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庭師見習いは見た!情報量が多すぎる!
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旦那様と一緒に、捕まえられた3人が警察隊に連行された後、庭師組と衛兵たちは屋敷に戻った。
日常的なことを熟しながらもみんな仕事が手に着かず、特に親方と仲間が捕まった僕たち庭師組は、ほとんど捗らないまま時間が過ぎていた。
金庫と共に旦那様が戻ってきたのはお昼ご飯が終わる頃だった。
僕とフレッドとフィル先輩が、もう既に片付けられた執務室に入ると、中には軽食を食べる旦那様とメリーさんとメイド3人組と、縛られている執事長がいた。
「食べているままで話すぞ。マイク、単刀直入に聞くがお前は何者だ」
縛られている執事長が、パッと顔を上げて僕を凝視した。
「…何者、と言われましても…元孤児の庭師見習い…です」
ジッと僕を見ていたフレッドが旦那様に言った。
「うん、やっぱりマイクは嘘を言ってないよ、旦那様。執事長もマイクのことを知らない。多分マイクは地獄耳っていうのじゃないかな。知るはずのないことを知っているのは」
(え?“知るはずのないことを知っている”ことをなぜ知ってる?)
「フェアにいこうか、マイク。僕は心の声が聞こえる。上っ面だけ。マイクがいろいろ知っていることはそれで知ったよ」
「フレッド…、こ…心の中が…?」
「そう。だけど今みたいに意識されると聞こえない…と見せかけて実は聞こえてるってことは無いよ。器用だね。聞かせたい声だけ聞かせるなんて」
「そういうことか。今までの気持ちが全部筒抜けだったのは正直気持ち悪いけど…お互い様なところはあるからまあいいか。僕は…耳が飛ばせるんだ。物理的じゃなくて能力的に」
「ふっ。“物理的”…あ、ごめんなさい」
メイド3人のうちの1人がボソッと呟いた。
意味調べたのかな?
「なになに?サラとマイクは何かあった?意味って何?」
「フレッド!そんなんだから私たち構えちゃうのよ!読まないでおこうと思えばスルー出来るんでしょ!私たちまだ慣れてないんだから読まないでよ!」
「ごめんごめん、でも反応されると気になるから。もうガード固くてサラの考えてること読めてないから気にしないで」
「もう!あ…ごめんなさい。話を邪魔して。“物理的”っていう言葉が好きなんだな、って思っただけなんです。そうね、ふふ、本物の耳が空を飛んでいたら不気味ですものね」
「くっくっ…そ、それは無いから。まあでもその能力で情報収集はしていましたが、それだけです。恙無く生きていくためです。孤児だったから、状況が掴めていないと不安なんです」
「マイクに知られていることは、僕の家庭の事情と、メイがマイクに告白する気が無かったことと、サラの食い意地が張ってることと、マリがアクセサリー好きなことと、メリーさんが怪しいことと、フィル先輩が謎なことと、執事長が執務室で縛られていたことですね」
「なるほどな。フレッドの家庭の事情に関しては“知った”というだけか。後発的に」
「はい。そこに含みは無かったですね」
「よし!メイ、執事長を眠らせろ。今日の記憶も無くしておいてくれ。ここからは腹を割って話そうか」
僕に誘いをかけてきた洗濯メイドの女の子は催眠術が掛けられるようで、執事長はゆっくりと倒れて寝息を立てて眠ってしまった。
「自己紹介の前に意志確認をする。マイク、私たちはフレッドの実家の子爵家が取り潰された原因を探っている。仲間になる気がないならここで話は終わりだ。紹介状は書いてやる」
「……僕はフレッドが好きです」
空気感がザワッとした。
「あ!違います!ラブじゃないです!ライクです!だから、手伝えることがあるなら手伝いたい…っていう気持ちだけじゃダメでしょうか?」
「あ、うん。わかった。それでいい。表向きはこれまで通りでいくから危険は無いだろう」
「“頼りないフレッドが心配な同僚”ですね。でもフレッドが庭師見習いなのは違和感ありますよ。こんな色白で非力な庭師なんていませんから。それで何か事情があるのかなって詮索してしまったんですよ」
「なるほど、そういうものなのか。もう庭師じゃなくてもいいから、そうだな、執事見習いになるか?フレッド」
「執事長は記憶操作して泳がせますからその方が都合がいいですね。もう親方たちを見張らなくてもいいし。そうしましょう。肥料の袋1つ持てないって、結構心苦しかったんですよ」
「あ、いや、僕は気にしてはいなかったけど、ちょっと辛そうかなって」
「うん、マイク、ありがとう。僕もマイクがスゴく好きだよ……くくくっ…もちろんライクだからね?」
「「「読まないでって言ったでしょ!」」」
「「読むなよ!」」
メイド3人組と僕とフィル先輩の声が被った。
「えー、ごほん。フレッド、からかうな。
では私から自己紹介するが、フレッドの父親とは同級生で親友だった。同じ女性を好きになって、その人はフレッドの父親を選び、それからは2人とは距離を置いていた。でもフレッドが幼少の頃にその女性が病で亡くなってからは、たまにノーマンと飲むようになっていたんだが最近はまた疎遠になっていて、今回の突然の子爵家の取り潰しでフレッドたちと連絡を取り会ったんだ。さっきの先回りは影武者ということで通したが、そんな便利な者はいない。私は、予め座標軸を刻んでおいたところに転移出来るんだ」
銀髪にアメジストの瞳でいかにも貴族です、っていう容姿の旦那様はウィンクを飛ばしてきた。
それを見て眉をひそめたブルネットの長身モデル体型の妙齢の美女が、話し始めた。
「フレッドの紹介は今更要らないわね。私は普段はメリーって呼ばれているけど、本名はメイベル。フレッドの父親ノーマン・ネルソンの父親のマイラー・ネルソンの娘よ」
「………フレッドの…おばさん?」
「もう1回言ったら潰すわよ?基本的に男嫌いだけど魅了が出来るわ。違う能力が良かったんだけどね」
「男嫌いだからいいんだろう?男好きな魅了保持者なんて歩く迷惑だろ。俺はフィル。本名もそうだ。フレッドと似てるけど、俺はその人のオーラの色が見える。だからマイクが良い人間なことは分かっていたけど、奥に何か持ってるのが気になってちょっといろいろと試した。悪かったな」
「えーと、はい。大丈夫です。あれ?フィル先輩とメリーさん…でいいんですよね?今は。あの、付き合ってるのでは?」
「「無い無い!!」」
「え?私たち何か誤解されるようなこと話してた?」
「いやいや、え?あー、『今夜付き合えよ』とか『また行こうぜ』とか、そういうノリのことか?タッパの割にウブなんだな」
「あ、はい。付き合ってるんじゃなかったんですね。了解です。僕は後がいいですよね。3人が先にどうぞ」
「はい、洗濯メイドのメイです。催眠術が使えるので、先発隊になることが多いです!」
「私は掃除メイドのサラです。こう見えて力持ちで、戦闘系の身体能力に特化しています」
「私は厨房メイドのマリです。薬草とか毒物の知識があります。伯爵家の蔵書は秘蔵も含めて全て網羅してます」
茶髪茶目の小動物系のメイ、黒髪黒目のキリッとしたサラ、赤毛に琥珀色の瞳で透明感のあるマリはポンポンと自己紹介をした。
僕は先程の執務室での音を思い返して、状況を整理した。
もともとメリーさんに魅了されていた執事長が誘き出されて、マリさんの特製のお茶で意識をぼやかされた状態でサラさんに拘束されてメイさんに催眠術を掛けられていたんだな。
何かヘンな会話だと思ったのは催眠術で自白させられていたからか。
結局大したことは知らなくて、そのまま眠らされて縛られていたのか。
「そうだね」
「ふうん、慣れると便利かも。離れても聞こえる?」
「いや、見えないと聞こえない。っていうか、順応力がスゴいんだけど。わざと読ませた?」
「まあね」
さて、僕の番か。どう紹介しようかな。
日常的なことを熟しながらもみんな仕事が手に着かず、特に親方と仲間が捕まった僕たち庭師組は、ほとんど捗らないまま時間が過ぎていた。
金庫と共に旦那様が戻ってきたのはお昼ご飯が終わる頃だった。
僕とフレッドとフィル先輩が、もう既に片付けられた執務室に入ると、中には軽食を食べる旦那様とメリーさんとメイド3人組と、縛られている執事長がいた。
「食べているままで話すぞ。マイク、単刀直入に聞くがお前は何者だ」
縛られている執事長が、パッと顔を上げて僕を凝視した。
「…何者、と言われましても…元孤児の庭師見習い…です」
ジッと僕を見ていたフレッドが旦那様に言った。
「うん、やっぱりマイクは嘘を言ってないよ、旦那様。執事長もマイクのことを知らない。多分マイクは地獄耳っていうのじゃないかな。知るはずのないことを知っているのは」
(え?“知るはずのないことを知っている”ことをなぜ知ってる?)
「フェアにいこうか、マイク。僕は心の声が聞こえる。上っ面だけ。マイクがいろいろ知っていることはそれで知ったよ」
「フレッド…、こ…心の中が…?」
「そう。だけど今みたいに意識されると聞こえない…と見せかけて実は聞こえてるってことは無いよ。器用だね。聞かせたい声だけ聞かせるなんて」
「そういうことか。今までの気持ちが全部筒抜けだったのは正直気持ち悪いけど…お互い様なところはあるからまあいいか。僕は…耳が飛ばせるんだ。物理的じゃなくて能力的に」
「ふっ。“物理的”…あ、ごめんなさい」
メイド3人のうちの1人がボソッと呟いた。
意味調べたのかな?
「なになに?サラとマイクは何かあった?意味って何?」
「フレッド!そんなんだから私たち構えちゃうのよ!読まないでおこうと思えばスルー出来るんでしょ!私たちまだ慣れてないんだから読まないでよ!」
「ごめんごめん、でも反応されると気になるから。もうガード固くてサラの考えてること読めてないから気にしないで」
「もう!あ…ごめんなさい。話を邪魔して。“物理的”っていう言葉が好きなんだな、って思っただけなんです。そうね、ふふ、本物の耳が空を飛んでいたら不気味ですものね」
「くっくっ…そ、それは無いから。まあでもその能力で情報収集はしていましたが、それだけです。恙無く生きていくためです。孤児だったから、状況が掴めていないと不安なんです」
「マイクに知られていることは、僕の家庭の事情と、メイがマイクに告白する気が無かったことと、サラの食い意地が張ってることと、マリがアクセサリー好きなことと、メリーさんが怪しいことと、フィル先輩が謎なことと、執事長が執務室で縛られていたことですね」
「なるほどな。フレッドの家庭の事情に関しては“知った”というだけか。後発的に」
「はい。そこに含みは無かったですね」
「よし!メイ、執事長を眠らせろ。今日の記憶も無くしておいてくれ。ここからは腹を割って話そうか」
僕に誘いをかけてきた洗濯メイドの女の子は催眠術が掛けられるようで、執事長はゆっくりと倒れて寝息を立てて眠ってしまった。
「自己紹介の前に意志確認をする。マイク、私たちはフレッドの実家の子爵家が取り潰された原因を探っている。仲間になる気がないならここで話は終わりだ。紹介状は書いてやる」
「……僕はフレッドが好きです」
空気感がザワッとした。
「あ!違います!ラブじゃないです!ライクです!だから、手伝えることがあるなら手伝いたい…っていう気持ちだけじゃダメでしょうか?」
「あ、うん。わかった。それでいい。表向きはこれまで通りでいくから危険は無いだろう」
「“頼りないフレッドが心配な同僚”ですね。でもフレッドが庭師見習いなのは違和感ありますよ。こんな色白で非力な庭師なんていませんから。それで何か事情があるのかなって詮索してしまったんですよ」
「なるほど、そういうものなのか。もう庭師じゃなくてもいいから、そうだな、執事見習いになるか?フレッド」
「執事長は記憶操作して泳がせますからその方が都合がいいですね。もう親方たちを見張らなくてもいいし。そうしましょう。肥料の袋1つ持てないって、結構心苦しかったんですよ」
「あ、いや、僕は気にしてはいなかったけど、ちょっと辛そうかなって」
「うん、マイク、ありがとう。僕もマイクがスゴく好きだよ……くくくっ…もちろんライクだからね?」
「「「読まないでって言ったでしょ!」」」
「「読むなよ!」」
メイド3人組と僕とフィル先輩の声が被った。
「えー、ごほん。フレッド、からかうな。
では私から自己紹介するが、フレッドの父親とは同級生で親友だった。同じ女性を好きになって、その人はフレッドの父親を選び、それからは2人とは距離を置いていた。でもフレッドが幼少の頃にその女性が病で亡くなってからは、たまにノーマンと飲むようになっていたんだが最近はまた疎遠になっていて、今回の突然の子爵家の取り潰しでフレッドたちと連絡を取り会ったんだ。さっきの先回りは影武者ということで通したが、そんな便利な者はいない。私は、予め座標軸を刻んでおいたところに転移出来るんだ」
銀髪にアメジストの瞳でいかにも貴族です、っていう容姿の旦那様はウィンクを飛ばしてきた。
それを見て眉をひそめたブルネットの長身モデル体型の妙齢の美女が、話し始めた。
「フレッドの紹介は今更要らないわね。私は普段はメリーって呼ばれているけど、本名はメイベル。フレッドの父親ノーマン・ネルソンの父親のマイラー・ネルソンの娘よ」
「………フレッドの…おばさん?」
「もう1回言ったら潰すわよ?基本的に男嫌いだけど魅了が出来るわ。違う能力が良かったんだけどね」
「男嫌いだからいいんだろう?男好きな魅了保持者なんて歩く迷惑だろ。俺はフィル。本名もそうだ。フレッドと似てるけど、俺はその人のオーラの色が見える。だからマイクが良い人間なことは分かっていたけど、奥に何か持ってるのが気になってちょっといろいろと試した。悪かったな」
「えーと、はい。大丈夫です。あれ?フィル先輩とメリーさん…でいいんですよね?今は。あの、付き合ってるのでは?」
「「無い無い!!」」
「え?私たち何か誤解されるようなこと話してた?」
「いやいや、え?あー、『今夜付き合えよ』とか『また行こうぜ』とか、そういうノリのことか?タッパの割にウブなんだな」
「あ、はい。付き合ってるんじゃなかったんですね。了解です。僕は後がいいですよね。3人が先にどうぞ」
「はい、洗濯メイドのメイです。催眠術が使えるので、先発隊になることが多いです!」
「私は掃除メイドのサラです。こう見えて力持ちで、戦闘系の身体能力に特化しています」
「私は厨房メイドのマリです。薬草とか毒物の知識があります。伯爵家の蔵書は秘蔵も含めて全て網羅してます」
茶髪茶目の小動物系のメイ、黒髪黒目のキリッとしたサラ、赤毛に琥珀色の瞳で透明感のあるマリはポンポンと自己紹介をした。
僕は先程の執務室での音を思い返して、状況を整理した。
もともとメリーさんに魅了されていた執事長が誘き出されて、マリさんの特製のお茶で意識をぼやかされた状態でサラさんに拘束されてメイさんに催眠術を掛けられていたんだな。
何かヘンな会話だと思ったのは催眠術で自白させられていたからか。
結局大したことは知らなくて、そのまま眠らされて縛られていたのか。
「そうだね」
「ふうん、慣れると便利かも。離れても聞こえる?」
「いや、見えないと聞こえない。っていうか、順応力がスゴいんだけど。わざと読ませた?」
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