庭師見習いは見た!お屋敷は今日も大変!

NO*NO(ののはな)

文字の大きさ
上 下
30 / 36

それからの日々

しおりを挟む
粛清後の裁判が粗方終わった頃から、二次的な裁判が始まった。

その中で、王妃付き筆頭侍女であったフランの汚名をそそぐための裁判も行われた。

証言をしたのは、当時王宮で王妃付きのメイドをしていたレティという中年の女性だったが、それはサティのもう1つの顔だった。

年齢よりも老けて見える姿のレティ(サティ)は、涙ながらに証言をした。

「私は…うぅ…家族がどうなってもいいのかと脅されて、ずっと言えずにいたことがあるのです。脅していた役人方が捕まえられたので、何としてでも伝えなければと思い、ここへ参りました。王妃殿下付きの筆頭侍女であられたフラン様は第2王子殿下を誘拐などしていなかったのです!あの日は不審者による暗殺騒ぎがありました。それは何とか防げたのですが、明らかに内部の者による手引きの痕跡があったので、王妃殿下は第2王子殿下をフラン様に託して逃がそうとなさったのです。本当に、本当に、あれは誘拐ではなかったのです!」

懺悔するように胸元で両手をキツく握りしめて言葉を絞り出すレティ(サティ)の迫真の演技は傍聴席の人々の心を打った。



「結局、宰相補佐の殺人罪は立証できなかったからこの路線になったの?」

王都にある裁判所で落ち合ったフィルとマイクとフレッドは、裁判の後、近くの公園で少し話すことにした。
フレッドの疑問にマイクが答えた。

「うん。サティの記憶だけの状況証拠しかなかったから、司法取引に持っていったんだ。宰相補佐の別口の弱味を掴んでそっちを固めて、それを公表しない代わりに秘匿裁判で殺人を認めさせて、そのことも非公表にすることになったんだって。だから王妃の死因についてもグレーゾーンのままだし、僕もフランと一緒に死んだことになってるまま」

「……その弱味って何?」

「読もうとしただろ、フレッド。僕も聞かされてない。裁判官と国王陛下とオーガストと宰相補佐とサティしか知らないことだ。ホントにホントの秘匿。でもフィル親方なら身内のことだから聞けば教えてもらえるかもしれないですよ」

「いや、姉の名誉が回復したからもういいんだ。それ以外の罪だけでも補佐は終身刑だし。俺、黒いオーラのやつはどうしたって黒いままだと思ってる。変わるかも、とか反省するかも、とか全く期待していない。ハリソンみたいに使いようのある悪党ならまだしも、あの補佐は危険過ぎる。ただ黒いだけじゃなくて渦巻いてる。関わりたくないんだ」

「それは言えてるかも。僕もあの補佐の心は読みたくない」

「もう表に出てくることは無いよ。しかしサティはスゴかったね」

「ああ、別人だったな」

「そうなんだ。僕はあの姿しか知らないからなあ。でも50ぐらいなんでしょ?国王陛下と同級生なら。年齢的には今日の姿の方が合ってるんじゃないの?」

「フレッド、お前、命知らずなことを…聞かれてたら殺されるぞ」

「誰が誰を殺すのかな?マイク」

「「サ、サティ!!」」

「ええっ?!サティさん?!…ってこんな綺麗な人だったんですか?!」

(上手く逃げたな、フレッド)

サティはもうレティではなく、年齢不詳の美女になっていた。

「ふふ、レティはあの後どうやって生きたのかしら、って想像したらああなったのよ。苦労したのよ、レティは。
で、ここからは独り言なんだけど、補佐はフランに対しては直接手は下してないのよねえ。布包みを奪われそうになった時にダミーを見破られたくなかったフランが…落ちていったんですって。他のことは話せないけどこのぐらいなら言えるかしらねえ」

「あ…ありがとうございます」

「フィルはもうランバードの姓は名乗らないの?」

「ランバードでの生は一族が途絶えた時に終えたと思ってます。ただの庭師の親方ですよ、俺は」

「そっか。ほら、今貴族が粛清で激減してるでしょ?ちょっと聞いてみただけよ。じゃあね」

「あ!サティ!またね!」

「サティさん、お元気で!」

「そうだ!俺からもさっきのお礼に情報提供しますよ。マイクに彼女が出来たんですよ!」

「親方?!」

慌てたマイクが、フィルを抑えようとしたが間に合わなかった。

「何それ、何それ!ちょっと詳しく教えなさいよ!」

「マイク?!いつの間に誰と?!」

「僕はもう帰るから!」

「「あ!逃げた!」」

走って帰るマイクを見送りながら、フィルはサティとフレッドに、マイクとサラとのあれこれを教えた。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】黒隼の騎士のお荷物〜実は息ぴったりのバディ……んなわけあるか!

平田加津実
恋愛
王国随一の貿易商に仕えるレナエルとジネットは双子の姉妹。二人は遠く離れて暮らしていても、頭の中で会話できる能力を持っていた。ある夜、姉の悲鳴で目を覚ました妹のレナエルは、自身も何者かに連れ去られそうになる。危ないところを助けてくれたのは、王太子の筆頭騎士ジュールだった。しかし、姉のジネットは攫われてしまったらしい。 女ながら巨大馬を駆り剣を振り回すじゃじゃ馬なレナエルと、女は男に守られてろ!という考え方のジュールは何かにつけて衝突。そんな二人を面白がる王太子や、ジネットの婚約者を自称する第二王子の筆頭騎士ギュスターヴらもそれぞれの思惑で加わって、ジネット救出劇が始まる。

【完結】無能烙印の赤毛令嬢は、変わり者男爵に溺愛される☆

白雨 音
恋愛
伯爵令嬢ルビーは、見事な赤髪を持って生まれた。 「赤毛の子は一族の救世主」との伝承から、ルビーは大切に育てられるが、 至って平凡な娘と分かり、《期待外れ》の烙印を押されてしまう。 十九歳になったルビーは、伯爵の跡取り子息エドウィンと婚約したが、結婚式の二週間前、突如、破談になった。 婚約破棄を言い渡したエドウィンの隣には、美しい姉ベリンダの姿があった。 二人は自分たちの保身の為に、ルビーを他の男と結婚させようと画策する。 目をつけた相手は、《変人》と名高い、ラッド・ウェイン男爵。 ルビーは乗り気では無かったが、思いの外、男爵に気に入られてしまい…??  異世界:恋愛 (全27話) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【完結済】平凡令嬢はぼんやり令息の世話をしたくない

天知 カナイ
恋愛
【完結済 全24話】ヘイデン侯爵の嫡男ロレアントは容姿端麗、頭脳明晰、魔法力に満ちた超優良物件だ。周りの貴族子女はこぞって彼に近づきたがる。だが、ロレアントの傍でいつも世話を焼いているのは、見た目も地味でとりたてて特長もないリオ―チェだ。ロレアントは全てにおいて秀でているが、少し生活能力が薄く、いつもぼんやりとしている。国都にあるタウンハウスが隣だった縁で幼馴染として育ったのだが、ロレアントの母が亡くなる時「ロレンはぼんやりしているから、リオが面倒見てあげてね」と頼んだので、律義にリオ―チェはそれを守り何くれとなくロレアントの世話をしていた。 だが、それが気にくわない人々はたくさんいて様々にリオ―チェに対し嫌がらせをしてくる。だんだんそれに疲れてきたリオーチェは‥。

婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ

水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。 それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。 黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。 叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。 ですが、私は知らなかった。 黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。 残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

処理中です...