メンヘラ疫病神を捨てたら、お隣の女子大生女神様を拾った。

もやしのひげ根

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1.別れと出会い

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「なんで私の事分かってくれないの!?」
「聞いたって教えてくれないのにどうやって分かるんだよ」
「彼女のことくらい聞かなくても分かるでしょ!?」
「そんな、超能力者じゃないんだから無理だよ」
「なによそれ!私の事好きじゃないの!?」
「......もういいよ。疲れた。別れよう」
「なんでそうなるのよ!どうせ他に女でもいるんでしょ!」
「はぁ......。もう別れてくれればなんでもいいよ」
「なによ、自分のことばかり!いつもそう!あんたなんか付き合うんじゃなかった!」

 バチーン!と大きな音が自分の頬から発せられる。ビンタされるのは分かってたし避けても良かったが、それはそれでめんどくさくなる。
 これで終わりになるならこの程度の痛みなどどうってことない。


 荷物をまとめて去っていく背中に向かって、「それはこっちのセリフだ」と聞こえない程度に呟いた。






 付き合って4年。何度同じやり取りをしただろうか。
 仕事中にメッセージを返信しなかったとか、お風呂や寝てる間に電話に出なかったとか。
 同棲を始めて——というか無理やり棲みつかれてからは、本当に些細な事でも文句を言われた。

 彼女の怒るポイントが俺には理解できない。
 俺は彼女のあやつり人形ではない。ちゃんと感情も気持ちもある人間なのだ。
 仕事だってしなきゃ生きていけないし1分1秒全てを彼女のためだけに使うというのは不可能だ。

 何故、人は人を縛りたがるのだろう。
 もう恋愛はしばらく勘弁だ。1人でゆっくりしたい。スマホのソシャゲも始めてすぐに彼女の命令で辞めさせられた。
 話題のゲームもこっそり買ったはいいものの開封すらせずに隠してある。やりたいことは溜まるばかりだ。




 ——とりあえず、寝よう。明日も仕事だ。








 翌日、どこか晴れやかな気分で起床した俺は仕事に向かう。
 肩の荷がおりて体も心も軽い。仕事の効率もいつもよりいい気がする。

とおる、今日呑み行かないか?」

 残業をこなしてから同僚を誘ってみる。

「お?優太ゆうたから誘うなんて珍しいじゃねえか。なんかあったか?」
「まあ、ちょっとな」
「おけおけ。話は後でじっくり聞こうじゃないか。紗雪さゆきも誘うか?」
「......いや、今日は2人でのんびり飲みたい」
「おっけ。じゃ、早速行くとしますか!」

 紗雪は俺たちを慕ってくれている後輩だが、あいつがいるとやかましいし話も出来ない。
 誘わないとハブられたとか騒ぎ出すかもしれないが、また今度誘えばいいだろう。






 透行きつけの居酒屋で待つことも無くすんなりと入店する。軽く注文をしてビールで乾杯してから彼女と別れたことを話す。

「……そうか、ようやく別れたかー」
「ああ。散々誘いも断って迷惑かけたな」
「まあそれは仕方ないけどよ。お前優しすぎるんだって。そんなんだからつけ込まれるんだぞ」
「そう言われてもなぁ」

 宇喜多うきたとおるは同期入社で当初から呑みに誘われたりしたのだが、そんなことを許されるはずもなく最初の1度しか飲みに行っていない。そのたった1度ですら帰ってからが大変だったのだが。
 爆撃メッセージなどを見せたこともあるので事情は理解してくれていたが申し訳なさはある。

「でもこれで自由だろ?次はしっかりした子にしとけよ!」
「次……か。いや、恋愛はもう懲り懲りかなぁ。やりたいことも溜まってるし、一人を満喫するさ」
「それもいいかもな。ま、焦ることも無いだろ。案外近くにいい人がいるかもしれないしな」





 久しぶりに本音で愚痴って時間を忘れるほどはしゃいでしまった。久しぶりに飲んだこともあってもあって酔いも少し回っているようだ。
 透と別れていい気分で電車に乗るために駅へ向かって歩く。
 時間が気になってスマホを確認してみると画面が通知で埋め尽くされていた。メッセージが99+で着信が32件。
 いや、こんなんホラーだろ。ちょっと酔いが醒めちまったじゃねえか。

 仕事中はマナーモードだったし今の今まで見なかったとはいえ、この数は異常だ。
 最新のメッセージは、ごめんなさい、寂しい、会いたい。そんな内容だった。
 いつもそうだ。最初は文句ばかりずらずらと送られてきて、反応が無いと次第に弱気になる。
 こういう自分の都合だけ押し付けてくるのが嫌なんだって気づかないのかね。気づかないから送ってくるのか。

 アルコールの影響下にある俺は、わざわざメッセージを全部見ることもなく、返事をするわけでもなく、ごく自然な動作でメッセージをブロックした。


 よし、今日は帰ったら風呂入ってさっさと寝よう。そうしよう。明日は何しようかな。
 そう思いつつようやく自宅にたどり着くと、家の前に何かがいるのが見えた。
 まさかと思ってビビるも、よく見るとは俺の部屋ではなくて一つ隣の部屋の玄関の前にうずくまっていた。

 近づくに連れて、その人物は顔は見えないが今一番会いたくない人物とは全く別人だとわかる。
 髪は暗い茶色で、服装はベージュのセーターに白いロングスカート。あいつが会いに来たわけじゃないと分かっただけでホッとする。
 自分の部屋の前に着き、カバンから鍵を取り出そうとするとさすがに相手も俺に気づいたようで顔をあげる。目が合う。
 髪は肩までで揃えられており、化粧はしていないのか薄いだけなのか自然体だ。どこまでも元カノとは反対だな。

 見つめ合うこと数秒。

 こういう時はどうすればいいんだ?
 というかもう23時だぞ。こんな時間にこんなとこで何してるんだ?
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