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第9話 要
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私の名づけが終わり、お茶会とやらも解散となった
ここに今残ったのは私とパペット、そして伯爵と呼ばれていた青年
あとは先ほど玄関で出迎えてくれたメイドさんだけ
彼は優雅に紅茶を口に運んでいた
「…ほかの皆さんは各々の場所に帰ったけど、あなたは戻らないんですか?」
紅茶を飲む手がぴたりと止まる
カップを一度テーブルに置き、彼は私に向き直った
「私の家はここなんですよ」
意味不明な言葉を投げかけた
家がこの屋敷?
「花楽里さんから聞いていませんか?衣食住こちらに構える方もいらっしゃると」
確かに聞いた覚えはある
が、さすがに花楽里も休憩などで利用している方がほとんどだと言っていた
さすがにこちらの世界で住居を構えるとは私は考えもしていなかった
「…そういえばあなたの通り名は聞きましたけど、本名は聞いていませんでしたね」
「あぁ、そうでした。彼らが軽い口喧嘩をするとは思わなかったもので…。私は小津要と申します。そしてこちらのメイドは」
「要様のメイドをしております、人形の蒲公英と申します。種別はドールでございます。」
体の露出が少ないため一見ドールには見えなかった
が、よく注視してみると手首の部分が球体関節になっていることがうかがえた
彼がにこやかに彼女…、蒲公英を見つめている
彼にとって彼女はドール以上の感情、親愛の感情が見て取れた
私はこのデッサン人形にうざい以上の感情を持ったことがない
彼らのその関係はうらやましく思えた
「…それで、戻らない理由なんかは教えてもらえるんです?」
話を軌道修正することにする
このままだと彼ら二人の世界になってこちらがお邪魔虫になってしまう
一度気になったものを伏せられたまま退散するのはちょっと勘弁願いたい
彼はまた紅茶を一口すすり話し始めた
「強いていうのならば、夢のためですね」
「夢?」
「えぇ、メイドと二人静かな屋敷でひっそりと暮らす夢」
「…じゃあその夢はもうかなえたんですね」
「そうですね、なのであちらに戻る理由もなくなりましたし、元あった家は燃やしてきました」
もう現実世界へは戻る気はないらしい
………ちょっとまて、いま不穏な言葉が聞こえた気が
「今、聞き間違いであってほしいんですが、家を燃やしたって言ったんですか?」
「えぇ、燃やしました。あんなクソみたいな世界には絶対に戻りたくないですからね」
なんだろう、この世界には、この戦いに参加している人たちは頭がおかしい人しかいないんだろうか
人を事情も伝えずにここに連れてきた少女とか、家を燃やしたこの人とか…
「…ちょっと頭痛くなってきたんで聞きたいこと変えますね…」
「えぇ、どうぞ」
「彼女…、槇原さんはどういった人柄なので?」
「強いて言うなら人を振り回すのが得意な人間ですかね」
「あぁ…」
とてもわかる
激しく同意ができる
おもわず私は首を縦に何度も降っていた
そんな私を見て彼はクスリと笑う
「そして、得体のしれない人間です」
笑みを消して彼は真剣に私に告げた
「…付き合いは長い方じゃないんですか?」
「確かに長いですが、それでもなお底が見えないのです。彼女はかなり特殊な人形遣いで相当な数の人形と契約をしているんです。いつも体を隠すようなものを身に着けていますが、彼女の体には至るところに人形たちとの契約印が施されています。もう一つ言えば、彼女の切り札とも呼べる人形。貴方の人形と同じ週類だということは分かっていますよ」
私の人形…つまりパペットと同じ種類…
こいつに同類がいたことに驚きだが、切り札とは…
こいつも同じようにそんな力を持っているのか
「んん?どうしたよ、相棒。そーんな熱い視線で俺っちを見ないでくれよぅ。俺っちもえそうだぜぇ~?」
そう言い終えた瞬間そのふざけた横面をおもいっきり殴ってやった
私の手も痛いが奴も結構痛がっている
お相子だ
「はは…、本当に仲がいいんですねぇ」
「勘弁してください…」
なにか彼から聞き出そうとも考えたが、結果わからないことが増えてしまった
彼女の持つ切り札、こいつと関係があるのだろうか
なんにせよ、警戒しておいた方が身のためだろう
彼に別れを告げ、私は一度現実へと戻ることにした…
ここに今残ったのは私とパペット、そして伯爵と呼ばれていた青年
あとは先ほど玄関で出迎えてくれたメイドさんだけ
彼は優雅に紅茶を口に運んでいた
「…ほかの皆さんは各々の場所に帰ったけど、あなたは戻らないんですか?」
紅茶を飲む手がぴたりと止まる
カップを一度テーブルに置き、彼は私に向き直った
「私の家はここなんですよ」
意味不明な言葉を投げかけた
家がこの屋敷?
「花楽里さんから聞いていませんか?衣食住こちらに構える方もいらっしゃると」
確かに聞いた覚えはある
が、さすがに花楽里も休憩などで利用している方がほとんどだと言っていた
さすがにこちらの世界で住居を構えるとは私は考えもしていなかった
「…そういえばあなたの通り名は聞きましたけど、本名は聞いていませんでしたね」
「あぁ、そうでした。彼らが軽い口喧嘩をするとは思わなかったもので…。私は小津要と申します。そしてこちらのメイドは」
「要様のメイドをしております、人形の蒲公英と申します。種別はドールでございます。」
体の露出が少ないため一見ドールには見えなかった
が、よく注視してみると手首の部分が球体関節になっていることがうかがえた
彼がにこやかに彼女…、蒲公英を見つめている
彼にとって彼女はドール以上の感情、親愛の感情が見て取れた
私はこのデッサン人形にうざい以上の感情を持ったことがない
彼らのその関係はうらやましく思えた
「…それで、戻らない理由なんかは教えてもらえるんです?」
話を軌道修正することにする
このままだと彼ら二人の世界になってこちらがお邪魔虫になってしまう
一度気になったものを伏せられたまま退散するのはちょっと勘弁願いたい
彼はまた紅茶を一口すすり話し始めた
「強いていうのならば、夢のためですね」
「夢?」
「えぇ、メイドと二人静かな屋敷でひっそりと暮らす夢」
「…じゃあその夢はもうかなえたんですね」
「そうですね、なのであちらに戻る理由もなくなりましたし、元あった家は燃やしてきました」
もう現実世界へは戻る気はないらしい
………ちょっとまて、いま不穏な言葉が聞こえた気が
「今、聞き間違いであってほしいんですが、家を燃やしたって言ったんですか?」
「えぇ、燃やしました。あんなクソみたいな世界には絶対に戻りたくないですからね」
なんだろう、この世界には、この戦いに参加している人たちは頭がおかしい人しかいないんだろうか
人を事情も伝えずにここに連れてきた少女とか、家を燃やしたこの人とか…
「…ちょっと頭痛くなってきたんで聞きたいこと変えますね…」
「えぇ、どうぞ」
「彼女…、槇原さんはどういった人柄なので?」
「強いて言うなら人を振り回すのが得意な人間ですかね」
「あぁ…」
とてもわかる
激しく同意ができる
おもわず私は首を縦に何度も降っていた
そんな私を見て彼はクスリと笑う
「そして、得体のしれない人間です」
笑みを消して彼は真剣に私に告げた
「…付き合いは長い方じゃないんですか?」
「確かに長いですが、それでもなお底が見えないのです。彼女はかなり特殊な人形遣いで相当な数の人形と契約をしているんです。いつも体を隠すようなものを身に着けていますが、彼女の体には至るところに人形たちとの契約印が施されています。もう一つ言えば、彼女の切り札とも呼べる人形。貴方の人形と同じ週類だということは分かっていますよ」
私の人形…つまりパペットと同じ種類…
こいつに同類がいたことに驚きだが、切り札とは…
こいつも同じようにそんな力を持っているのか
「んん?どうしたよ、相棒。そーんな熱い視線で俺っちを見ないでくれよぅ。俺っちもえそうだぜぇ~?」
そう言い終えた瞬間そのふざけた横面をおもいっきり殴ってやった
私の手も痛いが奴も結構痛がっている
お相子だ
「はは…、本当に仲がいいんですねぇ」
「勘弁してください…」
なにか彼から聞き出そうとも考えたが、結果わからないことが増えてしまった
彼女の持つ切り札、こいつと関係があるのだろうか
なんにせよ、警戒しておいた方が身のためだろう
彼に別れを告げ、私は一度現実へと戻ることにした…
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