合いいただきありがとうございました┏○ペコッ
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...