上 下
80 / 83

第79話 ドラゴンを倒すはずじゃったのに ~ソフィアサイド~

しおりを挟む
竜天島という島の奥地に来たワシたちじゃが……
そこにいたオムニスとやらは、どうやら以前会っていたようじゃ。

うーん……
思い出せんのぅ。
この場所とか島の風景はなんとなく覚えておるのじゃが……

なんとかごまかそうと話をするのじゃが、すべて見透かされておる。
ワシと相当会っておるのじゃろぅ。
性格も何かも分かっておるという感じじゃのぅ。

そうであれば、別に気にすことはないのかもしれん。
忘れたものは忘れたのじゃ。
思い出そうとしても思い出せんのだし、仕方がないってことじゃ。

その様なことを考えておる最中に、あやつはオムニスとやらにここに来た事情を話し始めたのじゃ。

「ラヒドに住むメルナール一族のお宝を以前にオムニスさんが持って行ってしまったらしく……
 それを返していただけないかということで、ここまで来ました」

「ああ、あの街から持ってきたものね。
 いっぱいあるから、どのことだろうな」

「いっぱいって……」

「定期的に襲っているんだ。
 だって、ドラゴンが理性のある魔物だと思われるのも厄介だし。
 この島にも近づいて欲しくないから、恐ろしい魔物だということも分からせたいし」

「はぁ……」

「あっ、でも人にはあまり被害が及ばないようにしているよ。
 そこは配慮している。
 建物とか、殺す気で来ている奴らは別だけど」

このオムニスとやらは、何気にいろいろと考えておるのぅ。
歯向かう奴らには容赦はしないし、案外ワシと似ているところもあるのぅ。
そこに親しみやすさを持っていたのかもしれん。
その話にあやつは、若干苦笑いをしておる。

「ほれ、おぬし。
 あの……メル……ナールじゃったかな、狐耳の女。
 あやつが渡したものを、オムニスとやらに見せたらどうじゃ」

「あっ、そうだった。
 あの、これらしいのですが……」

あやつはそういうと、絵が描かれた一枚の紙を取り出した。
オムニスとやらは、それを見て、

「ああ、あれね。
 確かに持ってきた、持ってきた。
 たぶん、あそこのどこかにあるよ」

後ろにキラキラした物が山積みされている場所を指して、そう言ったのじゃ。
オムニスとやらで隠れていて見えていなかったのもあり、それを見てマリーは

「あれ、全部あの街から持ってきたものですの?」

とビックリしておった。

「一部だよ、一部。
 さっき、話しただろ。
 ゾルダが光るものに封印されたって聞いたからさ……」

と言うことはじゃ。
オムニスとやらは、ワシを探しておったのか?
なんか急に可愛げが出てきたのぅ。

「ワシを探し出して、封印を解こうとしておったのか?」

すると、オムニスとやらは、照れくさそうに

「……止せって……
 そういうことを言われると照れくさいって。
 だって……それが親友ってもんだろう……」

それなら思い出せなくても、ワシとオムニスとやらは、親友じゃ。
急に愛らしい思えたのもあり、オムニスとやらを持ち上げて、目一杯抱きしめてやったのじゃ。

「やめろよ……
 はずかしい」

「いいや、やめんぞ。
 ワシの事をそこまで思ってくれていたなんて、嬉しいのじゃ」

オムニスとやらの頬をスリスリして、頭をぐしゃぐしゃになるまで撫でまくったのじゃ。

「あの、ゾルダ……
 それだけ思ってくれていた人を忘れるなんてどういうことよ」

はしゃぐワシの姿を見て、あやつはボソッと一言言いおった。
マリーも若干引いておる目でワシの事を見ておる。
でも、そんなことはどうでもいいのじゃ。
ワシの事を心配してくれる奴がいたとはのぅ。

「本当に昔から、そういうところあるよな。
 表現が過剰なんだよ」

オムニスとやらはぐしゃぐしゃになった髪の毛を整えつつ、ワシにそう言ったのじゃ。
それから続けて

「いろいろな街を襲うたびに、光るものを集めてきたんだよ。
 でも、持ってきても封印の解き方わからないし、聞く相手もいないしね。
 放置しておけば、封印も劣化するのかなと思ってそのままにしておいたんだけど……」

と、キラキラ光ったものを収集していた経緯を話しおった。

「オムニスさん、そういうことなんですね」

「だから、ゾルダが復活した以上、これはいらないってことだから。
 探して好きに持って帰っていいよ」

「ありがとうございます、オムニスさん。
 ここから探させていただきます。
 マリー、手伝ってもらえると……」

あやつはオムニスとやらにお礼を言うと、マリーを連れてガラクタの山へ向かっていきおった。

「なんでマリーが手伝わないといけないのですか?」

マリーは不満げな顔をしつつも、あやつに付いていったのじゃ。

マリーとあやつがメルナール……一族とやらの宝を探している間、ワシはオムニスと話をしていた。

「本当に心配したんだからな」

「悪いのぅ。
 この通りピンピンじゃ」

「で、封印はまだ解けてないのか?」

「そうじゃのぅ。
 あやつ……、あやつは勇者なのじゃが、それがカギになっておるというところまではわかっておる」

「あいつ、勇者なの?
 そんな威厳もなさそうだったけど」

「まぁ、確かにそうじゃ。
 弱いしのぅ」

「ゾルダに比べたら、みんな弱いよ」

なんだかんだで会話が弾むのじゃ。
この感覚は昔からの友と言う感じじゃのぅ。
その後も昔のワシのことやら、最近のオムニスとやらの話を聞いて盛り上がっておった。
その話を聞いて思い出したところも所々あって、そうじゃったそうじゃったと言う感覚になったのじゃ。

しばらくそんな話をしておると、あやつとマリーがお目当てのものを見つけたらしい。
二人で抱えてこちらに運んできおった。

「あったよ。
 たぶん、これだ」

あやつは満面の笑みで、そのお宝をポンポンと叩いておる。

「マリーが最初に見つけたのですわ。
 ねえさま、マリーを褒めて!」

マリーは相変わらず甘えん坊じゃのぅ。
ワシにすり寄ってくるマリーに対して、頭をなでてあげたのじゃ。
マリーは目じりが下がって嬉しそうにしていたのじゃ。

「さてと……
 これで目的は終わりだね。
 これを持って帰ろうか」

あやつはそう言うと、荷車に載せた宝を引っ張って船へと向かおうとしたのじゃ。

「ねえさま、メルナール一族のお宝は回収できましたし、さっさと帰って情報をいただきましょう」

「そうじゃのぅ……」

「えーっ、もう帰っちゃうの。
 次はいつ来るの?」

「そうじゃのぅ……
 近いうちに遊びに来るのじゃ」

「またそうやって100年近くこないんでしょ?」

そう言ってオムニスは膨れっ面をしておる。

「封印が解けたら、また来るのじゃ」

「オムニスさん、今度はマリーが連れてこさせるのでそんなに間を開けずに来ますわ」

そう話をして、ワシら三人はオムニスの住処を離れていったのじゃが……
何か忘れておる気がする……
…………

「そう言えば、ワシ、今回ほとんど戦ってないぞ!」

「良かったじゃん。
 そんなに大事にならなくて」

「……良くないのじゃ。
 戦い足りんのじゃ」

「そう言われてもなぁ……
 平和的に解決できたのなら、それはそれでいいんじゃないの?」

「ドラゴンをバカスカと倒すはずじゃったのに!
 戦う気でおったから、なんとなく後味が悪いのじゃ」

「そういうのは次回に取っておこうよ。
 それこそアスビモとやりあうためにさ」

「うーん……」

なんか釈然としないのじゃ。
こうモヤモヤする気持ちが膨れ上がるのじゃが……
そんなワシの気持ちを汲むこともなく、帰路は何も魔物が出なかったのじゃ。

「魔物が出なかったのはゾルダの殺気の所為でしょ
 そりゃ、殺されるのがわかっていたら、誰も出てこないって」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...