1 / 42
1.別れと出会い
しおりを挟む「なんで私の事分かってくれないの!?」
「聞いたって教えてくれないのにどうやって分かるんだよ」
「彼女のことくらい聞かなくても分かるでしょ!?」
「そんな、超能力者じゃないんだから無理だよ」
「なによそれ!私の事好きじゃないの!?」
「......もういいよ。疲れた。別れよう」
「なんでそうなるのよ!どうせ他に女でもいるんでしょ!」
「はぁ......。もう別れてくれればなんでもいいよ」
「なによ、自分のことばかり!いつもそう!あんたなんか付き合うんじゃなかった!」
バチーン!と大きな音が自分の頬から発せられる。ビンタされるのは分かってたし避けても良かったが、それはそれでめんどくさくなる。
これで終わりになるならこの程度の痛みなどどうってことない。
荷物をまとめて去っていく背中に向かって、「それはこっちのセリフだ」と聞こえない程度に呟いた。
付き合って4年。何度同じやり取りをしただろうか。
仕事中にメッセージを返信しなかったとか、お風呂や寝てる間に電話に出なかったとか。
同棲を始めて——というか無理やり棲みつかれてからは、本当に些細な事でも文句を言われた。
彼女の怒るポイントが俺には理解できない。
俺は彼女のあやつり人形ではない。ちゃんと感情も気持ちもある人間なのだ。
仕事だってしなきゃ生きていけないし1分1秒全てを彼女のためだけに使うというのは不可能だ。
何故、人は人を縛りたがるのだろう。
もう恋愛はしばらく勘弁だ。1人でゆっくりしたい。スマホのソシャゲも始めてすぐに彼女の命令で辞めさせられた。
話題のゲームもこっそり買ったはいいものの開封すらせずに隠してある。やりたいことは溜まるばかりだ。
——とりあえず、寝よう。明日も仕事だ。
翌日、どこか晴れやかな気分で起床した俺は仕事に向かう。
肩の荷がおりて体も心も軽い。仕事の効率もいつもよりいい気がする。
「透、今日呑み行かないか?」
残業をこなしてから同僚を誘ってみる。
「お?優太から誘うなんて珍しいじゃねえか。なんかあったか?」
「まあ、ちょっとな」
「おけおけ。話は後でじっくり聞こうじゃないか。紗雪も誘うか?」
「......いや、今日は2人でのんびり飲みたい」
「おっけ。じゃ、早速行くとしますか!」
紗雪は俺たちを慕ってくれている後輩だが、あいつがいるとやかましいし話も出来ない。
誘わないとハブられたとか騒ぎ出すかもしれないが、また今度誘えばいいだろう。
透行きつけの居酒屋で待つことも無くすんなりと入店する。軽く注文をしてビールで乾杯してから彼女と別れたことを話す。
「……そうか、ようやく別れたかー」
「ああ。散々誘いも断って迷惑かけたな」
「まあそれは仕方ないけどよ。お前優しすぎるんだって。そんなんだからつけ込まれるんだぞ」
「そう言われてもなぁ」
宇喜多透は同期入社で当初から呑みに誘われたりしたのだが、そんなことを許されるはずもなく最初の1度しか飲みに行っていない。そのたった1度ですら帰ってからが大変だったのだが。
爆撃メッセージなどを見せたこともあるので事情は理解してくれていたが申し訳なさはある。
「でもこれで自由だろ?次はしっかりした子にしとけよ!」
「次……か。いや、恋愛はもう懲り懲りかなぁ。やりたいことも溜まってるし、一人を満喫するさ」
「それもいいかもな。ま、焦ることも無いだろ。案外近くにいい人がいるかもしれないしな」
久しぶりに本音で愚痴って時間を忘れるほどはしゃいでしまった。久しぶりに飲んだこともあってもあって酔いも少し回っているようだ。
透と別れていい気分で電車に乗るために駅へ向かって歩く。
時間が気になってスマホを確認してみると画面が通知で埋め尽くされていた。メッセージが99+で着信が32件。
いや、こんなんホラーだろ。ちょっと酔いが醒めちまったじゃねえか。
仕事中はマナーモードだったし今の今まで見なかったとはいえ、この数は異常だ。
最新のメッセージは、ごめんなさい、寂しい、会いたい。そんな内容だった。
いつもそうだ。最初は文句ばかりずらずらと送られてきて、反応が無いと次第に弱気になる。
こういう自分の都合だけ押し付けてくるのが嫌なんだって気づかないのかね。気づかないから送ってくるのか。
アルコールの影響下にある俺は、わざわざメッセージを全部見ることもなく、返事をするわけでもなく、ごく自然な動作でメッセージをブロックした。
よし、今日は帰ったら風呂入ってさっさと寝よう。そうしよう。明日は何しようかな。
そう思いつつようやく自宅にたどり着くと、家の前に何かがいるのが見えた。
まさかと思ってビビるも、よく見るとソレは俺の部屋ではなくて一つ隣の部屋の玄関の前にうずくまっていた。
近づくに連れて、その人物は顔は見えないが今一番会いたくない人物とは全く別人だとわかる。
髪は暗い茶色で、服装はベージュのセーターに白いロングスカート。あいつが会いに来たわけじゃないと分かっただけでホッとする。
自分の部屋の前に着き、カバンから鍵を取り出そうとするとさすがに相手も俺に気づいたようで顔をあげる。目が合う。
髪は肩までで揃えられており、化粧はしていないのか薄いだけなのか自然体だ。どこまでも元カノとは反対だな。
見つめ合うこと数秒。
こういう時はどうすればいいんだ?
というかもう23時だぞ。こんな時間にこんなとこで何してるんだ?
11
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる