メンヘラ疫病神を捨てたら、お隣の女子大生女神様を拾った。

もやしのひげ根

文字の大きさ
上 下
40 / 42

40.決意と告白

しおりを挟む


 昨夜は撫子が全然寝付いてくれず仕方なく構って遊ばれていたのだが、最終的にはにはまたガッチリと抱き着かれたまま寝てしまった。
 料理とか家事をしっかりやっているだけあって、細いのに意外と力がある。
 なんとか抜け出そうと動くたびに撫子がむずがるので、結局朝までベッドの上だった。



 すやすやと眠る撫子を見て、色々と考えた。
 撫子がどう思っているかはさておき、俺の方は正直好意はある。
 それはそうだろう。趣味が合って世話焼きで、天然で可愛くて美人で。好意を抱かないほうがおかしい。

 果恋と別れたばかりの頃は、もう恋愛なんてこりごりだと思っていたけど今はそんなことはない。
 早乙女さんには誤魔化したが、撫子からも少なからず好意を向けられていることはさすがに分かっている。特にここ最近はその行動が顕著だ。


 思い返してみれば、この半年でいろいろなことがあった。
 毎日手料理食べて、弁当も作ってもらって、デートして、手を繋いで、膝枕してされて、ハグして、膝の上に座られたりもした。挙句の果てには添い寝。
 そのへんの初々しいカップルよりカップルらしいことしてるんじゃないかとも思う。
 問題は撫子にたくさんもらいすぎだということだ。
 撫子と付き合っても捨てられるなんてことは思わないが、俺自身が納得できないのだ。
 今更撫子から離れられるかと聞かれるともちろん答えは決まっているのだが、自分の中でずっとモヤモヤして先延ばしにしている。






「——ご、ごめんなさい!」

 俺の目の前には深く頭を下げる撫子。僅かに覗いている耳は真っ赤だ。
 まぁ昨日の痴態を思えば無理もない。

「外ではお酒飲まないって約束したのに……。それにいきなり呼びつけちゃって挙句の果てにはまた一緒に......」
「まぁ間違えちゃっただけだし仕方ないよ。元々呼ばれたら迎えに行くつもりだったし」
「うぅ。……私、迷惑かけてばっかだね」
「え、どこが?むしろ俺の方がお世話になりっぱなしで申し訳ないと思ってるんだけど。これくらいなんともない」

 この程度で迷惑なんてとんでもない。これ以上完璧超人になられたら俺なんてどうなるんだよ。
 むしろ普段の恩を返すチャンスだし、もう少しだらしなくなってもいいんじゃないかとすら思っている。

「で、でも……」

 何を遠慮することがあるのか。俺なんて情けない姿を晒しまくっているというのに。

 ——でもその度に撫子は俺を包み込んでくれた。
 恋愛経験が無くて恥ずかしいはずなのに、顔を赤くしながらも俺のためにたくさん勇気を出してくれた。


 俺は、そんな撫子のことが——。

「……好きだなぁ」
「……ふぇっ?」
「…………」

 思わず口に出てしまったらしい。まだ赤みの残っていた撫子の顔が一気に沸騰した。

「い、いま、なんて......」

 もうこうなったら仕方ない。

「好きなんだ、撫子のことが。いつもお世話してもらってばっかだけど、趣味が合うところも甘えてくるところもちょっと天然なところも全部好きだ。俺は——」

 続きは言葉に出来なかった。
 なぜなら、撫子が俺の胸に飛び込んできたからだ。

「......嬉しい。私も好き。大好きです」

 お互いに背中に手を回す。ハグは今までも毎日のようにやってきたが、全然違う。
 いつもは俺を労るための優しいハグ。だけど今は、愛情表現としての感情任せのハグ。


 好きという言葉がこんなに素晴らしいものだなんて思わなかった。
 口に出すとさらに愛おしいという気持ちが増していく。
 果恋の時は言わされていただけだし向こうからハッキリと言われたことは記憶にない。


 お返しが出来るかどうかなんて問題じゃなかったんだ。出来る出来ないではなく——すればいいんだから。
 撫子が望むことをやろう。喜ぶことをしよう。それでいいじゃないか。


「あの……私、優太さんの、か、彼女ってことでいいの……?」

 顔を少しだけ上げて上目遣いでそう問いかけてきた。ヤバい、可愛すぎる。

「もちろんだ。だから、もう遠慮なんてしないで好きなだけ甘えてほしい」

 そう答えると抱きしめられる力が少し強くなった。
 昨晩あんなに悩んでいたのが馬鹿らしい。考えるまでもなかったのだ。答えはひとつしかないのだから。



 もはや胃袋どころではない。俺は魂ごと撫子に掴まれているようなものだ。





 撫子が顔を上げて、潤んだ目で俺を見る。


 俺がその頬に手を添えるとそっと目を閉じる。


 やや突き出された唇に、俺は自分の唇を重ねた。

 触れるだけの簡単なキス。それだけでも幸せな気持ちが駆け巡る。



「............もっと」



 だけど撫子は1度では満足できないようだ。



 俺は微笑みながら再び唇を押し当てる。




 俺の——俺だけの女神様は想像以上に甘えたがりで可愛かった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...