60 / 60
西方の亜人
第三話
しおりを挟む
話し合い、と言ってもこのメンツ、この状況でしっかりとした話し合いが出来るわけがなかった。
普段は理性的なレオンハルトでさえアルファを前にして不機嫌そう。過去になにかあったんだろうね。それに目の前の勇者様は腕を組んでだんまりを決め込んでいるし。
「それで、そちらはこの大陸を帝国側に引き込みたいんですよね?」
「……あぁそうだ。少しでも仲間は多いに越したことはねぇからな」
「はっ、そんな話に乗ると思うかい?」
鼻でレオンハルトの言葉を笑い飛ばすアルファだけど、こちらに引き込めると言われたら首を捻るしかない。
この手の人は意思が固く、そして靡かない。
話し合いで決めると言ったものの、アルファのスタンスは恐らく中立だ。だから帝国には付かない、されどもこちらにも付かない。敵側に付かないというのはいいことなんだけどね。
「じゃあアピールタイムといこうかな」
帝国にはほぼ交渉の余地はないし、まだ有利だ。なら押すしかないじゃん。
「アルファ、亜人の王を目指したくない?」
「……亜人の王……だって?」
ピクリと眉を上げたアルファが私の方に顔を向けた。その顔は興味半分疑い半分と言った感じだけど、うん、反応は悪くなさそうだね。
さて、亜人の王といったもののそれを実現するには目の前のライオンを倒さないといけないけど、それがまた難しい。よほどのことがなかったら簡単には倒せないだろうねぇ。でも、でも、だ。
「私は亜人を尊敬している。人間にはない強靭な肉体を持つ君たちを。だからこそ、私は君たちと肩を並べたい。勇猛果敢な亜人たちと共に、私は世界を、君は百獣の王に。魔の皇帝と肩を並べられるのは君たち、西方大陸に住む亜人しかいないと、私は思っているよ」
私のアピールタイムは終わりだ。どう受け取るかはアルファ次第。私の言いたいことは言ったからね。
さて、次はレオンハルトの番だ。
「……俺たちは確かに、何度か殺りあったことはある。けどよ、そりゃあ俺たちが本質的な部分が獣だからだ。俺はアルファ、お前を高く買っているんだ。そうじゃなきゃ、わざわざ出向いたりはしねぇよ。過去のことは水に流せとは言わねぇ……だが、頼む。力を貸してくれ」
うーむ、なるほど。そういう感じかぁ、と思いながらちらりとアルファに顔を向けてみると、しかめっ面なのは変わっていないけど、悩んでいる様子だった。これで向こうにつくって言われたら全速力で逃げるしかないよね。
「少し考える時間が必要かと思います。一旦休憩にしましょう」
そこでスーレが悩むアルファに気を利かせたのか、手を打ち鳴らしてそう言った。うんうん、なかなかいい司会だね。
流石に帝国側と一緒に休憩するのは殺し合いかねないから、かなり離れたところでスーレと砂浜にいた。まあ特にすることもないから、海辺で遊ぶスーレのことを眺めることぐらいしかないけどね。
さてさて、どうしたものかな。味方になった時はそれではそれでよし。ただ敵になった時がちょっと、いや、正直かなり面倒くさい。ミアですらやられるぐらいなんだし。
「アイリス様?」
「ああ、ごめんごめん、ボーッとしてたよ」
いつの間にか顔を覗き込んでいたスーレは心配するように私の名前を呼んできた。スーレの頭を撫でながら大丈夫と答えた。
「アイリス様はどうなると思いますか?」
隣にとぐろを巻いて座り込むスーレがそう聞いてきた。なんて答えたものか考えるけど、どう転んでも戦いが起きるとは思うんだよね。
「うーん、どうだろね。敵になろうが味方になろうが、どの道戦いは避けられないだろうし」
まあでも、とりあえずは答えを聞くしかないだろうね。
普段は理性的なレオンハルトでさえアルファを前にして不機嫌そう。過去になにかあったんだろうね。それに目の前の勇者様は腕を組んでだんまりを決め込んでいるし。
「それで、そちらはこの大陸を帝国側に引き込みたいんですよね?」
「……あぁそうだ。少しでも仲間は多いに越したことはねぇからな」
「はっ、そんな話に乗ると思うかい?」
鼻でレオンハルトの言葉を笑い飛ばすアルファだけど、こちらに引き込めると言われたら首を捻るしかない。
この手の人は意思が固く、そして靡かない。
話し合いで決めると言ったものの、アルファのスタンスは恐らく中立だ。だから帝国には付かない、されどもこちらにも付かない。敵側に付かないというのはいいことなんだけどね。
「じゃあアピールタイムといこうかな」
帝国にはほぼ交渉の余地はないし、まだ有利だ。なら押すしかないじゃん。
「アルファ、亜人の王を目指したくない?」
「……亜人の王……だって?」
ピクリと眉を上げたアルファが私の方に顔を向けた。その顔は興味半分疑い半分と言った感じだけど、うん、反応は悪くなさそうだね。
さて、亜人の王といったもののそれを実現するには目の前のライオンを倒さないといけないけど、それがまた難しい。よほどのことがなかったら簡単には倒せないだろうねぇ。でも、でも、だ。
「私は亜人を尊敬している。人間にはない強靭な肉体を持つ君たちを。だからこそ、私は君たちと肩を並べたい。勇猛果敢な亜人たちと共に、私は世界を、君は百獣の王に。魔の皇帝と肩を並べられるのは君たち、西方大陸に住む亜人しかいないと、私は思っているよ」
私のアピールタイムは終わりだ。どう受け取るかはアルファ次第。私の言いたいことは言ったからね。
さて、次はレオンハルトの番だ。
「……俺たちは確かに、何度か殺りあったことはある。けどよ、そりゃあ俺たちが本質的な部分が獣だからだ。俺はアルファ、お前を高く買っているんだ。そうじゃなきゃ、わざわざ出向いたりはしねぇよ。過去のことは水に流せとは言わねぇ……だが、頼む。力を貸してくれ」
うーむ、なるほど。そういう感じかぁ、と思いながらちらりとアルファに顔を向けてみると、しかめっ面なのは変わっていないけど、悩んでいる様子だった。これで向こうにつくって言われたら全速力で逃げるしかないよね。
「少し考える時間が必要かと思います。一旦休憩にしましょう」
そこでスーレが悩むアルファに気を利かせたのか、手を打ち鳴らしてそう言った。うんうん、なかなかいい司会だね。
流石に帝国側と一緒に休憩するのは殺し合いかねないから、かなり離れたところでスーレと砂浜にいた。まあ特にすることもないから、海辺で遊ぶスーレのことを眺めることぐらいしかないけどね。
さてさて、どうしたものかな。味方になった時はそれではそれでよし。ただ敵になった時がちょっと、いや、正直かなり面倒くさい。ミアですらやられるぐらいなんだし。
「アイリス様?」
「ああ、ごめんごめん、ボーッとしてたよ」
いつの間にか顔を覗き込んでいたスーレは心配するように私の名前を呼んできた。スーレの頭を撫でながら大丈夫と答えた。
「アイリス様はどうなると思いますか?」
隣にとぐろを巻いて座り込むスーレがそう聞いてきた。なんて答えたものか考えるけど、どう転んでも戦いが起きるとは思うんだよね。
「うーん、どうだろね。敵になろうが味方になろうが、どの道戦いは避けられないだろうし」
まあでも、とりあえずは答えを聞くしかないだろうね。
0
お気に入りに追加
15
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説


もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる