モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている

光命

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第21話 山のヌシ ~アグリサイド~

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「さぁ、そろそろ先を急ごうか」

ゾルダの二日酔い(本人は否定しているけど)がひどいのもあって、休憩をしていた。
少し休憩したこともあって、ゾルダもだいぶ回復してきたみたいだけど……

「ふぅわ~~」
「よう、寝たわ」

「起きたようだね、ゾルダ」

「少し寝たら、頭が痛いのも落ち着いてきたぞ」
「これなら、洞窟に着くころには、全開になっているから安心しろ」

「よかった」
「期待しているよ」

寝ていたゾルダが起きてきたようだ。

「あーあ、こんなところで休憩しなければもっと早く着いたのに」

フォルトナ、そんな刺激することを言わなくても……

「小娘の娘!」
「お前、ワシに文句があるのか?」

「文句はないよ」
「事実を言ったまでだよー」

事実でも刺激はするだろう。

「まぁまぁ」
「ゾルダもフォルトナも今はそんなこと言い合わなくても」
「休憩して遅れたのも確かだけど、ゾルダが回復すればさらに早く進むことが出来るから」
「たぶん、これでいってこいだ」

「そういうものかなー」

「さすがわかっておるな、おぬし」

急がば回れだし、この休憩が吉と出ると言い聞かせよう。
これでしっかりと休んだし、先に進んでいけるだろう。

それからゾルダの調子も良くなったこともあり、順調に進めることが出来た。
ただ北の洞窟に向かう道はそれなりに険しく、時間のかかるものだった。
それでも、確実に洞窟へ向けて進んでいけた。

しばらく進んでいくとさらに険しい山道へと差し掛かった。
この山の中腹に北の洞窟があるらしい。

「あともう少しかなー」

「いつもこんな道を登っていったのか、フォルトナ」

「そうだねー」
「でもいつもは風魔法で移動しているから、そこまでではないよ」

「えっ、そうなの?」
「俺、まだ移動魔法は覚えてないからな」

レベルもそれなりに上がったけど、なんか移動が楽になりそうなものは一向に覚えない。
ゾルダ曰く、それぞれの特性があるらしく、俺にはそういう系統の魔法は高いレベルに設定されているのではないかとのこと。
でも、やっぱり楽はしたいなとは思う。

「俺も早く移動魔法を覚えたいよ」
「この山道を登っていくのはきついよ」

「ボクも付き合っているんだから、そう言わないで」

「そうじゃ、そうじゃ」
「ワシも付き合っているんだからのぅ」

いや、ゾルダは浮いているだろう。
楽しやがって。

「おつきの人は飛んでいるじゃん」

「ワシをおつきの人と呼ぶのではないっ」

「またその話か……」
「もう止めようよ」
「ところで、フォルトナ」
「この辺りで注意しないといけないところはある?」

「うーん」
「この山にはヌシがいるという噂なんだけど」

「ヌシ?」

またヌシとはまた物騒なものがいるもんだ。

「まぁ、でも滅多に出てこないらしいから、大丈夫じゃないかな」
「ボクもほとんど見たことないよ」

「そうなんだ」

洞窟の中にいる魔物に刺激されて出てこなければいいが……

「なんじゃ、ヌシがおるのか」
「出てきても、ワシが仕留めてあげるぞ」

「出ないにこしたことないよ」

「そうそう」
「でも、こんな話をしていると、出てきそうだけどねー」

「フォルトナ、また不吉なことを言わないでくれ」

「もっと言え、もっと言え、小娘の娘」
「ワシは戦ってみたいからのぅ」

ゾルダはどうしても戦いたいみたいだな。
それはそれで頼りになる反面、この戦闘オタクなところはちょっとどうしたものかと……
そう思っていたところに、ものすごい地響きがしてきた。

ズーン、ズドーン、ズン……

だんだん音が近づいてきた。
嫌な予感がする。

「ブモ、ブモ、ブギッ」

大きなイノシシが姿を現した。

「いっ、イノシシ!?」

「なんだー」
「ボク、聞いてないよー」

「ほぅ、あれは……」
「トロイトじゃな」

「トロイト!?」

思わずフォルトナと一緒にハモってしまった。
紫色した剛毛に鋭い牙。
禍々しい姿をしているイノシシだった。

「たしか、なんとかがなんとかとなってイノシシに姿を変えられた魔獣だったかのぅ」

「いや、それ説明になっていないし」

「別にどんな奴だってかまわんじゃろ」
「どうせワシの手で倒されるんだから」

「ブルルー、ブルルルルルー」

トロイトはだいぶ興奮しているようだ。
こちらの方を睨みつけてくると、すぐに一直線に走ってきた。

「危ない!」
「逃げろ」

二人に声をかけて、俺も避ける。
間一髪で突進を避けることができた。

「ブロロロロー、ブモ」

避けたことで、さらに興奮をさせてしまったようだ。
たぶんこうなると、俺たちの話など聞く耳は持たなくなるだろう。

「もう、戦うしかなさそうだな」

「えーっ、ボクも?」

「援護頼むよ、フォルトナ」

「うーん、仕方ないなぁ」
「ウインドカッター」

フォルトナの手から刃のような風が飛び出して、トロイトに向かっていく。
顔や体に当たったようだが、かすり傷の一つもついていない。

「全然効かないよー」

「注意を引き付けてくれ」
「その間に俺が切り込む」

「わかったよ」
「ウインドカッター、ウインドカッター、ウインドカッター」

複数の風の刃がトロイトの目に飛んでいく。
狙い通り当たると、多少怯んでくれた。

「ここだ」
「アトリビュート、フレイム」
「どりゃー」

炎をまとった刃を持ち、思いっきりよく突っ込む。
そして前足の足元に切りかかる。
が……全然効いていない。

その前足を勢いよく振り上げて、俺を目掛けて降ろしてきた。
なんとか逃げて間合いをとる。

「ダメだ」
「全く効いてない」

俺たちだけではちょっと厳しい相手のようだ。
ゾルダは何をしているんだ。
ふと周りを見ると、不敵な笑みをして、俺たちの戦いを見ている。

「相変わらずじゃのぅ」
「もっと腰を入れんと、斬れるものも斬れんぞ」

そんなことはわかっている。
でも、怖いものは怖い。

「これはどうだ」
「アトリビュート、サンダー&スピントルネード」

雷をまとって回転しながらトロイトに向かっていく。
しかし、体にぶつかって跳ね返される。
多少の傷はついたみたいだけど、たいしたダメージにはなっていないようだ。

「ブモ、ブモ、ブモー」

雄たけびを上げるトロイト。
再び俺のところに突っ込んできた。
体勢を崩していて、これは避けられないと思った瞬間、体が宙に浮き、ギリギリのところで回避が出来た。
どうやらゾルダが助けてくれたようだ。

「なぁ、ゾルダ」
「高みの見物してないで、手伝ってよ」

「おっと、すまんかったのぅ」
「でも、味方が苦戦しているところに颯爽と出てくるのが、本物の振る舞いじゃ」

たしかにそれはそうだけど、それがあてはまるのはヒーローだ。
ゾルダは元だけど魔王だろう。
そんな演出している場合じゃないと思うが……

「戦いたがっていただから、俺たちに戦わせるより、先に戦えよ」

「それもそうじゃのぅ」

そういうと、ゾルダは俺を安全なところに降ろした。
そしてトロイトの前に立ちふさがった。

「さぁ、遊びは終いじゃ」
「とっとと終わらせるぞ」
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