6 / 6
令嬢としての最後のお茶会
しおりを挟む
公爵令嬢ミシェル、侯爵令嬢ユリア、伯爵令嬢フランシスはお茶会が好きで、おしゃべりが大好き。
今日は、ワケアリ侯爵家のデモドリー様にお茶会に招待されて、3人揃ってワケアリ侯爵家に来ています。
「3人とも卒業おめでとうございます。ということで、もうすぐ結婚式ね。3組の合同結婚式だなんて驚いたけれど、それはそれとして、いろいろと準備は順調なのかしら?」
ミシェルの兄の公爵令息とフランシスが結婚することになり、その前から決まっていたミシェルの結婚を急ぐよりも、一緒に式を挙げましょうということになったのです。
そして、ユリアの侯爵家は、ユリアの年子である姉の挙式を昨年終えたばかりで、婿取りだったので出費が嵩んだこともあり、ユリアの方はもうしばらく後でということになっていたのですが、それを聞き付けたミシェルが父親の公爵に直談判して、3組合同結婚式と相成りました。
非難する声が無かった訳ではありませんが、概ね好意的に捉えられました。
招待される方も回数が多いのは大変だし、年頃の令息令嬢を持つ貴族にとっては挙式費用の捻出など、明日は我が身。
公爵家が率先して倹約の道を示してくれるのならば、乗ってしまえという波が起きたのです。
花嫁たちは仲良しだし、公爵家先導なので挙式に関しての問題は無いのですが、デモドリー様は3人娘の閨教育の先生だったので、ついそちらの方面の心配をしてしまいます。
ユリアの侯爵家は自由な家風で、侍女たちとも打ち解けた会話をしたり、女系なので叔母や従姉妹も多く、ユリアと姉はまあまあ知識があったのでとても教えやすかったわ、とデモドリー様は回想しました。
今となっては既婚者である姉もいるので万全です。
ミシェルもそれなりに理解はしていたので、決定的かつ具体的な事象や模型の提示で事足りました。
パズルのピースがはまるように、ミシェルの疑問が解消していく様は寧ろ圧巻でした。
如何せん、お相手の令息がフワフワと夢見がちなのが気になりますが、ドレスのリボンやフリルとナイトドレスのそれは意味が違います。
いざ、ベッドイン、となればきっと目覚めることでしょう。
問題はフランシスでした。
全く知らないのでは無いのですが、伯爵家で牧場経営をしている影響もあって動物の繁殖行動が基本スタンスな上に肝心要が抜けていたので、軌道修正が大変だったのです。
「先生、わたくし体が固いので、見つめ合うとか手を繋ぐというのは難しそうです。他に良い高め方はありませんか?」
「えー…っと?固い?今だってわたくしと見つめ合っているではありませんか?」
「それは向かい合っているからですわ。でも、あの、そういう時って、だって、お尻を向けるじゃないですか。ものすごく振り返らないとなかなか目は…」
「それは動物の…!馬の繁殖です!!」
「え?違いますの?」
本当に大変でした。
デモドリー様は今でも伝えきれたかどうか不安です。
しかしフランシスのお相手は人当たりが良いことに定評のあるお方です。
穏やかで動物好きな彼ならばきっと、フランシスが多少?突拍子のないことをしても受け止めてくれるでしょう。
もしかしたら…軌道修正しなかった方がプレイとして有りだったかもしれません。
くすくすと笑いながらミシェルが話します。
「ナイトドレスのデザインを彼に任せたの。どれだけリボンやフリルを付けてもいいし、どんな色でもどんなに短くてもいいわよ、って。その代わり、イブニングドレスはこれからは絶対に口出ししないで、って」
ユリアが笑います。
「あの人に選ばせたら“どピンク”一択でしょ?うまい落とし所見付けたわね。こっちもそれでいこうかしら。ていうか、ナイトドレスがそもそもお胸強調なんだけどね」
「え…ナイトドレスって自分で用意するの?」
フランシスが恐る恐る聞いてきました。
「あ~、時と場合によるわよ?ミシェルのとこは、ほら、彼がドレスをフリフリにしたがるのを止めさせたかったから交渉したんだし、わたくしは向こうの侍女とも親しくしてるから希望を伝えたりしてるけど…え~と…」
ユリアの後をミシェルが続けます。
「フランシス、大丈夫よ。貴女のところの優秀な侍女たちに任せておけばいいのよ。お兄様は貴女が何を着ていたってデレデレでしょうし。家じゃフランシスが可愛いって惚気まくって大変よ」
「え~!嬉しい!一緒にいる時も可愛いって言ってくれるけど、穏やか~に言うからお愛想だと思っていたわ」
「カッコ付けてるのよ、お兄様ったら」
「お愛想でもカッコ付けでもいいから可愛いって言ってくれるだけいいじゃない。全然言ってくれないわよ」
頬を膨らませながらユリアが拗ねると、ミシェルが思わせぶりに笑って言いました。
「ユリアの彼は口で言わないだけでしょ。スッゴい目で見てる時があるわよ。あれは当てられるわね」
「え!いつよ!ミシェル、教えてよ~」
「だってユリアが見ていない時だもの」
「デモドリー先生!彼氏に可愛いって言わせたい時はどうしたらいいんですか?!」
ユリアがデモドリー様を振り返って叫びました。
「寝たふりしなさい。ま、彼氏がちゃんと可愛いって思ってくれている前提の話だけどね」
口で言おうが目で言おうが、新婚間近の惚気になんて付き合っていられないわと、デモドリー様は思いました。
結婚式には招待されていますので、いい男でも探そうかしらと、デモドリー様は思案しました。
3人の令嬢たちが、奥様になる日はもうすぐです。
令嬢としてのお茶会は最後だとしても、奥様になってもずっと、3人のお茶会は続いていくことでしょう。
今日は、ワケアリ侯爵家のデモドリー様にお茶会に招待されて、3人揃ってワケアリ侯爵家に来ています。
「3人とも卒業おめでとうございます。ということで、もうすぐ結婚式ね。3組の合同結婚式だなんて驚いたけれど、それはそれとして、いろいろと準備は順調なのかしら?」
ミシェルの兄の公爵令息とフランシスが結婚することになり、その前から決まっていたミシェルの結婚を急ぐよりも、一緒に式を挙げましょうということになったのです。
そして、ユリアの侯爵家は、ユリアの年子である姉の挙式を昨年終えたばかりで、婿取りだったので出費が嵩んだこともあり、ユリアの方はもうしばらく後でということになっていたのですが、それを聞き付けたミシェルが父親の公爵に直談判して、3組合同結婚式と相成りました。
非難する声が無かった訳ではありませんが、概ね好意的に捉えられました。
招待される方も回数が多いのは大変だし、年頃の令息令嬢を持つ貴族にとっては挙式費用の捻出など、明日は我が身。
公爵家が率先して倹約の道を示してくれるのならば、乗ってしまえという波が起きたのです。
花嫁たちは仲良しだし、公爵家先導なので挙式に関しての問題は無いのですが、デモドリー様は3人娘の閨教育の先生だったので、ついそちらの方面の心配をしてしまいます。
ユリアの侯爵家は自由な家風で、侍女たちとも打ち解けた会話をしたり、女系なので叔母や従姉妹も多く、ユリアと姉はまあまあ知識があったのでとても教えやすかったわ、とデモドリー様は回想しました。
今となっては既婚者である姉もいるので万全です。
ミシェルもそれなりに理解はしていたので、決定的かつ具体的な事象や模型の提示で事足りました。
パズルのピースがはまるように、ミシェルの疑問が解消していく様は寧ろ圧巻でした。
如何せん、お相手の令息がフワフワと夢見がちなのが気になりますが、ドレスのリボンやフリルとナイトドレスのそれは意味が違います。
いざ、ベッドイン、となればきっと目覚めることでしょう。
問題はフランシスでした。
全く知らないのでは無いのですが、伯爵家で牧場経営をしている影響もあって動物の繁殖行動が基本スタンスな上に肝心要が抜けていたので、軌道修正が大変だったのです。
「先生、わたくし体が固いので、見つめ合うとか手を繋ぐというのは難しそうです。他に良い高め方はありませんか?」
「えー…っと?固い?今だってわたくしと見つめ合っているではありませんか?」
「それは向かい合っているからですわ。でも、あの、そういう時って、だって、お尻を向けるじゃないですか。ものすごく振り返らないとなかなか目は…」
「それは動物の…!馬の繁殖です!!」
「え?違いますの?」
本当に大変でした。
デモドリー様は今でも伝えきれたかどうか不安です。
しかしフランシスのお相手は人当たりが良いことに定評のあるお方です。
穏やかで動物好きな彼ならばきっと、フランシスが多少?突拍子のないことをしても受け止めてくれるでしょう。
もしかしたら…軌道修正しなかった方がプレイとして有りだったかもしれません。
くすくすと笑いながらミシェルが話します。
「ナイトドレスのデザインを彼に任せたの。どれだけリボンやフリルを付けてもいいし、どんな色でもどんなに短くてもいいわよ、って。その代わり、イブニングドレスはこれからは絶対に口出ししないで、って」
ユリアが笑います。
「あの人に選ばせたら“どピンク”一択でしょ?うまい落とし所見付けたわね。こっちもそれでいこうかしら。ていうか、ナイトドレスがそもそもお胸強調なんだけどね」
「え…ナイトドレスって自分で用意するの?」
フランシスが恐る恐る聞いてきました。
「あ~、時と場合によるわよ?ミシェルのとこは、ほら、彼がドレスをフリフリにしたがるのを止めさせたかったから交渉したんだし、わたくしは向こうの侍女とも親しくしてるから希望を伝えたりしてるけど…え~と…」
ユリアの後をミシェルが続けます。
「フランシス、大丈夫よ。貴女のところの優秀な侍女たちに任せておけばいいのよ。お兄様は貴女が何を着ていたってデレデレでしょうし。家じゃフランシスが可愛いって惚気まくって大変よ」
「え~!嬉しい!一緒にいる時も可愛いって言ってくれるけど、穏やか~に言うからお愛想だと思っていたわ」
「カッコ付けてるのよ、お兄様ったら」
「お愛想でもカッコ付けでもいいから可愛いって言ってくれるだけいいじゃない。全然言ってくれないわよ」
頬を膨らませながらユリアが拗ねると、ミシェルが思わせぶりに笑って言いました。
「ユリアの彼は口で言わないだけでしょ。スッゴい目で見てる時があるわよ。あれは当てられるわね」
「え!いつよ!ミシェル、教えてよ~」
「だってユリアが見ていない時だもの」
「デモドリー先生!彼氏に可愛いって言わせたい時はどうしたらいいんですか?!」
ユリアがデモドリー様を振り返って叫びました。
「寝たふりしなさい。ま、彼氏がちゃんと可愛いって思ってくれている前提の話だけどね」
口で言おうが目で言おうが、新婚間近の惚気になんて付き合っていられないわと、デモドリー様は思いました。
結婚式には招待されていますので、いい男でも探そうかしらと、デモドリー様は思案しました。
3人の令嬢たちが、奥様になる日はもうすぐです。
令嬢としてのお茶会は最後だとしても、奥様になってもずっと、3人のお茶会は続いていくことでしょう。
10
お気に入りに追加
21
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説


私のお見合い相手が姉の元夫でした
冬花美優
恋愛
独身のみさきは、友達の薦めで始めた話題の婚活アプリに、登録して初のお見合いをするために、カフェで待ち合わせをして、お見合い相手がやってきたのだが、その人は姉の元夫でした
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。


美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非!
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる