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追放万歳、ようこそ自堕落スローライフ
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「「「追放」」」
「されてしまいましたわ」
「されましたか」
「されたな」
「「「え?」」」
3つの国の国境に位置する森の中で、トランクを1つ持ったドレス姿のご令嬢と、風呂敷包みを抱えた聖女と、リュックを背負った勇者が出会いました。
立ち話も何だからと、ご令嬢が魔法のトランクから丸テーブルと椅子を3脚出して、お茶会が始まりました。
聖女が出した水をご令嬢が魔法で沸かし、勇者が持っていたハーブで淹れたお茶を飲み、森の木の実や果物を摘まみながら、お互いに身の上話をしました。
「わたくしは伯爵家の娘だったのですが、婚約者の公子様にお前のような悪女とは結婚出来ないと婚約破棄されてしまって、実家の方でも窃盗の冤罪をかけられて追い出されてしまったのです。わたくし、何もしていないのに。でも、婚約者様のマザコンにも家からのパワハラにもウンザリしていましたので、これ幸いとすんなり追い出されてあげましたの。せいせいしましたわ。婚約者様はなにやら真実の愛に目覚めたとか寝言をおっしゃってましたが、目線は新しい恋人の胸にしか向いていませんでしたから、そこに真実の愛があったんでしょうねえ」
「おっぱいは正義…」
「なんて?」
思わず呟いた勇者に、聖女が聞き返しました。
「いえいえ、何でもないです。聖女様はどうして追放されたんですか?」
「私は毎日静かにお祈りを捧げて秘かに結界を張っていたのですが、何もしていないように見えていたらしくて、ただ飯食いは出ていけと神殿を追い出されました。後から来た、大袈裟に祈祷しては気絶するパフォーマンスの派手な女性が本物の聖女だと言ってましたけど…まあ、そう言うんならそうなんでしょうねえ。あんなの詐欺師の常套手段でしょうに。それはそれとして、勇者様は何故?」
「ああ、う~ん、何というか…魔王を倒したのは良かったんですが、王女と結婚しろと言われたんです。しかし、私実は女なんですよ。召喚されてこの世界に来たんですが、短髪で痩せていてジーンズを履いていたんで男だと思われていたらしいんだけど、私もそう思われてることに気付いてなかったんですよね。だから結婚なんて出来ないでしょう?そうしたら騙していたのか!とか言われて追い出されました」
「まあ…聖女様も勇者様も大変でしたのね。ショックだったでしょう?」
「信頼も理解もしてくれない人たちに使われるのはウンザリだったから平気よ」
「私もなあ…戦って当たり前、勝って当たり前みたいな扱いに納得いってなかったな。目の前で傷付けられてるみんなを見ちゃったらもうやるしかなかったんだけどね。ま、今はとりあえず平和っぽいから、あの高圧的な国から出られて良かったよ。聖女様のいた国は、聖女様がいなくなっても大丈夫?」
「ここからでも届くから結界は張ってあげてるわ。だから大丈夫よ」
「「ええっ!張ってあげてるの?!」」
「うん。呼び戻されたら面倒だもの。偽物聖女様には頑張っていてもらわなくちゃね。“出来る人”だなんて思われたら搾取されるだけだし。これからは好きなように生きるわ」
「あの~、私はさっき言ったように勇者として召喚されてこの世界に来たんだけど…もしかしてお2人も異世界というか、日本の記憶があるんじゃない?」
「「あれ?わかった?」」
「やっぱり!割り切り方がすごいし、マザコンとかパワハラとか言ってたし、パフォーマンスとか詐欺師の常套手段とかも!転生ですか?」
「多分ね。私は聖女の力に目覚めた時に前世の記憶が蘇ったわ」
「わたくしは、伯爵家に生まれて物心ついた頃から何だかよく分からない記憶があって、とにかく様子を探ろうと思っておとなしくしていたんだけど、何にも出来ないし分かってないと思われて利用されちゃったの。魔法が使えることも隠していたのよ」
「「ええっ!魔法が使えれば一目置かれたでしょうに…」」
「嫌よ。聖女様が言ったんじゃないの。搾取されるだけだって。わたくし、追い出して欲しくて、ヒロイン気取りの女をのさばらせておいたし、家族がわたくしを陥れようとしているのも静観していましたの。今頃わたくしを馬鹿にして高笑いしてひっくり返っているかもね」
「お嬢様はそれでいいの?聖女様も、結界は偽物聖女が張っていると思われててもホントにいいの?」
「いいわ。笑い者になるぐらい手切れ金代わりよ」
「そうよ。一番の復讐は幸せになることだって言うじゃない。私は今、自由で幸せよ。これ以上の復讐は無いわ。そんなことよりこの森の中で住める環境を作りましょうよ」
「賛成!わたくしの魔法と聖女様の力と勇者様の…えっと…何が出来ますの?」
「アイテムはいっぱい持ってるから大工仕事でも何でもござれだよ」
「「素晴らしいわ!」」
それから3人は力を合わせて森の中を整備して快適な家を建てて、誰に気兼ねすることなく悠々自適で幸せな自堕落スローライフを始めました。
「されてしまいましたわ」
「されましたか」
「されたな」
「「「え?」」」
3つの国の国境に位置する森の中で、トランクを1つ持ったドレス姿のご令嬢と、風呂敷包みを抱えた聖女と、リュックを背負った勇者が出会いました。
立ち話も何だからと、ご令嬢が魔法のトランクから丸テーブルと椅子を3脚出して、お茶会が始まりました。
聖女が出した水をご令嬢が魔法で沸かし、勇者が持っていたハーブで淹れたお茶を飲み、森の木の実や果物を摘まみながら、お互いに身の上話をしました。
「わたくしは伯爵家の娘だったのですが、婚約者の公子様にお前のような悪女とは結婚出来ないと婚約破棄されてしまって、実家の方でも窃盗の冤罪をかけられて追い出されてしまったのです。わたくし、何もしていないのに。でも、婚約者様のマザコンにも家からのパワハラにもウンザリしていましたので、これ幸いとすんなり追い出されてあげましたの。せいせいしましたわ。婚約者様はなにやら真実の愛に目覚めたとか寝言をおっしゃってましたが、目線は新しい恋人の胸にしか向いていませんでしたから、そこに真実の愛があったんでしょうねえ」
「おっぱいは正義…」
「なんて?」
思わず呟いた勇者に、聖女が聞き返しました。
「いえいえ、何でもないです。聖女様はどうして追放されたんですか?」
「私は毎日静かにお祈りを捧げて秘かに結界を張っていたのですが、何もしていないように見えていたらしくて、ただ飯食いは出ていけと神殿を追い出されました。後から来た、大袈裟に祈祷しては気絶するパフォーマンスの派手な女性が本物の聖女だと言ってましたけど…まあ、そう言うんならそうなんでしょうねえ。あんなの詐欺師の常套手段でしょうに。それはそれとして、勇者様は何故?」
「ああ、う~ん、何というか…魔王を倒したのは良かったんですが、王女と結婚しろと言われたんです。しかし、私実は女なんですよ。召喚されてこの世界に来たんですが、短髪で痩せていてジーンズを履いていたんで男だと思われていたらしいんだけど、私もそう思われてることに気付いてなかったんですよね。だから結婚なんて出来ないでしょう?そうしたら騙していたのか!とか言われて追い出されました」
「まあ…聖女様も勇者様も大変でしたのね。ショックだったでしょう?」
「信頼も理解もしてくれない人たちに使われるのはウンザリだったから平気よ」
「私もなあ…戦って当たり前、勝って当たり前みたいな扱いに納得いってなかったな。目の前で傷付けられてるみんなを見ちゃったらもうやるしかなかったんだけどね。ま、今はとりあえず平和っぽいから、あの高圧的な国から出られて良かったよ。聖女様のいた国は、聖女様がいなくなっても大丈夫?」
「ここからでも届くから結界は張ってあげてるわ。だから大丈夫よ」
「「ええっ!張ってあげてるの?!」」
「うん。呼び戻されたら面倒だもの。偽物聖女様には頑張っていてもらわなくちゃね。“出来る人”だなんて思われたら搾取されるだけだし。これからは好きなように生きるわ」
「あの~、私はさっき言ったように勇者として召喚されてこの世界に来たんだけど…もしかしてお2人も異世界というか、日本の記憶があるんじゃない?」
「「あれ?わかった?」」
「やっぱり!割り切り方がすごいし、マザコンとかパワハラとか言ってたし、パフォーマンスとか詐欺師の常套手段とかも!転生ですか?」
「多分ね。私は聖女の力に目覚めた時に前世の記憶が蘇ったわ」
「わたくしは、伯爵家に生まれて物心ついた頃から何だかよく分からない記憶があって、とにかく様子を探ろうと思っておとなしくしていたんだけど、何にも出来ないし分かってないと思われて利用されちゃったの。魔法が使えることも隠していたのよ」
「「ええっ!魔法が使えれば一目置かれたでしょうに…」」
「嫌よ。聖女様が言ったんじゃないの。搾取されるだけだって。わたくし、追い出して欲しくて、ヒロイン気取りの女をのさばらせておいたし、家族がわたくしを陥れようとしているのも静観していましたの。今頃わたくしを馬鹿にして高笑いしてひっくり返っているかもね」
「お嬢様はそれでいいの?聖女様も、結界は偽物聖女が張っていると思われててもホントにいいの?」
「いいわ。笑い者になるぐらい手切れ金代わりよ」
「そうよ。一番の復讐は幸せになることだって言うじゃない。私は今、自由で幸せよ。これ以上の復讐は無いわ。そんなことよりこの森の中で住める環境を作りましょうよ」
「賛成!わたくしの魔法と聖女様の力と勇者様の…えっと…何が出来ますの?」
「アイテムはいっぱい持ってるから大工仕事でも何でもござれだよ」
「「素晴らしいわ!」」
それから3人は力を合わせて森の中を整備して快適な家を建てて、誰に気兼ねすることなく悠々自適で幸せな自堕落スローライフを始めました。
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