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第66話 ゾルダの異変 ~アグリサイド~
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「次は……
ヘルハウンドの群れだそうだ。
作物が食い荒らされるらしい」
ギルドからの情報に目を通し、ゾルダたちに伝える。
「っ……
なんだ犬っころか。
そう大したことないのぅ」
なんだか一瞬ゾルダが顔を歪めた気がしたけど……
もう一回確認すると、いつものゾルダの顔だった。
見間違いだろうか……
マリーもいつも通りベッタリで特に何かある感じはしていないようだ。
俺の勘違いならいいんだけどね。
その後、俺たちはヘルハウンドがいると思われる森へと足を運んだ。
ゾルダの魔力探知を頼りに群れの位置を把握する。
「群れが分散し始めたようじゃ。
ワシらを囲って追い詰める気かのぅ」
「それなら、俺たちはどうする?
俺たちも散らばって、それぞれ個別に戦っていくか?」
囲われて一度に相手するより、個々を倒す方がよっぽど安全だ。
そうゾルダに提案はしたものの……
「いや、ワザとワシらを囲わせる。
一斉に襲い掛かってきたところで、ワシが一網打尽にしてくれるわ」
と言って一向に俺の話を聞かない。
輪をかけて
「素晴らしい作戦ですわ。
さすがねえさま」
とマリーがゾルダを後押しするから余計にだ。
ただ俺はちょっと気になっていた。
さっきのローパーの時もそうだし、スパイダーの時もそうだ。
なんかゾルダの気持ちが上ずるというか力み過ぎというか……
いつも以上にパワーが出ている気がして、心配になる。
ザコと言う割には火力がデカいのである。
二日酔いの所為とかならいいんだけど……
「犬っころたちがだいぶ範囲を狭めてきたのぅ
こちらを追い詰めておるつもりじゃろうが……」
ゾルダはニヤニヤしながら、ヘルハウンドの気配を追っている。
あの顔を見ていると、普段と変わらない。
俺の取り越し苦労で済むならいいんだけど……
そうこうするうちに、ヘルハウンドの群れが俺たちを周りにわんさかと集まり始めた。
八方塞がりの状態に取り囲んできた。
「ゾルダ、大丈夫か?
逃げる隙間もないぐらい囲まれちゃったけど……」
「案ずるな。
問題ないのぅ。
犬っころたち、追い詰められていることも知らずにのこのこと出てきおった」
ゾルダはそう言うとより一層笑顔になっていく。
「さてと、そろそろ頃合いかのぅ。
これで全部のようじゃな」
ヘルハウンドの群れがすべて現れたところで、ゾルダがしかけていく。
「闇の雷」
空が瞬く間に暗くなり、真っ黒い雲に覆われる。
そこから稲光が無数にヘルハウンドの群れに落ちてくる。
「キャン……」
あちこちでヘルハウンドの悲鳴に近い鳴き声が聞こえてくる。
そしてあっという間に黒焦げである。
「相変わらずエグい力……」
ゾルダの力はどれだけ強いのかと思う。
これだけ多くのヘルハウンド相手でもなんと言うこともないのだから。
「ふぅ……
これで終わりかのぅ……」
今まで見たこともないような大きなため息をするゾルダ。
「なぁ、ゾルダ。
ちょっと無理し過ぎじゃないか?」
「ねえさま!
なんだかとてもお疲れのようです」
マリーもさすがにわかったのか心配そうに見ている。
「大丈夫じゃ!
まだ少しだけ酒が残っているだけじゃ。
そう心配することではない……」
捲し立てて話すゾルダだが、いつものような余裕の笑顔が少ないような気がした。
「次が最後じゃな。
行くぞ」
そう言うとゾルダは次の場所に向かい始めた。
俺はマリーに小声で
「次は俺たちで倒そう」
と伝えた。
「ええ。明らかにねえさまはおかしいですわ。
無理をなさらないように、マリーでなんとかしますわ」
マリーもゾルダを気遣って、次は率先して行くことを決意しているようだった。
「次はどこじゃ。
何が相手じゃ」
ゾルダは何故かイラつき始めていた。
たぶん思うように体が動かないのだろう。
「次はラドンだな。
今度は俺とマリーで……」
と言い始めたところで、ゾルダが険しい顔でこちらを向いた。
「ワシがやるから手を出すな。
わかったか、おぬし。
マリーもじゃぞ」
その気迫に俺とマリーは圧倒されて何も言い返せなかった。
しばらく歩くとラドンが生息する森へと到着した。
果樹が群生する森で独特の甘い匂いが漂っていた。
ここまで歩いてきて、ゾルダの様子が明らかにおかしくなっている。
息は荒く、顔色も悪い。
汗も大量に出ている。
これでは戦うのは厳しいだろうとゾルダに聞くものの
「何度言わせるのじゃ。
ワシがやると言ったらやるのじゃ」
と頑なだった。
何をそんなに拘っているのか、俺にはわからなかった。
少しでも負担をかけないようにと、ゾルダの替わりにマリーが気配探知を行っていた。
早く終わらせようと思い、全力で探してもらった。
そして、ラドンがいる林の奥に到達した。
「キシャーーーー」
ラドンもローパーと似つかわしくも感じるうにゃうにゃした頭が無数にある蛇だった。
マリーはそれを見て顔が青ざめていた。
ただ、ゾルダの様子がおかしいことがわかっていたので、気丈に振る舞っていた。
「ね……ねえさまが……もし何かあったら……マリーがや……やりますわ」
そのラドンを目の前にゾルダは
「ふぅ…………」
大きなため息をついた。
「お前が最後じゃな。
ワシを楽しませてくれよ」
言葉はいつも通りに余裕がある口ぶりだったが……
肩で息をしている状態だった。
「闇の……炎」
黒炎をラドンに向かって放つゾルダ。
しかし、いつもより力がない。
なんとかラドンに当たるも、致命傷を負わせるほどではなかった。
「ちぃっ……
効かんかのぅ……」
その後もいくつかブラックフレイムを放つが、状況は変わらなかった。
「やはりいつもねえさまではないですわ」
マリーはそう言うとゾルダの前に入り
「ねえさま!
あとはマリーに任せてくださいますか。
いいえ、任せてください」
意を決した言葉をゾルダに言うとラドンに立ち向かっていた。
「……悪いのぅ……」
力の無い声のゾルダが一言言うと、すっと剣の中に入っていった。
心配で振り返るマリーだが、ラドンも襲い掛かってきたため、そちらに集中し始めた。
「ねえさまと約束したんだから、マリーは絶対にお前を倒す。
そんなうにゃうにゃなんか気持ち悪くないんだから」
数多の頭がひっきりなしに襲い掛かってくるが、マリーも魔法で応戦する。
「フレイムストーム!」
炎の渦がラドンの頭に当たっては燃えていく。
しかしラドンはひるまずに無数の頭で噛みつきにくるのだった。
「もういい加減にしていただきたいわ」
たぶんいつものマリーならもっと楽に仕留めることが出来たのだろうが……
やっぱり苦手な相手だけに苦戦を強いられていた。
それでも、元四天王である。
「ねえさまの技、使わせていただきますわ。
闇の炎!」
最後はゾルダ譲りの貫禄のある一発でラドンを倒すことが出来た。
そしてホッと一息をついたマリーだったが、慌てて俺のところに寄ってきた。
「ねえさまは?
どこに行きましたの?」
「どうやら剣に入ったみたいだけど……
あまり反応がないんだ」
俺はマリーが戦っている間、なんとか剣の中のゾルダに話しかけてみていた。
「ゾルダ!
大丈夫か?」
「……あ……案ずるな」
かすかに反応があったものの、その後は反応がなくなっていた。
「ねえさまはどうなってしまうの?」
マリーは心配そうに剣を眺めていた。
「俺にもわからない……
ただ、最後に『案ずるな』と言っていたことを信じるしかないかな」
ゾルダのことは心配ではあるものの、打つ手が見つからない。
まずはゆっくりと休ませてあげるしかないのかもしれない。
「いったん、討伐は終わったし、街に戻ろう」
ゾルダが入った剣を大事に抱えるマリーとともに街への帰路に向かった。
ヘルハウンドの群れだそうだ。
作物が食い荒らされるらしい」
ギルドからの情報に目を通し、ゾルダたちに伝える。
「っ……
なんだ犬っころか。
そう大したことないのぅ」
なんだか一瞬ゾルダが顔を歪めた気がしたけど……
もう一回確認すると、いつものゾルダの顔だった。
見間違いだろうか……
マリーもいつも通りベッタリで特に何かある感じはしていないようだ。
俺の勘違いならいいんだけどね。
その後、俺たちはヘルハウンドがいると思われる森へと足を運んだ。
ゾルダの魔力探知を頼りに群れの位置を把握する。
「群れが分散し始めたようじゃ。
ワシらを囲って追い詰める気かのぅ」
「それなら、俺たちはどうする?
俺たちも散らばって、それぞれ個別に戦っていくか?」
囲われて一度に相手するより、個々を倒す方がよっぽど安全だ。
そうゾルダに提案はしたものの……
「いや、ワザとワシらを囲わせる。
一斉に襲い掛かってきたところで、ワシが一網打尽にしてくれるわ」
と言って一向に俺の話を聞かない。
輪をかけて
「素晴らしい作戦ですわ。
さすがねえさま」
とマリーがゾルダを後押しするから余計にだ。
ただ俺はちょっと気になっていた。
さっきのローパーの時もそうだし、スパイダーの時もそうだ。
なんかゾルダの気持ちが上ずるというか力み過ぎというか……
いつも以上にパワーが出ている気がして、心配になる。
ザコと言う割には火力がデカいのである。
二日酔いの所為とかならいいんだけど……
「犬っころたちがだいぶ範囲を狭めてきたのぅ
こちらを追い詰めておるつもりじゃろうが……」
ゾルダはニヤニヤしながら、ヘルハウンドの気配を追っている。
あの顔を見ていると、普段と変わらない。
俺の取り越し苦労で済むならいいんだけど……
そうこうするうちに、ヘルハウンドの群れが俺たちを周りにわんさかと集まり始めた。
八方塞がりの状態に取り囲んできた。
「ゾルダ、大丈夫か?
逃げる隙間もないぐらい囲まれちゃったけど……」
「案ずるな。
問題ないのぅ。
犬っころたち、追い詰められていることも知らずにのこのこと出てきおった」
ゾルダはそう言うとより一層笑顔になっていく。
「さてと、そろそろ頃合いかのぅ。
これで全部のようじゃな」
ヘルハウンドの群れがすべて現れたところで、ゾルダがしかけていく。
「闇の雷」
空が瞬く間に暗くなり、真っ黒い雲に覆われる。
そこから稲光が無数にヘルハウンドの群れに落ちてくる。
「キャン……」
あちこちでヘルハウンドの悲鳴に近い鳴き声が聞こえてくる。
そしてあっという間に黒焦げである。
「相変わらずエグい力……」
ゾルダの力はどれだけ強いのかと思う。
これだけ多くのヘルハウンド相手でもなんと言うこともないのだから。
「ふぅ……
これで終わりかのぅ……」
今まで見たこともないような大きなため息をするゾルダ。
「なぁ、ゾルダ。
ちょっと無理し過ぎじゃないか?」
「ねえさま!
なんだかとてもお疲れのようです」
マリーもさすがにわかったのか心配そうに見ている。
「大丈夫じゃ!
まだ少しだけ酒が残っているだけじゃ。
そう心配することではない……」
捲し立てて話すゾルダだが、いつものような余裕の笑顔が少ないような気がした。
「次が最後じゃな。
行くぞ」
そう言うとゾルダは次の場所に向かい始めた。
俺はマリーに小声で
「次は俺たちで倒そう」
と伝えた。
「ええ。明らかにねえさまはおかしいですわ。
無理をなさらないように、マリーでなんとかしますわ」
マリーもゾルダを気遣って、次は率先して行くことを決意しているようだった。
「次はどこじゃ。
何が相手じゃ」
ゾルダは何故かイラつき始めていた。
たぶん思うように体が動かないのだろう。
「次はラドンだな。
今度は俺とマリーで……」
と言い始めたところで、ゾルダが険しい顔でこちらを向いた。
「ワシがやるから手を出すな。
わかったか、おぬし。
マリーもじゃぞ」
その気迫に俺とマリーは圧倒されて何も言い返せなかった。
しばらく歩くとラドンが生息する森へと到着した。
果樹が群生する森で独特の甘い匂いが漂っていた。
ここまで歩いてきて、ゾルダの様子が明らかにおかしくなっている。
息は荒く、顔色も悪い。
汗も大量に出ている。
これでは戦うのは厳しいだろうとゾルダに聞くものの
「何度言わせるのじゃ。
ワシがやると言ったらやるのじゃ」
と頑なだった。
何をそんなに拘っているのか、俺にはわからなかった。
少しでも負担をかけないようにと、ゾルダの替わりにマリーが気配探知を行っていた。
早く終わらせようと思い、全力で探してもらった。
そして、ラドンがいる林の奥に到達した。
「キシャーーーー」
ラドンもローパーと似つかわしくも感じるうにゃうにゃした頭が無数にある蛇だった。
マリーはそれを見て顔が青ざめていた。
ただ、ゾルダの様子がおかしいことがわかっていたので、気丈に振る舞っていた。
「ね……ねえさまが……もし何かあったら……マリーがや……やりますわ」
そのラドンを目の前にゾルダは
「ふぅ…………」
大きなため息をついた。
「お前が最後じゃな。
ワシを楽しませてくれよ」
言葉はいつも通りに余裕がある口ぶりだったが……
肩で息をしている状態だった。
「闇の……炎」
黒炎をラドンに向かって放つゾルダ。
しかし、いつもより力がない。
なんとかラドンに当たるも、致命傷を負わせるほどではなかった。
「ちぃっ……
効かんかのぅ……」
その後もいくつかブラックフレイムを放つが、状況は変わらなかった。
「やはりいつもねえさまではないですわ」
マリーはそう言うとゾルダの前に入り
「ねえさま!
あとはマリーに任せてくださいますか。
いいえ、任せてください」
意を決した言葉をゾルダに言うとラドンに立ち向かっていた。
「……悪いのぅ……」
力の無い声のゾルダが一言言うと、すっと剣の中に入っていった。
心配で振り返るマリーだが、ラドンも襲い掛かってきたため、そちらに集中し始めた。
「ねえさまと約束したんだから、マリーは絶対にお前を倒す。
そんなうにゃうにゃなんか気持ち悪くないんだから」
数多の頭がひっきりなしに襲い掛かってくるが、マリーも魔法で応戦する。
「フレイムストーム!」
炎の渦がラドンの頭に当たっては燃えていく。
しかしラドンはひるまずに無数の頭で噛みつきにくるのだった。
「もういい加減にしていただきたいわ」
たぶんいつものマリーならもっと楽に仕留めることが出来たのだろうが……
やっぱり苦手な相手だけに苦戦を強いられていた。
それでも、元四天王である。
「ねえさまの技、使わせていただきますわ。
闇の炎!」
最後はゾルダ譲りの貫禄のある一発でラドンを倒すことが出来た。
そしてホッと一息をついたマリーだったが、慌てて俺のところに寄ってきた。
「ねえさまは?
どこに行きましたの?」
「どうやら剣に入ったみたいだけど……
あまり反応がないんだ」
俺はマリーが戦っている間、なんとか剣の中のゾルダに話しかけてみていた。
「ゾルダ!
大丈夫か?」
「……あ……案ずるな」
かすかに反応があったものの、その後は反応がなくなっていた。
「ねえさまはどうなってしまうの?」
マリーは心配そうに剣を眺めていた。
「俺にもわからない……
ただ、最後に『案ずるな』と言っていたことを信じるしかないかな」
ゾルダのことは心配ではあるものの、打つ手が見つからない。
まずはゆっくりと休ませてあげるしかないのかもしれない。
「いったん、討伐は終わったし、街に戻ろう」
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