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37.ご奉仕(撫子視点)

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「——これでよしっと」

料理の支度が終わって一息つく。優太さん、喜んでくれるかな。
今日は土曜日だが、優太さんは出勤だ。
今週来週は1年で1番忙しい時期らしくて、疲労困憊といった感じで毎日帰ってくる。
私はそんな優太さんを支えたくて、友梨にも相談してある計画を立てた。



料理はこれでよし、お風呂も済ませたし準備は万端だ。
優太さんから仕事が終わったとメッセージが来たのを確認して家を出る。
今日はお迎えに行くのだ。電車の中で寝てしまわないか心配だし、なにより早く会いたい。

電車が到着して少しすると、駅から優太さんが出てきた。やっぱりどこか眠そうだ。

「おかえり、優太さん」
「......撫子?なんでここに」

私が声をかけると優太さんは驚いていた。

「お迎えに来たの。心配だし、早く会いたかったから......」
「......ありがとう」
「大丈夫?さ、帰ろ?」

疲労と眠気のせいかふらつきそうになる優太さんの腕に自分の腕を絡ませる。仕方ないよね、転んだら大変だし。
いつもは合わせてもらっているペースを、今日は引っ張るように歩みを進めていく。

やがてマンションに到着し、優太さんの部屋へと入る。
先に靴を脱いで、優太さんが靴を脱いだのを確認して腕を広げる。今週に入ってから毎日やっているハグだ。
ストレスが減るからと多少無理やり迫ったが嫌がられてはいないみたいで安心した。

「おかえり。土曜日なのにお仕事お疲れ様」
「ただいま。ありがとう」

実際優太さんに抱きしめられると幸せな気持ちでいっぱいになるし、優太さんも癒されてたらいいなと思う。
ずっとそうしていたかったが、優太さんが眠そうなので名残惜しいけど体を離す。

「優太さん、お風呂......は無理そうだからシャワーだけ浴びちゃお?」

本当はお風呂でゆっくりしてほしいけどそこで眠られてしまったら困る。さすがにそこへ飛び込む勇気はまだない。
優太さんを促して着替えを持たせて脱衣所へと押し込む。
私はお気に入りの座椅子に座ってこの後のことを脳内でシミュレーションする。

そうしているとあっという間に優太さんが出てきた。のだが、髪の毛は濡れたままだ。

「あ、優太さん!髪の毛ちゃんと乾かさなきゃダメだよ!風邪ひいちゃう。もう、ちょっとそこ座って!」

無理やりソファに座らせて脱衣所からドライヤーを持って来る。
おとなしい優太さんの後ろに立って、ドライヤーの電源を入れて手櫛で整えながら乾かしていく。

乾かし終えるころには優太さんは限界のようで舟をこぎ始めていた。
私は隣に座って、ゆっくりと優太さんを自分の膝の上に寝かせる。起こさないように慎重に。
いつもはカッコいいけど、寝顔は可愛いなぁ。と思いながら頭を撫でる。
優太さんは私の髪をサラサラで綺麗だって褒めてくれるけど、私は優太さんの髪が好きだ。ずっと撫でていても飽きない。




「——んっ」
「起きた?」

しばらくして優太さんの目がゆっくり開かれる。状況を理解したのかゆっくり起き上がる。......温もりが離れてしまって少し寂しい。

「ごめん、寝ちゃったか。また膝枕までしてもらっちゃって......」
「ううん、疲れてるし仕方ないよ。膝枕は私がしたかっただけ。......お腹は空いてる?」

正直なことを言った恥ずかしさをごまかすように問いかけると、優太さんの口ではなくお腹から「グゥ~」と返事があった。

「ふふ、じゃあ私の部屋行こっか」

少し顔を赤くした優太さんを連れて自分の部屋へ移動する。




「すぐ支度するから座って待ってて?」

優太さんを座らせてキッチンへ向かう。もうほとんど終わっているので温めなおして盛り付けるだけだ。
今日はまぐろカツ&タルタルソースに肉じゃがとお味噌汁の献立だ。優太さんの好きな物を選んだ。
カツは冷めているけど、レンジで少し温めてからくしゃくしゃにしたアルミホイルを敷いたオーブンで表と裏を約1分ずつ温めればサクサク感が復活する。私も優太さんも好きな特性タルタルソースを添えれば完成だ。

全部運んで、2人で手を合わせる。
まだ眠そうならまた「あーん」してあげようかなって思ったけど、食べ始めると意識が完全に覚醒したようでモリモリ食べている。
いつもながら本当に美味しそうに食べてくれるのが嬉しい。その顔を見ているだけでも幸せな気分になる。
すぐに完食してしまって満足そうにしている。

食後のお茶を出して、私はササっと洗い物を済ませてから戻る。
いつもなら一休みしたら優太さんは自分の部屋に戻ってしまうけれど、今日はそうさせるわけにはいかない。


「優太さん、そのままジッとしてて?」

私は優太さんの後ろに回り込んでその両肩に手を置く。徐々に力を入れながらゆっくり揉んでいく。
今日1日動画を見たりして勉強した甲斐もあってか、優太さんは気持ちよさそうにしていた。
思ったより力が必要で大変だけど、優太さんが喜んでくれるなら頑張らなきゃ。
私にはまだお仕事の大変さは分からないし、出来ることは限られているから......。


時間をかけてたっぷりと揉み解した。

「ありがとう。すごく気持ちよかった」

優太さんがこれで終わりと言わんばかりに立ち上がる。
私は慌てて優太さんの手を掴む。

「あのね、ちょっと来てもらってもいいかな......」
「え、あ............うん」

私は混乱している優太さんの手を引いて寝室へと向かう。


ごめんね。でも今日はこのまま帰すわけにはいかないの。






——夜はまだこれからだから。

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