メンヘラ疫病神を捨てたら、お隣の女子大生女神様を拾った。

もやしのひげ根

文字の大きさ
上 下
24 / 42

24.決意

しおりを挟む


 その後しばらく再戦を続けたがゴリオカートはなんとか俺の勝利を死守した。よく頑張った、俺の理性。
 ゲーム好きだけあって、東雲さんは負けず嫌いだ。だからこそここまで上達したんだろうけど。
 努力を継続できる人というのは本当にすごいと思う。それが結果に結びついているならなおさらだ。

 エンドレスになるのを恐れて、トイレと言って逃げ出した。

 今日は早めに夕食をとってから2人でうちへ来たので、年越しとなるとお腹もすいてしまうだろうとついでに軽くお菓子を持って戻った。
 そして今度は違うソフトを......となったのだが、何故か東雲さんはまたも俺の上に陣取った。

「あの......東雲さん?」
「......だめ?」
「ダメじゃないです!好きなだけどうぞ!」

 この至近距離で見つめながら呟くのはズルい。そんなの何されても許しちゃうに決まってる。
 俺は椅子だ。東雲さん専用機になりきるんだ。
 その体勢のまま、ゴリオとその仲間たちがサイコロを投げつけ合うスゴロク......のようなものをやった。

「そういえばずっとゲームしてるけど、東雲さんは毎年見る番組とかないの?」

 大晦日だと、俺が毎年強制的に見させられていた歌番組や格闘技、お笑い番組など恒例のものがある。

「実家に帰ってる時は両親が見てるのを一緒に見てるけど、あまり興味は無いから......。こうしてゲームしてるほうが楽しいし。あ、西成さんが見たい番組あるならそっち優先していいからね」
「そっか。俺も果恋向こうが見てるのを一緒に見てるフリしてただけだし、ゲームしてる方が楽しくていいな」

 自分の家なのにチャンネル権すらないとは悲しいものである。
 そのうえ、唐突に同意や感想を求められて適当に返したり、果恋が求めていることと違うことを口にすればひたすら文句を言われる羽目になる。
 ここ2年ほどは果恋が番組に夢中になっているタイミングでさりげなく寝落ちしたフリをしていた。どうせ文句を言われるなら会話をしなくていいほうを選んだつもりだった。
 まぁ年越し直前にたたき起こされて文句を言われてしまったのだが。



 ゲームは終盤に差し掛かり、現在のトップは俺。
 毎ターン行われるミニゲームでは東雲さんに負け越しているのだが、偶然起こったギャンブルミニゲームが成功して持ちコインが3倍になったのだった。俺には女神様がついてるからな。
 この調子なら逃げ切れるだろう、と思っている時。ゴーン、ゴーンとゆっくりとした鐘の音が響き渡ってきた。
 時計を見ると23時過ぎ。

「あれ、除夜の鐘って年明けてからじゃないんだ」
「うん。大抵の神社だと、23時くらいから鳴らして年内に107回、年が明けてから1回、合計108回鳴らすらしいよ」
「ほー。東雲さんは物知りだなぁ」

 たしか除夜の鐘は108つの煩悩を取り除くために鳴らすというのは有名な話だ。
 それが本当なら一刻も早く俺の中にある煩悩も消し去ってほしいものだ。切実に。

「もう、今年も終わりだね。西成さんはやり残したこととか無い?」

 そう聞かれて少し考えてみるが、正直、果恋と別れただけでも俺にとっては大きな一歩だったのだ。これでようやく自分の時間を好きに過ごせると思った。
 しかしそれに加えて東雲さんに出会い、一緒に過ごす時間も増えた。
 果恋と違って一緒にいて息苦しくなるようなことも無い。むしろ心地いいとすら思う。

「うーん、特にないかな。強いて言うなら、東雲さんにお世話になりっぱなしでお礼が出来てないことくらいかな」
「......そんなことないよ。助けてもらったのは私のほうだし、料理は私が望んでやってることだから気にしないで。こうして一緒に過ごせてすごく楽しいし。だから......来年もよろしくね?」

 料理だけではない。
 果恋の件ですごく迷惑かけて本来なら嫌われても仕方ないのに。
 東雲さんのほうから距離を詰めてきて、こうして一緒に遊んだり看病してくれたり、励まそうとしてくれたり。
 本当に今の俺があるのは東雲さんのおかげだと思える。

 このまま甘えてばかりでいいものなのか悩みどころではあるが、今はそれよりも一緒に過ごす時間を大切にしようと思う。それが彼女の望みでもあるのだから。
 お礼については来年必ず何かしらの形でしようと密かに決心した。

「こちらこそ。東雲さんは何かやり残したことは?」
「私もやり残したっていうことはないかな。来年はやりたいこととか、頑張りたいことはあるけど......」
「そうだな。俺もやりたいことは色々とあるし。お互いに悔いの残らないように頑張ろう」

「悔いが残らないように、か......。うん。私、頑張るから見ててね」


 もちろん、東雲さんが決めたことならば俺は全力で応援するさ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...