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第60話 母さんが倒れた ~フォルトナサイド~
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母さんが倒れたらしい。
何があったんだろう……
「ねぇ、カルムさん、母さんが倒れたってどういうこと?」
伏目がちなカルムさんに母さんの容態を確認してみたけど……
「私も先ほど初めて聞いたので、なんとも……」
普段あんまり物事に動じないカルムさんが動揺している。
カルムさんにとって母さんは絶対だしねー。
かなり心配なのだろうなー。
「そうなんだー
うーん……
母さんも心配だけど……」
ちらっとアグリの方を見てみる。
アグリはボクの目配せに気づいてくれた。
「俺たちの方は心配しなくてもいいよ。
アウラさんのところに帰ってあげなよ」
アグリ、そうじゃないって。
引き留めてくれれば、ここにいる理由が出来るのに……
そう思う反面、母さんの容態も気になるし……
葛藤してどうしていいかわからなくなるよー
「そういえば、カルムさん。
ボクが帰らないといけないほど母さんは危ないの?」
帰ってきてほしいってよっぽどなのかなー。
「倒れられた経緯は聞いていないですが、命に別状はないとのことでした」
「それはよかったー。
でも、それならなんでボクが戻らないといけないのかなー」
命の危険はないなら、なんでボクを呼び戻そうとしているのだろうか……
そこがなんか腑に落ちないんだよなー
「それでもしばらくは動きが取れないとのことで……
村長の代理を、フォルトナお嬢様にしてほしいらしいです」
「えーっ、ボクが村長代理?
無理無理無理無理むーりー!!」
ボクなんかが代理しなくても、他にもっと出来る人いるでしょ!
なんでボクなのよー
「フォルトナお嬢様のお家は、代々シルフィーネ村を束ねてきているのです。
他の方ですと、人々が納得しないかと……」
確かにそうだけどさー
それでも、ボクが代理なんてまだ早すぎるよ。
「うーん……」
母さんは心配だけど、村長の代理はなー……
考え込んでいるとアグリがボクに諭すように話をしてきた。
「フォルトナ、村長の代理うんぬんは置いて、アウラさんの様子を見に帰ったら?
命に別状はないとは言え、動けないほどなら大変だと思うよ」
それはボクもわかっているよー
わかっていても、なかなかと踏ん切りがつかないこともあるんだって。
「うーん……どうしたらいいかなー」
こんな時にゾルダが割って入ってきて、いろいろと煽ってくれると幾分気も紛れるのにさー
さっきから姿を消したまま、一向に出てくる様子はないんだよなー。
こういう時にかぎってさ。
「フォルトナお嬢様。
早急にご決断を」
カルムさんは母さんの様子が心配で早く戻りたいんだろうなー
いつもならボクの事を見守ってくれているのに、今日はかなり焦っている。
「ねぇ、なんか言ってよ、マリー。
ここまで一緒に旅をしてきた仲でしょー」
なかなかボクの気持ちが固まらないこともあって、思わずマリーに話を振ってみた。
でもマリーは
「マリーには関係ないことですわ。
あなたの好きなようにやればいいのでは?
マリーはもう疲れたから早く寝たいのです」
と我関せずという感じ。
当たり前と言えば当たり前なんだけどねー
話を振る方が間違ってたー
「もーどうしよー。
どうしたらいいかわかんないー」
頭を両手で掻きむしる。
髪の毛がぐしゃぐしゃになる。
そんなボクの姿を見て、カルムさんが少しだけ笑みを浮かべた。
「カルムさんっ。何笑っているの!」
「いや……なんでもございません……」
そういいつつもカルムさんの微笑みは止まっていなかった。
「なんかあるでしょ!」
「…………
いや、アウラ様と同じだなと……」
「えっ?
母さんと同じって……」
「はい……
アウラ様も先代が亡くなった時に、冒険者を辞めなくてはいけなくなりました。
それで、今のフォルトナお嬢様と同じように悩まれていました」
どうやら母さんも同じように悩んでいたらしい。
「母さんもそうだったの?」
「そうです……
同じように『村長なんて無理』とおっしゃっていたかと……
そして同じように頭を掻いて、髪の毛をぐしゃぐしゃにしていました」
カルムさんは母さんと同じ態度、同じ様子で思わず笑ってしまったらしい。
「母さんも村長になるの、嫌だったの?
そんな風に見えないけど……」
「それはもうかなりの嫌がり方でした」
あの母さんがね……
少し抜けているところがあるとは思うけど、立派な村長としてみんなに慕われている。
そんな姿しか見てないからなー。
「最初は仕事もなかなか上手くいかないことも多かったですし……
それでもアウラ様はめげずに挑戦していました。
ですので、フォルトナお嬢様も、今出来ることをやっていただければいいかと思います」
カルムさんは当時の母さんの様子も教えてくれた。
背伸びをしなくてもいいなら、いいのかなー
そう思うと、少し心が軽くなった気がした。
「わかったよー
母さんが心配だしー
シルフィーネ村に戻って、代理をやるよー」
なんだか乗せられた感じもするけど、それより母さんの様子が気がかりだしねー
アグリたちに付いていけないのは残念だけどねー
と思って、アグリの方を見てみると……
ボクたちの方を見て『よかったよかった』みたいな感じでうなずいている。
「アグリー!
何その父親みたいな顔してー」
「えっ? 何で怒っているの?
だってアウラさん心配でしょ?
そんな代理がどうとかは関係なく帰るべきだって思っていたし。
そうなって良かったよ」
「それが気に食わないんだよー
ボクは子供じゃないんだから―」
まぁ、でもそれがボクの運命なのかもしれない。
ボクの冒険はここまでだったってことかなー
この先のゾルダやアグリたちを見ていたかったけどねー
それは遠くから応援させてもらおう。
みんなで宿屋に戻った後、ボクはシルフィーネ村に戻るために帰り支度を始めた。
ゾルダはようやく姿を現したけど、憎まれ口の一つも言ってくれなかった。
「仕方ないのぅ。
残念じゃ。
小娘に『しっかり治せ』と伝えておけ」
なんかお行儀いいというからしくないというか……
もっとこう煽って言い合って別れたかったなー
ちょっと寂しい感じもする。
支度が整うとアグリたちと別れ、カルムさんとシルフィーネ村に向かった。
「母さん、大丈夫かなー」
ボソッとつぶやくとと、カルムさんが
「大丈夫です。
アウラ様は強いので……」
と返してくれた。
それはカルムさん自身にも言い聞かせるような口ぶりだった。
さて、いったい母さんは何をして倒れたんだろうか……
何があったんだろう……
「ねぇ、カルムさん、母さんが倒れたってどういうこと?」
伏目がちなカルムさんに母さんの容態を確認してみたけど……
「私も先ほど初めて聞いたので、なんとも……」
普段あんまり物事に動じないカルムさんが動揺している。
カルムさんにとって母さんは絶対だしねー。
かなり心配なのだろうなー。
「そうなんだー
うーん……
母さんも心配だけど……」
ちらっとアグリの方を見てみる。
アグリはボクの目配せに気づいてくれた。
「俺たちの方は心配しなくてもいいよ。
アウラさんのところに帰ってあげなよ」
アグリ、そうじゃないって。
引き留めてくれれば、ここにいる理由が出来るのに……
そう思う反面、母さんの容態も気になるし……
葛藤してどうしていいかわからなくなるよー
「そういえば、カルムさん。
ボクが帰らないといけないほど母さんは危ないの?」
帰ってきてほしいってよっぽどなのかなー。
「倒れられた経緯は聞いていないですが、命に別状はないとのことでした」
「それはよかったー。
でも、それならなんでボクが戻らないといけないのかなー」
命の危険はないなら、なんでボクを呼び戻そうとしているのだろうか……
そこがなんか腑に落ちないんだよなー
「それでもしばらくは動きが取れないとのことで……
村長の代理を、フォルトナお嬢様にしてほしいらしいです」
「えーっ、ボクが村長代理?
無理無理無理無理むーりー!!」
ボクなんかが代理しなくても、他にもっと出来る人いるでしょ!
なんでボクなのよー
「フォルトナお嬢様のお家は、代々シルフィーネ村を束ねてきているのです。
他の方ですと、人々が納得しないかと……」
確かにそうだけどさー
それでも、ボクが代理なんてまだ早すぎるよ。
「うーん……」
母さんは心配だけど、村長の代理はなー……
考え込んでいるとアグリがボクに諭すように話をしてきた。
「フォルトナ、村長の代理うんぬんは置いて、アウラさんの様子を見に帰ったら?
命に別状はないとは言え、動けないほどなら大変だと思うよ」
それはボクもわかっているよー
わかっていても、なかなかと踏ん切りがつかないこともあるんだって。
「うーん……どうしたらいいかなー」
こんな時にゾルダが割って入ってきて、いろいろと煽ってくれると幾分気も紛れるのにさー
さっきから姿を消したまま、一向に出てくる様子はないんだよなー。
こういう時にかぎってさ。
「フォルトナお嬢様。
早急にご決断を」
カルムさんは母さんの様子が心配で早く戻りたいんだろうなー
いつもならボクの事を見守ってくれているのに、今日はかなり焦っている。
「ねぇ、なんか言ってよ、マリー。
ここまで一緒に旅をしてきた仲でしょー」
なかなかボクの気持ちが固まらないこともあって、思わずマリーに話を振ってみた。
でもマリーは
「マリーには関係ないことですわ。
あなたの好きなようにやればいいのでは?
マリーはもう疲れたから早く寝たいのです」
と我関せずという感じ。
当たり前と言えば当たり前なんだけどねー
話を振る方が間違ってたー
「もーどうしよー。
どうしたらいいかわかんないー」
頭を両手で掻きむしる。
髪の毛がぐしゃぐしゃになる。
そんなボクの姿を見て、カルムさんが少しだけ笑みを浮かべた。
「カルムさんっ。何笑っているの!」
「いや……なんでもございません……」
そういいつつもカルムさんの微笑みは止まっていなかった。
「なんかあるでしょ!」
「…………
いや、アウラ様と同じだなと……」
「えっ?
母さんと同じって……」
「はい……
アウラ様も先代が亡くなった時に、冒険者を辞めなくてはいけなくなりました。
それで、今のフォルトナお嬢様と同じように悩まれていました」
どうやら母さんも同じように悩んでいたらしい。
「母さんもそうだったの?」
「そうです……
同じように『村長なんて無理』とおっしゃっていたかと……
そして同じように頭を掻いて、髪の毛をぐしゃぐしゃにしていました」
カルムさんは母さんと同じ態度、同じ様子で思わず笑ってしまったらしい。
「母さんも村長になるの、嫌だったの?
そんな風に見えないけど……」
「それはもうかなりの嫌がり方でした」
あの母さんがね……
少し抜けているところがあるとは思うけど、立派な村長としてみんなに慕われている。
そんな姿しか見てないからなー。
「最初は仕事もなかなか上手くいかないことも多かったですし……
それでもアウラ様はめげずに挑戦していました。
ですので、フォルトナお嬢様も、今出来ることをやっていただければいいかと思います」
カルムさんは当時の母さんの様子も教えてくれた。
背伸びをしなくてもいいなら、いいのかなー
そう思うと、少し心が軽くなった気がした。
「わかったよー
母さんが心配だしー
シルフィーネ村に戻って、代理をやるよー」
なんだか乗せられた感じもするけど、それより母さんの様子が気がかりだしねー
アグリたちに付いていけないのは残念だけどねー
と思って、アグリの方を見てみると……
ボクたちの方を見て『よかったよかった』みたいな感じでうなずいている。
「アグリー!
何その父親みたいな顔してー」
「えっ? 何で怒っているの?
だってアウラさん心配でしょ?
そんな代理がどうとかは関係なく帰るべきだって思っていたし。
そうなって良かったよ」
「それが気に食わないんだよー
ボクは子供じゃないんだから―」
まぁ、でもそれがボクの運命なのかもしれない。
ボクの冒険はここまでだったってことかなー
この先のゾルダやアグリたちを見ていたかったけどねー
それは遠くから応援させてもらおう。
みんなで宿屋に戻った後、ボクはシルフィーネ村に戻るために帰り支度を始めた。
ゾルダはようやく姿を現したけど、憎まれ口の一つも言ってくれなかった。
「仕方ないのぅ。
残念じゃ。
小娘に『しっかり治せ』と伝えておけ」
なんかお行儀いいというからしくないというか……
もっとこう煽って言い合って別れたかったなー
ちょっと寂しい感じもする。
支度が整うとアグリたちと別れ、カルムさんとシルフィーネ村に向かった。
「母さん、大丈夫かなー」
ボソッとつぶやくとと、カルムさんが
「大丈夫です。
アウラ様は強いので……」
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