25 / 42
25.元旦とおせち
しおりを挟む俺の新年1日目は寝坊から始まった。結局東雲さんが帰ったの2時すぎだったしな。
それなのに東雲さんはもう起きているようで、一緒にお節食べませんか?とメッセージが来ていた。
お節まで用意してくれていたのか。去年までは無駄に高い物を取り寄せて結局俺1人がほとんどを食べるという形だったし、今年は無くてもいいやと思っていた。
早速返信して東雲家にお邪魔する。
「おはよう。あらためて、今年もよろしくお願いします」
「おはよう。こちらこそよろしくお願いします」
お互いに頭を下げる。年が明けても変わらず俺と仲良くしてくれるという事実に嬉しくなる。
というか今日は服装こそいつもの俺の服だけど、髪型が少し違うな。
「今日の髪型可愛いね。おでかけ?」
後ろでまとめているのだが、キュッとしているというよりふわっとしている。......自分の語彙力の無さが恨めしい。
「ううん。お節作るのにまとめたのと、あとはちょっと練習してるの」
こんなところでも努力してるのすごいなぁ、と新年早々思った。
テーブルの上に鎮座しているのは、豪華な三段の重箱。
「ちょっと作りすぎちゃったけど、食べて?」
え?てっきり取り寄せたとか買ってきたとか思ってたけど、わざわざ東雲さんが作ってくれたの?お節って人の手で作れるのか……。
なんてバカな思考は中身を見て吹き飛んでしまった。
綺麗に陳列された、色とりどりの食材。大きな海老に伊達巻に紅白蒲鉾、栗きんとん、黒豆。定番の食材がこれでもかと詰め込まれていた。
伊達巻はふわふわだし、蒲鉾は飾り切りしてあってオシャレだし、かずのこは鰹節の風味が効いててプチプチがたまらない。
控えめに言ってどれも美味しすぎて最高だ。
「あの、西成さんは初詣行く予定はある?」
「初詣?同僚から誘われているけどどうしようか迷ってるかなぁ。あんま人混み好きじゃなくて……」
「そっか……。明日、友梨と初詣行くから、もし一緒に行けたらと思ったんだけど。その、2人だと少し怖くて......」
あー、たしかに女の子2人だとナンパとかされるだろうな。いや絶対されるだろ。2人とも系統は違えど美人であることには違いないし。
そうなるとナンパ避けも兼ねて着いて行った方がいいかもしれない。
「それなら、同僚たちも一緒にみんなで行ってもいい?」
去年までは果恋がいて一緒に行けなかった透と紗雪からもしつこく誘われているし、どうせならみんなで行った方がナンパ避けにも効果があるだろう。
「私たちがご一緒してもいいの?」
「うん。せっかくだし、一緒に行けたら嬉しい」
「ぜひ!」
透たちに確認すると二つ返事で了承された。
翌日、早乙女さんと準備があるという東雲さんは一足先に家を出たらしい。
全員駅で待ち合わせしているので、遅れないようにササッと支度して向かう。
やはりというか電車は満員状態だった。初詣だけじゃなく初売りとか目的は様々だろう。
おしくらまんじゅうも嫌だが、なにより人のニオイが気になってしまう。タバコや香水など強いニオイが不快感を刺激する。普段はまだ我慢出来るのだが、年始ということもあってそういう人も多いのだろう。
押しつぶされないように隅のスペースを確保する。これじゃ駅も酷そうだな、と思っているとメッセージが来た。
透と紗雪が先に到着したようだが、駅前は人が多すぎて待ち合わせは無理とのことで少し歩いた先にあるコンビニにいるとのこと。
了解と返信して東雲さんにもメッセージを送る。
そういえば同僚組と東雲組は俺がいないと合流出来ないのかと思い至る。
メッセージを送ってみると、東雲さんたちも満員電車に揺られている最中らしい。俺より少し後に駅に到着するようなので、駅で見張っていれば合流は出来るかもしれない。
よくやく電車がホームに到着し扉が開くや否や脱出する。駅を出て少し離れたところで駅入口を見張る。
女子大生を出待ちしてる。言葉にするとやばいな。ストーカーと言われたらお終いだ。
反対方向からの電車が到着して少しすると、駅から人が一気に吐き出された。
その中から2人を発見しようとするが見当たらない。
やがて散り散りになっていき、それでも見つからないので諦めてコンビニに向かうかと思ったところで背後から声をかけられた。
「西成さん」
振り返ってみると超がつくほどの美人が立っていた。
「……東雲さん?」
「うん!ここで待っていてくれたの?」
「うん、まあ。気付かなくてごめん。まさか着物だとは思わなくて」
俺が2人に気づけなかった理由は、2人が着物を着ていたからだ。それに合わせて髪も結っている。
化粧もしていて、普段の姿を想像して探していたから別人だと思ってしまった。
「こういうの、あまり着る機会がないから、どうせならって友梨が……」
「西成さんあけおめ~!へへ、どうよ。現役JDの着物姿は」
「あけましておめでとうございます。2人ともとても似合っていて綺麗です。東雲さんはまさに大和撫子って感じだね」
「あ、ありがとう……」
「綺麗だって!良かったね撫子」
東雲さんは青、早乙女さんはピンクを基調とした着物で文句無しに似合っている。綺麗なんて言葉では足りないくらいに。
これを見れただけでもわざわざ人混みを我慢して外に出た甲斐はあるというものだ。
「じゃ、コンビニまで行こうか」
と歩き出そうとすると、何故か俺の両側に陣取る2人。思わず右に左に首を振って見てしまう。
「一応、ボディーガードでもあるんでしょ?よろしくっ」
元気よく腕を組んでくる早乙女さんと、おずおずと袖を掴む東雲さん。
「撫子~、そんなんじゃはぐれちゃうよ!もっとこうちゃんとしがみつかなきゃ!」
早乙女さんに指摘されて同じように腕を絡ませてくる。
あ、俺今日死ぬのかな。
周囲からの視線も痛いくらいに突き刺ささったまま、俺は連行された。
10
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる