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第15話 北東部の丘へ ~アグリサイド~
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シルフィーネ村の長のアウラさんに北西部の状況を報告した翌日。
アウラさんが教えてくれた北東部の丘にある社を探しに向かった。
ゾルダは相変わらず剣の外には出てこない。
出てこないだけならいいけど、さっきから何かしら考え込んでいるようだ。
「うーん……
どうじゃったかのぅ。
なんかこういうことが前にもあったような気がするのぅ……」
それにしても大きい独り言だ。
「ゾルダ、何を考えているのか知らないけど……
頭の中に声を響かせるのはやめてくれないか」
ガンガンと脳の中をこだまするような感覚で声が聞こえるのでたまったものではない。
「ん?
おぬしにも聞こえておったか。
そんなつもりではなかったのじゃが……」
最近は剣の中にいても、ゾルダの声がはっきりと聞こえるようになってきた。
レベルがあがってきたことと何か関係があるのかな。
勇者としてのスキルはまだいまいちわからないが、魔王とリンクしやすくなってきたのは勇者のスキルなのかな……
そんなことはないか。
「さっきから何を考えているんだ」
それだけ悩まれるとこちらも気になってしまう。
「いや……
ウォーウルフにグリズリーだがのぅ……
どこかで一緒にいるのという話があった奴らじゃったと思うのじゃが、思い出せんのじゃ」
以前に何かあったのかな……
「それはゾルダが魔王をしていた頃の話か?」
何の事か、ゾルダに確認をする。
「そうじゃ!
だしかゼドだったか、シータだったか……
話を聞いた覚えなのじゃが……」
魔王時代の話なのかもしれない。
「ゼドは確か現在の魔王だったけ?」
以前聞いたゼドの名前が出てきたので、ゾルダに聞き返す。
「そうじゃ。
あやつはワシの直属の部下4人に次ぐ奴じゃったが……
考えておったら、あやつの顔を思い出してきた。
ワシをこんなことにしおって。
ムカつく」
ここでムカつかれても困るんだけどな。
本題はウォーウルフとグリズリーの組み合わせのことなんだけどな。
「ふぅっ……
話がずれてきてるって。
今、考えていたのは魔物たちの話じゃなかったけ?」
話を元に戻すために切り返す。
「そうじゃった、そうじゃった」
思い出したかのように声をあげるゾルダ。
「そう言えば、シータっていうのは誰?
初めて聞く名前だけど」
「おおぅ、シータはのぅ……
ワシの直属の部下の1人で、その中では一番弱かった奴じゃ」
いわゆる四天王の中で最も最弱か……
ゲームにも出てきそうな一番最初にやられるキャラじゃん。
「シータがウォーウルフとグリズリーのことで話をしてきた?」
「ゼドかどっちかじゃったとは思うがのぅ……
他にもいくつかの魔物のことを話しておったような気がするのじゃ。
あとそれらを纏める魔物もおったはずじゃがのぅ」
ゾルダはしっかりと覚えていない様子だ。
いろいろな話が混ぜこぜになっているのだろう。
「その話が今回のことと一緒なら、これから行く北東部の丘に、
思い出せない魔物がいるんじゃないか?
そして、纏めている魔物が、洞窟の中ってところだろ」
「たしかに、そうなのじゃがのぅ……」
何をそんなに真剣に考えているのか。
事前に対策を立てようとしているのだろうか。
ゾルダが考え込むようなほど強いのだろうか。
「そんなに気にすることか?
こっちにいそうな魔物はそんなに強いの?」
もし強いなら思い出してもらえた方が助かる。
「いいや。
ワシに比べればまったくもって弱い」
って弱いんかい。
でもゾルダに比べてだからなぁ……
「じゃ、なんでそんなに考えているんだ?」
「なんかのぅ。
こうなんか思い出せんということが、頭の中でもやもやしてのぅ。
ちょっとイラッとくるのじゃ!
スッキリしたいのじゃ!」
そんな理由か……
まぁ、出てきそうで出てこないもどかしさはわかるけど。
「まぁ、とりあえず行けばわかるんじゃない。
思い出せないんだし、考え過ぎてもよくないんじゃないかな。
そんなのゾルダらしくないよ」
「………………
そうか、ワシらしくないか、そうじゃな」
ゾルダの声が少し明るくなったように感じたが……
「…………
って、ワシだって頭使っておるぞ!
バカにしおって」
乗りツッコミかい。
と思わず苦笑いをする。
俺はそういうつもりで言ったんじゃないけどな。
考えるより行動するのがゾルダだと思ったからだ。
「ごめんごめん。
ゾルダもしっかり頭使っているよ」
「その言い方が気に食わん。
フンっ」
ちょっとご機嫌斜めになっちゃったな。
でも、ゾルダは考え込むより行動した方がなんとかなるタイプなんじゃないかなと思う。
あれだけ強いんだから、策はいらんでしょ。
しばらく歩くと北東部の丘の麓にたどり着いた。
丘と表現するにはちょっと違うような所だった。
小高い丘ではあるのだけど、ゴツゴツした岩が樹木のように方々に立ち並んでいる。
小さいころ見に行った火山の溶岩が固まって出来た観光名所にも似ている。
「丘って言っていたから草原のようなところだと思っていたけど……
これだと社を見つけるのは大変そうだ」
「おぬし、その前にじゃ。
魔物もうじゃうじゃいるぞ。
そっちを気をつけるんじゃ」
「わかっている」
慎重になって岩場の陰から魔物がいないかの様子を伺う。
…………
んっ?
「なんか大きい蛇みたいなのがいる!?」
「おっ、あいつか。
あいつは確かサーペントだったかのぅ。
グリズリーと大差ないから、おぬしだけで十分じゃろ」
「えっ? ゾルダの『大差ない』って俺からすると大差ある時があるんだからさ」
「まぁ、その時は何とかするから、安心するがいい。
ただ、噛まれるでないぞ。
毒を持っているからのぅ」
しかし簡単に言うよ。
人の苦労も知らずにさ。
ただ、これだけの岩場があるんだし、正面切って行くよりかは、見つからずに背後から攻めよう。
近くにサーペントを見つけると、まずは背後から斬りかかる。
「やーーーっ」
一発では倒せないが、深手を追わせることが出来た。
あとは岩場を使って神出鬼没にヒット&アウェイで攻撃する。
今までの経験も活かせたのか、今まで初手は苦戦していたが、すんなり倒せた。
「なんか今までよりか楽に倒せたような」
なんだか強くなった気がして嬉しくなる。
「おぬしがそれだけ経験も積んで強くなった証拠じゃろ。
ただ、油断するなよ。
サーペントは結構おるからのぅ。
ウォーウルフやグリズリーの比ではないぞ」
「えーーーっ。
そんなに多いの?」
まだこんなのがいっぱいいるのかと思うと気が滅入る。
「これもおぬしの経験じゃ。
片っ端から倒しておけ」
社を探しながらサーペントを倒し続けているが、なんか次から次へと湧いてくる。
しかも同じような岩場ばかりで進んでいる気がしない。
いったいいつになったら社を見つけられるのか……
先が思いやられるなぁ……
アウラさんが教えてくれた北東部の丘にある社を探しに向かった。
ゾルダは相変わらず剣の外には出てこない。
出てこないだけならいいけど、さっきから何かしら考え込んでいるようだ。
「うーん……
どうじゃったかのぅ。
なんかこういうことが前にもあったような気がするのぅ……」
それにしても大きい独り言だ。
「ゾルダ、何を考えているのか知らないけど……
頭の中に声を響かせるのはやめてくれないか」
ガンガンと脳の中をこだまするような感覚で声が聞こえるのでたまったものではない。
「ん?
おぬしにも聞こえておったか。
そんなつもりではなかったのじゃが……」
最近は剣の中にいても、ゾルダの声がはっきりと聞こえるようになってきた。
レベルがあがってきたことと何か関係があるのかな。
勇者としてのスキルはまだいまいちわからないが、魔王とリンクしやすくなってきたのは勇者のスキルなのかな……
そんなことはないか。
「さっきから何を考えているんだ」
それだけ悩まれるとこちらも気になってしまう。
「いや……
ウォーウルフにグリズリーだがのぅ……
どこかで一緒にいるのという話があった奴らじゃったと思うのじゃが、思い出せんのじゃ」
以前に何かあったのかな……
「それはゾルダが魔王をしていた頃の話か?」
何の事か、ゾルダに確認をする。
「そうじゃ!
だしかゼドだったか、シータだったか……
話を聞いた覚えなのじゃが……」
魔王時代の話なのかもしれない。
「ゼドは確か現在の魔王だったけ?」
以前聞いたゼドの名前が出てきたので、ゾルダに聞き返す。
「そうじゃ。
あやつはワシの直属の部下4人に次ぐ奴じゃったが……
考えておったら、あやつの顔を思い出してきた。
ワシをこんなことにしおって。
ムカつく」
ここでムカつかれても困るんだけどな。
本題はウォーウルフとグリズリーの組み合わせのことなんだけどな。
「ふぅっ……
話がずれてきてるって。
今、考えていたのは魔物たちの話じゃなかったけ?」
話を元に戻すために切り返す。
「そうじゃった、そうじゃった」
思い出したかのように声をあげるゾルダ。
「そう言えば、シータっていうのは誰?
初めて聞く名前だけど」
「おおぅ、シータはのぅ……
ワシの直属の部下の1人で、その中では一番弱かった奴じゃ」
いわゆる四天王の中で最も最弱か……
ゲームにも出てきそうな一番最初にやられるキャラじゃん。
「シータがウォーウルフとグリズリーのことで話をしてきた?」
「ゼドかどっちかじゃったとは思うがのぅ……
他にもいくつかの魔物のことを話しておったような気がするのじゃ。
あとそれらを纏める魔物もおったはずじゃがのぅ」
ゾルダはしっかりと覚えていない様子だ。
いろいろな話が混ぜこぜになっているのだろう。
「その話が今回のことと一緒なら、これから行く北東部の丘に、
思い出せない魔物がいるんじゃないか?
そして、纏めている魔物が、洞窟の中ってところだろ」
「たしかに、そうなのじゃがのぅ……」
何をそんなに真剣に考えているのか。
事前に対策を立てようとしているのだろうか。
ゾルダが考え込むようなほど強いのだろうか。
「そんなに気にすることか?
こっちにいそうな魔物はそんなに強いの?」
もし強いなら思い出してもらえた方が助かる。
「いいや。
ワシに比べればまったくもって弱い」
って弱いんかい。
でもゾルダに比べてだからなぁ……
「じゃ、なんでそんなに考えているんだ?」
「なんかのぅ。
こうなんか思い出せんということが、頭の中でもやもやしてのぅ。
ちょっとイラッとくるのじゃ!
スッキリしたいのじゃ!」
そんな理由か……
まぁ、出てきそうで出てこないもどかしさはわかるけど。
「まぁ、とりあえず行けばわかるんじゃない。
思い出せないんだし、考え過ぎてもよくないんじゃないかな。
そんなのゾルダらしくないよ」
「………………
そうか、ワシらしくないか、そうじゃな」
ゾルダの声が少し明るくなったように感じたが……
「…………
って、ワシだって頭使っておるぞ!
バカにしおって」
乗りツッコミかい。
と思わず苦笑いをする。
俺はそういうつもりで言ったんじゃないけどな。
考えるより行動するのがゾルダだと思ったからだ。
「ごめんごめん。
ゾルダもしっかり頭使っているよ」
「その言い方が気に食わん。
フンっ」
ちょっとご機嫌斜めになっちゃったな。
でも、ゾルダは考え込むより行動した方がなんとかなるタイプなんじゃないかなと思う。
あれだけ強いんだから、策はいらんでしょ。
しばらく歩くと北東部の丘の麓にたどり着いた。
丘と表現するにはちょっと違うような所だった。
小高い丘ではあるのだけど、ゴツゴツした岩が樹木のように方々に立ち並んでいる。
小さいころ見に行った火山の溶岩が固まって出来た観光名所にも似ている。
「丘って言っていたから草原のようなところだと思っていたけど……
これだと社を見つけるのは大変そうだ」
「おぬし、その前にじゃ。
魔物もうじゃうじゃいるぞ。
そっちを気をつけるんじゃ」
「わかっている」
慎重になって岩場の陰から魔物がいないかの様子を伺う。
…………
んっ?
「なんか大きい蛇みたいなのがいる!?」
「おっ、あいつか。
あいつは確かサーペントだったかのぅ。
グリズリーと大差ないから、おぬしだけで十分じゃろ」
「えっ? ゾルダの『大差ない』って俺からすると大差ある時があるんだからさ」
「まぁ、その時は何とかするから、安心するがいい。
ただ、噛まれるでないぞ。
毒を持っているからのぅ」
しかし簡単に言うよ。
人の苦労も知らずにさ。
ただ、これだけの岩場があるんだし、正面切って行くよりかは、見つからずに背後から攻めよう。
近くにサーペントを見つけると、まずは背後から斬りかかる。
「やーーーっ」
一発では倒せないが、深手を追わせることが出来た。
あとは岩場を使って神出鬼没にヒット&アウェイで攻撃する。
今までの経験も活かせたのか、今まで初手は苦戦していたが、すんなり倒せた。
「なんか今までよりか楽に倒せたような」
なんだか強くなった気がして嬉しくなる。
「おぬしがそれだけ経験も積んで強くなった証拠じゃろ。
ただ、油断するなよ。
サーペントは結構おるからのぅ。
ウォーウルフやグリズリーの比ではないぞ」
「えーーーっ。
そんなに多いの?」
まだこんなのがいっぱいいるのかと思うと気が滅入る。
「これもおぬしの経験じゃ。
片っ端から倒しておけ」
社を探しながらサーペントを倒し続けているが、なんか次から次へと湧いてくる。
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