呪詛の祝言

柱こまち

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乙坂聡一編/0

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 その日、少年は滅多に見る事のない現場に立ち会った。

  人が殺された。

 真昼間の路地裏に幼い少年は友達と秘密基地を造ろうと町中から壊れたレンガや廃棄された空き缶などの廃資材を持ち込むことになっていた。

 重い物軽い物とまちまちで見つけた為か軽い廃資材を重点的に集めた少年の前には誰かが横たわり、その誰かを抱きかかえるように両膝を折っている人影が在る。

「だれ? 」

    少年は尋ねる。少年にとっては、誰かが襲われていることが問題なのではない。誰かがそこにいることが問題なのである。

 秘密基地……。つまり、秘密裏に造られ関係者以外にはその存在自体が秘匿される領域でなければならない。

 両膝を折っている影が少年の存在に気づくと動きがピタリと止まった。

 急に立ち上がり出した時、もう一方の誰かの顔が明瞭になる。

 少年の友達に似ている。

 ゴロンと顔が少年の方に傾くと、 まるで作り物のように……骨だけの顔と赤く染みた皮膚の顔が歪に共存していた。

「ヒッ⁉︎ 」

 その惨状を見て、初めて少年の顔に恐怖が宿る。

 少年は咄嗟に声を上げる。幸いに、ここからなら表の道路までそれほど距離は無く、大声であれば届くだろう。

 しかし、

「だっ‼︎ 」

 だれか助けて……。少年の願いは音として発することすらままならずに潰えた。
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