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なぜかトリプルデート

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庭師の親方がいなくなったことと、雨が降ったこととで庭師組はポッカリとお休みになった。

フレッドもまだ正式に執事見習いにはなっていなくて準備中だったので、僕とフィル先輩とフレッドの3人で出掛ける話をしていたら、ちょっとオシャレをした私服のメイとサラとマリのメイド3人組が通りかかった。

「あれ?もしかして休み?かわいい女の子3人でどこ行くの?」

フィル先輩がにこやかに話しかけた。

「買い物とカフェよ」
「洋服と雑貨を見て美味しいものを食べるの」
「新作のプリンが美味しいって聞いたの」

メイ、サラ、マリが順に答えた。
何かいつもその順番な気がするけど性格かな?

メイは自分で先発隊って言うだけあってまず行動するし、マリは慎重というかおっとりしているからこうなるのかな。

「僕たちと一緒に行かない?」

フレッドが天使の微笑みで誘ったけど、3人はいい顔をしなかった。

「ええ?気を使うの面倒なんだけどな」
「私たちの買い物長いわよ。特にマリが」
「そんなこと…あるわねえ。でも、それでも良かったら一緒に行く?ずっと一緒とかじゃなくてバラけたり集合したりしながら」

「こんな時まで読まないよ。自然に流れ込んでくるんじゃなくて集中しなきゃ聞こえないんだし」

フレッドは苦笑いした。

「マイクもいいな?」

フィル先輩に聞かれた僕はコクコクと首を縦に振った。

これって、トリプルデート?

フレッドが咳き込みながら笑っていた。
読んでるじゃないか!
まあ、読ませたってのは多少あるけど。



30分ほど歩けば街に出るから、雨降りだったけど歩くことにした。
みんなブーツだったし、足下さえしっかりしていれば雨はそんなに苦じゃない。
せっかくだし?ということで、相合い傘で行くことになった。

ずっとしゃべっている賑やかなフィル先輩とメイ。
長身どうしでなんとなく一緒になった僕とサラ。
天使なフレッドと妖精みたいなマリ。

あれ?なんとなくみんないい感じっぽいなと思っていたけど、特に会話も無く長い足で歩く僕とサラはいつの間にか2人だけ飛び出していた。

「これはこれで良かったかも。いつもあの2人っていうかマリに合わせてゆっくり歩いていたけど、自分のペースで歩けるのって楽ね。もしかしてマイクは合わせてくれてる?」

「えっと、いや?そうでもない、かな?」

「何よ、なんで狼狽えてるの?初デート?」

「う、うん」

「あらら、私じゃない方が良かった?」

「いや!サラで!が!…サラが…良いです…」

「あっ、あ、そう。それはどうも」

それから後は会話が全く続かず、より一層早足になった僕たちは早々に街に着いて、雨宿りしながらみんなを待った。

なんとなく距離を取って雨宿りしていたら、後から来た2人組の男たちがサラに絡み出した。

「君、かわいいね。美味しいご飯の店知ってるんだけど一緒に行こうよ」
「俺の傘に入りなよ。くっ付けば濡れないから」

「行きませんし、傘にも入りません。待ち合わせしてるので構わないでください」

「かわいい顔してキツいねえ」
「いいからこっち来いよ」

2人組の男たちがサラに手を伸ばすのを見て僕は動いた。

「嫌がってるんだから触るなよ」

近くにいた方の男の手首を掴んで背の方に捻り上げながら凄むと、目の前でサラも同じようにもう1人の男を締め上げていた。

「「な、なんだよ、お前ら!私服警官か?!まだ何もしてねえだろ!放せよ!」」

私服警官?!思わずポカンとした僕たちが手を緩めると、2人組の男たちは逃げて行った。

「し、私服警官…」

見ると、サラが俯いて堪えるように笑っていた。
僕もだんだん可笑しくなってきて笑った。

「覚えてろよ!とか言わないんだな、こんな時って」

「覚えられてたら困るじゃないの。し、し、私服、警官に……あっはっは…笑っちゃう。スッゴいタイミングだったね。同時に摘発!」

「あっはっは。戦闘系の身体能力に特化ってのはこういうことか」

「まあね。マイクもやるわね」

僕とサラの距離が縮まって、技の話で盛り上がっていると、フィル先輩とメイが来て、フレッドとマリが来た。

女の子たちが“カワイイ”で溢れた店に入って行ったのを見届けた僕たちは、お昼の集合時間まで遊戯場でビリヤードやピンボールをして過ごした。

どの遊戯をしても上手で様になっていたフィル先輩は知り合いも多いようで、あちこちから声をかけられていた。

僕とフレッドはなんとなくピンボールを弾きながら周りの様子を見ていた。
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