モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている

光命

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第63話 封印されたはずじゃなかったのか ~ゼドサイド~

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余はゼド。
この世界を恐怖に突き落とす魔王である。
150年ほど前には勇者を相手に引き分けて少々深手を負ったが……
傷が癒えた今、再びこの世界を恐怖のどん底に陥れてくれるわ。

まずは手始めにアウレストリア王国を陥落させるべく、部下たちに命じた。
報告を受けておるが、戦果は上々のようである。
このまま一気に攻め落とし、世界征服の足掛かりとするのだ。

「ゼド様、緊急の報告がございます」

近衛兵の一人が慌てて駆け寄ってくる。

「なんだ。さっさと申せ」

「はっ、南方面の攻略をしていた四天王の一人クロウ様が倒されたとのことです」

「何?」

余の側近のであるクロウがやられただと。
ふん、四天王の中では一番弱かったしな。
だから一番楽そうな南を任せたのだが、結果も出せないとは。

「報告ご苦労。
 さがっていいぞ」

これは南方面の戦略を立て直ししないとな。
ここは東方面を任せているメフィストに任せるか。
それとも……

しかし、こうもっと強い奴はいないものか。
どいつもこいつも弱くて役立たずばかりで困る。
もっと余を満足させてくれる奴はいないのか。

どう持ち駒で国を滅ぼそうと思案しているが、手元の駒が少なくて困る。
そんなことを考えていた時に、あいつが余のところに来た。

「これはご機嫌麗しゅうございます、ゼド様」

「おい、アスビモ。
 余のどこが機嫌麗しいのか。
 どいつもこいつも使える奴が少なくてかなわん」

「これはこれは申し訳ございません。
 私としたことが……
 ゼド様の表情はいつも変わらずクールでいらっしゃるからつい……」

アスビモは喰えん奴だ。
だが余のために提案をしてくれる数少ない使える奴でもある。

「世辞はいい。
 今日は何の用だ」

「はっ。
 先日懐かしい方々にお会いしまして。
 その報告にと参りました」

懐かしい?
どんな奴と会ったというのだ。

「それがどうしたのだ。
 余が懐かしむ奴などいない」

「ゼド様、そう言わずにお聞きいただければと。
 本当に懐かしい方々でしたので」

アスビモはもったいぶる言い方をしてくるな。

「だからどうしたいうのだ。
 余は機嫌が悪いのだ。
 これ以上、余に絡むのであれば……」

「大変申し訳ございません。
 すぐに終わりますので、ご猶予を」

「で、誰なんじゃ。
 その懐かしいというのは」

「はい、ソフィア様とマリー様です」

「なーにー?」

確か300年ほど前に余が起こしたクーデターで、封印をしたはずだったはず。
その二人が姿を現しただと。

「あの二人はアスビモの提案で封印をしたはずじゃなかったのか?」

「はい。しっかりと封印はさせていただきました。
 ですが、想定外の事が起きたようで……」

「ちぃ……
 厄介な奴が出てきたな。
 あと他の奴らはいたのか?」

当時の四天王と呼ばれたシータ、ヒルダ、セバスチャンも一緒に封印したはずだった。
そいつらは居ないようだが……

「そうですね。
 他の方々は見ませんでしたので、お三方はまだ封印されたままなのかと思います」

「そうか。
 で、ソフィアとマリーはどこで会ったんだ?」

「ここよりだいぶ南方のムルデと言う街です。
 どうもそこからさらに南の方から来たようでした」

南の方だとクロウがやられた方だな。
もしかして……

「クロウをやったのはソフィアか?」

「はい。
 その様です。
 私も見てないのではっきりとは言えませんが、状況的にはその様です」

人ごときにクロウがやられるとは思わなかったが、ソフィアなら納得が行く。

「で、何故封印したソフィアが現れたのだ。
 確かお前が封印したんだったよな。
 そんな簡単な封印だったのか?
 ことと次第によっては……」

アスビモが提案して行った封印だ。
そんな軟な封印だったとはな。
あの時の余の力では敵わない相手だったから封印したのに、こうも脆いとは。

「いえいえ。
 滅相もございません。
 きちんと封印はさせていただきました。
 ただ、トリガーにしていた者と一緒に居ましたので、その所為かと」

あの時アスビモは絶対に相容れないものを封印のカギとしたとは聞いていたが……

「誰と一緒に居たのだ?」

「どうやら勇者様とご一緒だったようで……」

「勇者と一緒だと?」

ソフィアは元とは言え魔王である。
そんな奴と勇者が組むなんてありえん。
今の勇者は何をしているのだ。
真っ先に倒す相手だろ。

「はい。勇者様とは仲良くされていました」

「勇者と元魔王がか?
 笑わせる。
 そんなことがあるか」

「私も目を疑いましたが……」

アスビモは喰えない奴だが、あまり嘘は言ってこない。
どうやら本当らしいな。

「それで、ソフィアは完全に復活しているのか?」

「少しだけしか見ていませんが……
 力は以前ほどではないため、まだ封印は解け切っていないものと思われます」

完全に復活してないのであれば、まだやりようがあるかもしれない。
ここはメフィストを向かわせて、完全復活前に早めに叩かないとな。

「報告は以上か?
 おい、誰からメフィストを呼び戻せ!!
 南方面にはメフィストを向かわせる。
 それで空いた東を……」

他にいい奴がいないので、どうしたものかと思う。
任せられそうな奴は……
と思案したかをしていると

「ゼド様、お困りのようですので、是非ともこの方をご推薦させていただこうと思います」

アスビモがそう言うと、ランボとかいう奴を連れてきた。

「誰だ、こいつは」

「先日の生贄の儀式で誕生した新たな魔族です。
 元人間ですので、頭もそれなりに切れますし、力も強いかと。
 まずはお試しでいいので、お使いいただけると」

ランボとかいう奴の方に視線を向けて睨んでみた。
ランボは気が強いのか、睨みかえしてくる。

「その気の強さ、気に入った。
 東方面の方はランボに任せる。
 アスビモもサポート出来るか?」

「私がサポートをするなんておこがましいです。
 何かあれば馳せ参じますが、まずはランボに任せていただければ」

ランボも勢いよく

「今回は従って東を蹂躙しつくしてやる。
 そして、いつかお前もな。
 機会があったら首を狙うぞ。
 儂が魔王になるんだからな」

そう吐き捨てる。
これぐらい気が強い方がいい。
従順でなくても強ければそれでいい。

「いいぞ、余を倒せるものなら倒してみろ」

そうランボに向かって啖呵を切る。
まずはランボの実力とやらを見てみよう。

「では、これで本当に私の用件は終わりになります。
 また御贔屓にお願いします、ゼド様」

そう言うとアスビモはランボとともに出ていった。
本当に相変わらず喰えない奴だ。

「おい、お前ら。
 あと、封印した残りの四天王たちの装備も探させろ。
 これ以上、復活はさせん。
 大至急だ!」

「はっ」

余は近衛兵に封印した装備を探すように指示をした。
ソフィアとマリーの復活は想定外だが、今の余であれば問題ないだろう。
ただ全員復活は厄介になる。
なんとかして阻止しないといけない。
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