令嬢たちのお茶会

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令嬢としての最後のお茶会

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公爵令嬢ミシェル、侯爵令嬢ユリア、伯爵令嬢フランシスはお茶会が好きで、おしゃべりが大好き。

今日は、ワケアリ侯爵家のデモドリー様にお茶会に招待されて、3人揃ってワケアリ侯爵家に来ています。

「3人とも卒業おめでとうございます。ということで、もうすぐ結婚式ね。3組の合同結婚式だなんて驚いたけれど、それはそれとして、いろいろと準備は順調なのかしら?」

ミシェルの兄の公爵令息とフランシスが結婚することになり、その前から決まっていたミシェルの結婚を急ぐよりも、一緒に式を挙げましょうということになったのです。
そして、ユリアの侯爵家は、ユリアの年子である姉の挙式を昨年終えたばかりで、婿取りだったので出費が嵩んだこともあり、ユリアの方はもうしばらく後でということになっていたのですが、それを聞き付けたミシェルが父親の公爵に直談判して、3組合同結婚式と相成りました。

非難する声が無かった訳ではありませんが、概ね好意的に捉えられました。
招待される方も回数が多いのは大変だし、年頃の令息令嬢を持つ貴族にとっては挙式費用の捻出など、明日は我が身。
公爵家が率先して倹約の道を示してくれるのならば、乗ってしまえという波が起きたのです。

花嫁たちは仲良しだし、公爵家先導なので挙式に関しての問題は無いのですが、デモドリー様は3人娘の閨教育の先生だったので、ついそちらの方面の心配をしてしまいます。

ユリアの侯爵家は自由な家風で、侍女たちとも打ち解けた会話をしたり、女系なので叔母や従姉妹も多く、ユリアと姉はまあまあ知識があったのでとても教えやすかったわ、とデモドリー様は回想しました。
今となっては既婚者である姉もいるので万全です。

ミシェルもそれなりに理解はしていたので、決定的かつ具体的な事象や模型の提示で事足りました。
パズルのピースがはまるように、ミシェルの疑問が解消していく様は寧ろ圧巻でした。
如何せん、お相手の令息がフワフワと夢見がちなのが気になりますが、ドレスのリボンやフリルとナイトドレスのは意味が違います。
いざ、ベッドイン、となればきっと目覚めることでしょう。

問題はフランシスでした。
全く知らないのでは無いのですが、伯爵家で牧場経営をしている影響もあって動物の繁殖行動が基本スタンスな上に肝心要が抜けていたので、軌道修正が大変だったのです。

「先生、わたくし体が固いので、見つめ合うとか手を繋ぐというのは難しそうです。他に良い高め方はありませんか?」

「えー…っと?固い?今だってわたくしと見つめ合っているではありませんか?」

「それは向かい合っているからですわ。でも、あの、そういう時って、だって、お尻を向けるじゃないですか。ものすごく振り返らないとなかなか目は…」

「それは動物の…!馬の繁殖です!!」

「え?違いますの?」

本当に大変でした。
デモドリー様は今でも伝えきれたかどうか不安です。
しかしフランシスのお相手は人当たりが良いことに定評のあるお方です。
穏やかで動物好きな彼ならばきっと、フランシスが多少?突拍子のないことをしても受け止めてくれるでしょう。
もしかしたら…軌道修正しなかった方がプレイとして有りだったかもしれません。

くすくすと笑いながらミシェルが話します。

「ナイトドレスのデザインを彼に任せたの。どれだけリボンやフリルを付けてもいいし、どんな色でもどんなに短くてもいいわよ、って。その代わり、イブニングドレスはこれからは絶対に口出ししないで、って」

ユリアが笑います。

「あの人に選ばせたら“どピンク”一択でしょ?うまい落とし所見付けたわね。こっちもそれでいこうかしら。ていうか、ナイトドレスがそもそもお胸強調なんだけどね」

「え…ナイトドレスって自分で用意するの?」

フランシスが恐る恐る聞いてきました。

「あ~、時と場合によるわよ?ミシェルのとこは、ほら、彼がドレスをフリフリにしたがるのを止めさせたかったから交渉したんだし、わたくしは向こうの侍女とも親しくしてるから希望を伝えたりしてるけど…え~と…」

ユリアの後をミシェルが続けます。

「フランシス、大丈夫よ。貴女のところの優秀な侍女たちに任せておけばいいのよ。お兄様は貴女が何を着ていたってデレデレでしょうし。家じゃフランシスが可愛いって惚気まくって大変よ」

「え~!嬉しい!一緒にいる時も可愛いって言ってくれるけど、穏やか~に言うからお愛想だと思っていたわ」

「カッコ付けてるのよ、お兄様ったら」

「お愛想でもカッコ付けでもいいから可愛いって言ってくれるだけいいじゃない。全然言ってくれないわよ」

頬を膨らませながらユリアが拗ねると、ミシェルが思わせぶりに笑って言いました。

「ユリアの彼は口で言わないだけでしょ。スッゴい目で見てる時があるわよ。あれは当てられるわね」

「え!いつよ!ミシェル、教えてよ~」

「だってユリアが見ていない時だもの」

「デモドリー先生!彼氏に可愛いって言わせたい時はどうしたらいいんですか?!」

ユリアがデモドリー様を振り返って叫びました。

「寝たふりしなさい。ま、彼氏がちゃんと可愛いって思ってくれている前提の話だけどね」


口で言おうが目で言おうが、新婚間近の惚気になんて付き合っていられないわと、デモドリー様は思いました。
結婚式には招待されていますので、いい男でも探そうかしらと、デモドリー様は思案しました。

3人の令嬢たちが、奥様になる日はもうすぐです。
令嬢としてのお茶会は最後だとしても、奥様になってもずっと、3人のお茶会は続いていくことでしょう。









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