上 下
45 / 84

第44話 イハルへ帰還 ~フォルトナサイド~

しおりを挟む
ゾルダの正体の話もそうだけど、もう一人出てきたのはビックリしたなー
ただゾルダにベタベタしているマリーを見ていると、まずは出てこれて良かったなーと思う。
これで一通りは終わったかなー

前と同じでまた捕まってしまったのは良くなかったけど、結果オーライってことでー
アグリも

「まぁ、無事だったんだし、よかったんじゃないか。
 一番の目的の人質救出は出来たんだし」

と言ってくれたので、万事解決ーってことでいいかな。
確かその後アグリもいろいろと話してたけど……

「でも、前回もそうだけど、調子に乗って深追いはしないでくれ。
 たまたま無事で、うまくいったからいいものの……」

ちょっとブツブツブツブツうるさいんだよねー。
うまくいったからいいじゃん。
ただ心でそう思っても、アグリには悟られないように、反省の顔はしておこうーっと。

一通りの小言が終わったアグリは、ため息をつきながら話し始めた。

「気が重いけど、砦での状況も報告しないといけないし、
 人質だったリリアさんたちも心配だし、イハルへ戻ろうか」

人質はたぶん無事に戻れているはずだよね。
何せ母さんの部下たちが動いているはずだから。
今頃、捕まっていた領主さんたちも、解放されているはず。

「砦の事はおいといて、人質はボクの母さんたちの部下もいるし、
 無事街までたどり着いているんじゃないかなー」

その話をすると、アグリはあぁ、あの時のという感じで思い出したような顔をした。

「フォルトナは知っていたの?
 ここに突入する前に、背後で『ご心配なく』というので任せてきたけど……」

「母さんならそうするかなーと思っただけ。
 実際に会ってないし、来ていたのも見てないけど」

ちょっと得意気な顔になったボク。
さすが母さんだ。

「ワシもひと暴れしたし、ゆっくり休みたいのぅ」

ゾルダはけだるそうに伸びをしていた。
マリーはというと、そんなゾルダを見て心配そうな顔をしていた。

「ねえさま、さぞお疲れでしょう。
 マリーがマッサージしてさしあげますわ」

そうベタベタしてうっとうしく感じないのかなー、ゾルダは。
ボクが気にしてもしかたないか。

そしてアグリとボクとで一通り砦の状況を確認して、イハルの街へ戻っていった。
街に戻ると、ボクたちは領主さんの家へ向かった。

領主さんの家の庭先では泣いて抱き合う男性と女性と子供の姿が見えた。
それを少し離れたとこで嬉しそうに眺める男の人の姿もあった。
どうやら、無事に戻れて、領主さんも解放されたみたいだねー

嬉しそうに眺めていた男の人はボクたち気づいたらしく、声をかけてきた。

「あなたたちが勇者か?」

アグリとボクはその声の主である男の人に近づいていった。
ゾルダとマリーはすこし離れたところで留まっていた。
たぶん、興味がないんだろなー

「国王様からの命でこの街に来ましたアグリと申します」

アグリは丁寧に受け答えをする。
ボクも慌てて会釈をした。

「オレはこの街の領主、デシエルトだ
 この度は私も含めて助け出してくれて礼をいう。
 ありがとう」

泣いて抱き合っていた男性と女性と子供もこちらに気づいたらしく近づいてきた。

「先日は無礼仕りました。
 改めて、自分はエーデと申します。
 妻と子を救っていただきありがとうございます」

隣にいる女性はボクの事を気にかけていたらしく、嬉しそうな顔でボクに話しかけてきた。

「無事に戻ってこられたようで、良かったです。
 助けていただいたのに何かあったらと思っておりました」

涙ぐみながらそうボクに言ってくれた。
確かに捕まって危ない目に多少はあったけど……
人から感謝されるのってなんかこう嬉しくなるなー。
ボクもつられて涙が出てきてしまった。

アグリは改めてデシエルトさんに対して砦での話をしはじめた。
砦の惨状についても、申し訳なさそうに伝えていった。

デシエルトさんはうなづきながら話を聞いてくれた。
特に何か怒ることもなく。
解放されたのがよほど嬉しいのか、満面の笑みで報告を聞いている。

「……というのが砦であったことです。
 それに、砦が半分ほど消失してしまっており、本当に申し訳ございません」

アグリは平身低頭に謝っていた。
そういうところが真面目なのだろーけど、そこまでしなくてもとは思った。

「こうして危機を乗り越えられたのが一番だ。
 砦はどうにでもなるから気にするな」

デシエルトさんはそう答えて、ガハガハ笑っていた。
エーデさんもリリアさんもみんな笑顔になっていた。

こうしてイハルでの一件は無事解決できた。
よかったー、よかったー

一通りの話を終えたボクたちは、宿に戻ることになった。
帰り際にデシエルトさんから、明日もう一度来てほしいとの話があった。
魔王軍の状況や今後お願いしたいことの話があるらしい。

そして少し離れたところにいたゾルダとマリーに合流し、宿屋に向かっていった。
眠そうな顔をしているゾルダは

「これで上手い酒が飲めるのぅ」

と上機嫌だ。
腕にしがみついていたマリーも

「マリーもご一緒させてください」

と嬉しそうに話していた。
確かにひと段落ついたし、羽目を外しても問題ないよねー

「じゃー、ボクもー」

とノリノリで答えてみた。
その様子を見ていたアグリは慌てた様子で止めに入る。

「頼むから、先日のようなことがないようにしてくれ。
 飲むなとは言わないけど、ほどほどにしてくれよ」

そういうところは相変わらず真面目だなー、アグリは。
飲むときは飲んで羽目を外すのもいいと思うんだけどなー
まぁ、ただボクもこの間は羽目を外し過ぎたので、気をつけないとね。
はずかしかったしなー
ゾルダに付き合い過ぎないようにしようー
そう思いながら、宿屋に向かっていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...