1 / 8
ある日突然、手紙が届きました
しおりを挟む
僕はマイク。
イグナス・ドルトレッド伯爵のお屋敷の庭師をしている。
まあまあ1年間ぐらい見習いをやってからの昇格。
いろいろ、いろいろあった1年間だったけれど、その間に僕には掃除メイドのサラという彼女が出来たし、旦那様は結婚した。
旦那様のお相手のメイベル様は、旦那様の親友であるノーマン・ネルソン子爵の父親の血の繋がらない娘。
それって何?って関係だけど、今はもう伯爵家の奥様。
しばらくの間、事情があってメイベル様は伯爵家の使用人をしていたから、伯爵家のことは大体把握している。
そんな何でもない日常は、一通の手紙から綻び始めた。
その手紙に差出人の表記は無く、宛先もタイプライターで打たれたものだった。
中には写真が数枚。
旦那様と見知らぬ女性が、不適切な距離で接触している場面が写っていた。
言葉を換えるなら、イチャイチャ。
それを何故、ただの庭師の僕が目にしているのかというと、この伯爵家は“辺境伯の子供たち”という王国捜査網を担う組織の“表”組織で、僕もその組織の一員だからだ。
ちなみに僕の彼女のサラも組織の一員。
あとは、旦那様はもちろんだし、奥様も。庭師の親方のフィルさんに、洗濯メイドのメイ、厨房メイドのマリが中核で、他の使用人たちは見習いから手下まで多種多様。
あ、執事長だけは微妙なポジション。
もともとイグナス様は中立を表明していて、そういう中立的立場の貴族へのスパイとして伯爵家に送り込まれていたんだけど、かくかくしかじかで結局まだ執事長をしている。
悪い人じゃないし、仕事は出来るから。
でも信用はなかなか出来ないんだよね。
“かくかくしかじか”の中身を言っちゃうと、メイベル様に魅了されていて、メイに催眠術を掛けられてるので外に出せないってことだから。
この伯爵家の中核メンバーはみんな特殊能力を持っている。
旦那様は予め座標を刻んでおいた場所に転移出来る。
奥様は魅了持ち。
フィル親方はオーラが見える。
メイは催眠術で、サラは戦闘能力、マリは薬草・毒草の知識に長けている。
そして僕は片耳(半耳かな)の聴力を飛ばせる。
土地勘のある場所か、遠隔の場合は介在者が必要だけど。
さて、そんなメンバーの真ん中のテーブルの上に鎮座している写真たち。
写っている旦那様は少し若い気はするが、若者ではない。
写真の当時はきっとメイベル様との関係は始まってなかったと…思いたいが、今現在送られてきたということが問題だ。
旦那様はそもそも、学園時代に出会って恋をしたクラリス様を、彼女がノーマン様(旦那様の親友)と結婚してからも、亡くなられてからも、ずっと一途に思っていたはず。
手紙の宛先は奥様だった。
召集が掛かり、全員が揃ったところでこの写真は広げられた。
表情の読めない奥様。
固まる僕たち。
そして、その写真を凝視する旦那様。
え?まさか…?旦那様…?!
イグナス・ドルトレッド伯爵のお屋敷の庭師をしている。
まあまあ1年間ぐらい見習いをやってからの昇格。
いろいろ、いろいろあった1年間だったけれど、その間に僕には掃除メイドのサラという彼女が出来たし、旦那様は結婚した。
旦那様のお相手のメイベル様は、旦那様の親友であるノーマン・ネルソン子爵の父親の血の繋がらない娘。
それって何?って関係だけど、今はもう伯爵家の奥様。
しばらくの間、事情があってメイベル様は伯爵家の使用人をしていたから、伯爵家のことは大体把握している。
そんな何でもない日常は、一通の手紙から綻び始めた。
その手紙に差出人の表記は無く、宛先もタイプライターで打たれたものだった。
中には写真が数枚。
旦那様と見知らぬ女性が、不適切な距離で接触している場面が写っていた。
言葉を換えるなら、イチャイチャ。
それを何故、ただの庭師の僕が目にしているのかというと、この伯爵家は“辺境伯の子供たち”という王国捜査網を担う組織の“表”組織で、僕もその組織の一員だからだ。
ちなみに僕の彼女のサラも組織の一員。
あとは、旦那様はもちろんだし、奥様も。庭師の親方のフィルさんに、洗濯メイドのメイ、厨房メイドのマリが中核で、他の使用人たちは見習いから手下まで多種多様。
あ、執事長だけは微妙なポジション。
もともとイグナス様は中立を表明していて、そういう中立的立場の貴族へのスパイとして伯爵家に送り込まれていたんだけど、かくかくしかじかで結局まだ執事長をしている。
悪い人じゃないし、仕事は出来るから。
でも信用はなかなか出来ないんだよね。
“かくかくしかじか”の中身を言っちゃうと、メイベル様に魅了されていて、メイに催眠術を掛けられてるので外に出せないってことだから。
この伯爵家の中核メンバーはみんな特殊能力を持っている。
旦那様は予め座標を刻んでおいた場所に転移出来る。
奥様は魅了持ち。
フィル親方はオーラが見える。
メイは催眠術で、サラは戦闘能力、マリは薬草・毒草の知識に長けている。
そして僕は片耳(半耳かな)の聴力を飛ばせる。
土地勘のある場所か、遠隔の場合は介在者が必要だけど。
さて、そんなメンバーの真ん中のテーブルの上に鎮座している写真たち。
写っている旦那様は少し若い気はするが、若者ではない。
写真の当時はきっとメイベル様との関係は始まってなかったと…思いたいが、今現在送られてきたということが問題だ。
旦那様はそもそも、学園時代に出会って恋をしたクラリス様を、彼女がノーマン様(旦那様の親友)と結婚してからも、亡くなられてからも、ずっと一途に思っていたはず。
手紙の宛先は奥様だった。
召集が掛かり、全員が揃ったところでこの写真は広げられた。
表情の読めない奥様。
固まる僕たち。
そして、その写真を凝視する旦那様。
え?まさか…?旦那様…?!
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

誰の代わりに愛されているのか知った私は優しい嘘に溺れていく
矢野りと
恋愛
彼がかつて愛した人は私の知っている人だった。
髪色、瞳の色、そして後ろ姿は私にとても似ている。
いいえ違う…、似ているのは彼女ではなく私だ。望まれて嫁いだから愛されているのかと思っていたけれども、それは間違いだと知ってしまった。
『私はただの身代わりだったのね…』
彼は変わらない。
いつも優しい言葉を紡いでくれる。
でも真実を知ってしまった私にはそれが嘘だと分かっているから…。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています

完結 愛のない結婚ですが、何も問題ありません旦那様!
音爽(ネソウ)
恋愛
「私と契約しないか」そう言われた幼い貧乏令嬢14歳は頷く他なかった。
愛人を秘匿してきた公爵は世間を欺くための結婚だと言う、白い結婚を望むのならばそれも由と言われた。
「優遇された契約婚になにを躊躇うことがあるでしょう」令嬢は快く承諾したのである。
ところがいざ結婚してみると令嬢は勤勉で朗らかに笑い、たちまち屋敷の者たちを魅了してしまう。
「奥様はとても素晴らしい、誰彼隔てなく優しくして下さる」
従者たちの噂を耳にした公爵は奥方に興味を持ち始め……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる