56 / 60
二日のフラウ
第二話
しおりを挟む
──ハルワイブ王国、バルトロマイの寝室──
「──いてて、歳だな」
翌朝、腰に多少の痛みを覚えてまだ陽の昇らない時間に目を覚ました。隣には一糸まとわぬマリアの姿があり、気持ちの良さそうに眠りについていた。
俺はマリアを起こさぬようベッドから降り服を着た。夜の散歩、と言えばいいのか。少し夜の空気を吸いたかった。
ボロボロになっちまったと言えど、この城は石の模様すら思い出せる。
部屋を出ると壁にかかる燭台のみが廊下を照らす。薄らとした廊下には、ここに来た当初は少し不安を覚えていたが、慣れてくるとこの薄暗さが心地よい。
玉座の間にでも行くか、そう思うと足が自然と動く。あそこにはいい思い出もありゃあ、悪い思い出もある。まぁ、それもこれもひっくるめてここが好きだったんだがな。
玉座の間の前に立つと、微かに開いていた。どうやらこんな時間だというのに先客がいるらしい。誰だ?
そう思いながら扉を開けると、玉座にはアイリスが足を組んで、一人で赤い飲み物を飲んでいた。
アイリスはこちらに気付くと、やぁ、と笑みを浮かべていた。
「こんばんは、バルトロマイさん」
「おうアイリスか、すまねぇな。中々話が出来ねぇで」
俺は玉座の前まで歩いていくと、アイリスはにっこりと笑い、グラスを持つ反対の手にもう一つグラスを作り出した。玉座の横に置いていたワインボトルを持ち上げてそれに注ぐと、俺にグラスを渡してきた。
「サンキュ」
「うん、マリアの体の調子はどう?」
軽く乾杯し、俺はワインを口に含みながらアイリスの心配事を聞いていた。それにしてもこのワイン美味いな。
「ん、まぁ、表面上の調子は良さそうだな。アイリス、お前もだ」
「……はは、やっぱり分かる?」
無駄に笑顔なんざ作っちまって、空元気なのは見ていて分かるさ。何があったのは聞かないが、世界を相手取り戦っているんだ。辛いのは当然だろう。
「私は魔帝になった事に対しての後悔は一切無いんだよねぇ、けどさ、私ってさ、どうにもダメなんだよね。仲間の死を、中々さ、乗り越えられないんだ。指揮官として、失格だよ」
アイリスは微かに俯くと、手に入る力が強くなったのかワイングラスにヒビが入る。
だがそれが戦争だ。それこそが戦争だ。
「……アイリス、俺が慰めるタイプじゃねぇっての分かっていて、そんな事を言うんだろうな?」
コクリと頷いた。なら遠慮はいらねぇな。ため息を吐きながら、俺はグラスに入っているワインをアイリスの顔にぶちまけた。
「ナマ言ってんじゃねぇぞクソガキが。誰が始めた戦争だと思ってやがんだ、えぇ? 事情はどうあれ、てめぇなんだろうがよ、仲間が死んだから悲しい? 何もしたくねぇ? ざけんじゃねぇぞ」
俺は嘘が嫌いだ。誰に対しても言いたいことは口に出す。それが、例え娘のように思っているアイリスだとしてもだ。いや、娘のように思っているからこそ、俺はここまで厳しくなれるのかもしれねぇ。
「俺だって元々はこの国の将軍だ、てめぇの気持ちも分からなくもねぇ、昨日喋っていた奴が次の日には居ねぇんだからな。だけどよ、涙を流すのは一度でいい、一度流して切り替えなきゃいけねぇ、それが司令官だ、それがトップってもんなんだよ。いちいち立ち止まってんじゃねぇぞ!」
アイリスの胸ぐらを掴み、言い聞かすようにして俺は怒号を浴びせ続けた。
目に涙を溜めて、俺の言葉を聞き続けるアイリスはどうしようもなく可哀想だったが、本人が望んだ事だ。
「……バルトロマイさん……でも、マリアまで今回の戦いで死んでいたかと思うと……っ」
「……はぁ、アイリス、先に謝っとく。すまんな」
俺は涙を流し、鼻水すら流すアイリスの頬を思いっきり平手打ちをした。
「グダグダ抜かすんじゃねぇ! それでも進め!! 最後の一兵まで!! てめぇが先頭切って突っ走らなきゃ誰が道を示すんだ!? あぁ!? てめぇはハルワイブ最高の戦士である俺が認めた最高に馬鹿な女だ! だからよぉ……ちょいと気張れや」
胸ぐらから手を離し、アイリスの肩に手を置いて俺は笑顔を作った。
俺の顔を見たアイリスは顔をクシャクシャにしながら、俺の服に顔を埋めてガキのようにギャンギャンと泣き始めた。そしてありがとう、頑張る、と泣きながらそう決意を新たにした。
気付けば、夜は既に開けていた。
今日は忙しかった。アイリスが唐突に今日は宴を開こう、と無茶振りを言い始めたからだ。まぁ、どうやらそれは俺のお見送り会的な要素も含んでいるんだろう。
ハルワイブの兵士だけでも数百人は居るというのに、果たして料理人は耐えきれるか? はっ、ご愁傷さまだな。
「なんだかバタバタしてますね」
「アイリスはいつもこんな感じなのか?」
「はい、困ったものですが……いつも通りのアイリスが戻ってきて、私はとても嬉しいです」
俺とマリアはゆっくり休んでいていいよ、とアイリスから仰せつかった事もあり、寝室のベッドの上で寝転んでいた。
マリアは時折俺にちょっかいをかけてきて、俺にやり返されるとニコニコと可愛らしい笑みを浮かべる。
今日は一日部屋でゴロゴロという気分だ。と言うよりもマリアと違って俺は翌日に響くんだ。主に腰痛と、腕と腹部と太ももに筋肉痛のようなものが起こってすげぇダルい。やはり歳か。
「そういえば、バルトロマイはあの軍医、フェーゲラインの事をご存知でしたのですか?」
「あぁ、俺が若い頃、帝国との戦線ではあいつが出てくるのを皆恐れていた」
「貴方も何度か戦った事があるのですか?」
「幸いな事に無かったんだ。ある時を境にフェーゲラインが一切出てこなくなっちまってな。死んだかと思っていたんだがな」
何があったのかは知らねぇが、運が良かった。あの頃に戦っていれば、俺は為す術もなく負けていたことだろう。それほどに奴は強かった。いや、今でも強いのだろう。だからあれほどに俺は苦戦、否、苦戦じゃねぇ。ほとんど負けていたもんだ。
「……恐らく……彼はその時に娘か何を失ったのでは無いでしょうか?」
「ん? なんでそんなこと知ってんだ?」
そういえばあの時の事を詳しく聞いていなかったな。今は時間もあるし、聞いておくか。
一体、気を失っている時に何があったのか、フェーゲラインがどのような事をしていたのか、それを問い掛けることにした。
マリアが言うには、自分が望んだ世界、だそうだ。その世界でマリアは俺と逃げ出して何処かの農村で暮らしていたらしい。
「…………正直に言うと、あの世界は、私にとっては夢のようでした。貴方と共に過ごせたあの世界……ですが、あそこにはアイリスが居ませんでした……」
あの世界に居た時の感情を吐露するマリアは次第に、声色を落としていった。
「私は……アイリスを犠牲にした世界を「良い」と思ってしまったんです。それが私には、私にとっては屈辱で……アイリスにどんな顔をしたらいいのか、彼女の為に全てを捨てたのに、心の奥底で、それを後悔している自分がいるのです」
「……ふぅん、いいんじゃねぇの? それくらいの後悔を持っててもよ」
「……バルトロマイは後悔、ありますか?」
後悔か、悔いの残らねぇように命を使ってきたはずだ。いつ死んでもいいように「死ぬには良い日」を送ってきた。
ふと考える。俺にとっての後悔とはなんだ? アイリスか? いや、それは違うだろう。なら部下か? それも違うだろう。なら、あぁ、後悔なんてない。
「ねぇな。お前を一人残すってのに、後ろ髪を引かれるなんてこたぁねぇんだ」
「貴方らしい、といえば貴方らしいのでしょうね。なんだか悔やんでいる私が馬鹿らしくなってきたじゃないですか、ですので責任をとってください」
「おいおい……」
マリアが俺の上に転がりながら移動してきて、責任を取れという。元気というか、若いというか。こっちはかなり来てんだぜ。
「……バルトロマイ」
マリアは俺のシャツのボタンを外しながら、顔を近付かせてきた。今にも唇が触れ合いそうになった時、部屋の扉がノックされる音がした。音の方を見ると、やれやれ、と言った顔のオスカルが扉を開けた状態でノックをしていた。
「いつから居たんですかっ!」
マリアはまるで猫のように飛び退きながら、シーツの中へと隠れていった。ナイスタイミングだオスカル。
「今っすよ。というか昨晩マリアさんの声結構響いてたんでそこまで気にする必要は──」
「────っ!! 今すぐ行くのでさっさと行きなさい!!」
顔を真っ赤にしてシーツから飛び起き、手に火の玉を作り出したマリアは、それをオスカルに向けながらそう怒鳴った。オスカル、お前デリカシーねぇな。
逃げるようにオスカルは言われた通り、部屋から走り去っていくのを見たマリアは、リンゴのように耳まで真っ赤にして、俺の服に顔を埋めてきた。
「……まぁ、何となくそんな気はしてたがな」
「それはっ、貴方がっ……!」
「俺が、なんだ?」
「っっなんでもありません!!!! もうしりません!! 早く行きますよ!!」
世にも珍しいマリアが見せたガチの照れ姿に、若干胸の苦しさを覚えた。そっぽを向きながら先にベッドから降りたマリアを追いかけつつ、アイリス達が待つ玉座の間へと、ボタンを閉めながら向かう事にした。
「──いてて、歳だな」
翌朝、腰に多少の痛みを覚えてまだ陽の昇らない時間に目を覚ました。隣には一糸まとわぬマリアの姿があり、気持ちの良さそうに眠りについていた。
俺はマリアを起こさぬようベッドから降り服を着た。夜の散歩、と言えばいいのか。少し夜の空気を吸いたかった。
ボロボロになっちまったと言えど、この城は石の模様すら思い出せる。
部屋を出ると壁にかかる燭台のみが廊下を照らす。薄らとした廊下には、ここに来た当初は少し不安を覚えていたが、慣れてくるとこの薄暗さが心地よい。
玉座の間にでも行くか、そう思うと足が自然と動く。あそこにはいい思い出もありゃあ、悪い思い出もある。まぁ、それもこれもひっくるめてここが好きだったんだがな。
玉座の間の前に立つと、微かに開いていた。どうやらこんな時間だというのに先客がいるらしい。誰だ?
そう思いながら扉を開けると、玉座にはアイリスが足を組んで、一人で赤い飲み物を飲んでいた。
アイリスはこちらに気付くと、やぁ、と笑みを浮かべていた。
「こんばんは、バルトロマイさん」
「おうアイリスか、すまねぇな。中々話が出来ねぇで」
俺は玉座の前まで歩いていくと、アイリスはにっこりと笑い、グラスを持つ反対の手にもう一つグラスを作り出した。玉座の横に置いていたワインボトルを持ち上げてそれに注ぐと、俺にグラスを渡してきた。
「サンキュ」
「うん、マリアの体の調子はどう?」
軽く乾杯し、俺はワインを口に含みながらアイリスの心配事を聞いていた。それにしてもこのワイン美味いな。
「ん、まぁ、表面上の調子は良さそうだな。アイリス、お前もだ」
「……はは、やっぱり分かる?」
無駄に笑顔なんざ作っちまって、空元気なのは見ていて分かるさ。何があったのは聞かないが、世界を相手取り戦っているんだ。辛いのは当然だろう。
「私は魔帝になった事に対しての後悔は一切無いんだよねぇ、けどさ、私ってさ、どうにもダメなんだよね。仲間の死を、中々さ、乗り越えられないんだ。指揮官として、失格だよ」
アイリスは微かに俯くと、手に入る力が強くなったのかワイングラスにヒビが入る。
だがそれが戦争だ。それこそが戦争だ。
「……アイリス、俺が慰めるタイプじゃねぇっての分かっていて、そんな事を言うんだろうな?」
コクリと頷いた。なら遠慮はいらねぇな。ため息を吐きながら、俺はグラスに入っているワインをアイリスの顔にぶちまけた。
「ナマ言ってんじゃねぇぞクソガキが。誰が始めた戦争だと思ってやがんだ、えぇ? 事情はどうあれ、てめぇなんだろうがよ、仲間が死んだから悲しい? 何もしたくねぇ? ざけんじゃねぇぞ」
俺は嘘が嫌いだ。誰に対しても言いたいことは口に出す。それが、例え娘のように思っているアイリスだとしてもだ。いや、娘のように思っているからこそ、俺はここまで厳しくなれるのかもしれねぇ。
「俺だって元々はこの国の将軍だ、てめぇの気持ちも分からなくもねぇ、昨日喋っていた奴が次の日には居ねぇんだからな。だけどよ、涙を流すのは一度でいい、一度流して切り替えなきゃいけねぇ、それが司令官だ、それがトップってもんなんだよ。いちいち立ち止まってんじゃねぇぞ!」
アイリスの胸ぐらを掴み、言い聞かすようにして俺は怒号を浴びせ続けた。
目に涙を溜めて、俺の言葉を聞き続けるアイリスはどうしようもなく可哀想だったが、本人が望んだ事だ。
「……バルトロマイさん……でも、マリアまで今回の戦いで死んでいたかと思うと……っ」
「……はぁ、アイリス、先に謝っとく。すまんな」
俺は涙を流し、鼻水すら流すアイリスの頬を思いっきり平手打ちをした。
「グダグダ抜かすんじゃねぇ! それでも進め!! 最後の一兵まで!! てめぇが先頭切って突っ走らなきゃ誰が道を示すんだ!? あぁ!? てめぇはハルワイブ最高の戦士である俺が認めた最高に馬鹿な女だ! だからよぉ……ちょいと気張れや」
胸ぐらから手を離し、アイリスの肩に手を置いて俺は笑顔を作った。
俺の顔を見たアイリスは顔をクシャクシャにしながら、俺の服に顔を埋めてガキのようにギャンギャンと泣き始めた。そしてありがとう、頑張る、と泣きながらそう決意を新たにした。
気付けば、夜は既に開けていた。
今日は忙しかった。アイリスが唐突に今日は宴を開こう、と無茶振りを言い始めたからだ。まぁ、どうやらそれは俺のお見送り会的な要素も含んでいるんだろう。
ハルワイブの兵士だけでも数百人は居るというのに、果たして料理人は耐えきれるか? はっ、ご愁傷さまだな。
「なんだかバタバタしてますね」
「アイリスはいつもこんな感じなのか?」
「はい、困ったものですが……いつも通りのアイリスが戻ってきて、私はとても嬉しいです」
俺とマリアはゆっくり休んでいていいよ、とアイリスから仰せつかった事もあり、寝室のベッドの上で寝転んでいた。
マリアは時折俺にちょっかいをかけてきて、俺にやり返されるとニコニコと可愛らしい笑みを浮かべる。
今日は一日部屋でゴロゴロという気分だ。と言うよりもマリアと違って俺は翌日に響くんだ。主に腰痛と、腕と腹部と太ももに筋肉痛のようなものが起こってすげぇダルい。やはり歳か。
「そういえば、バルトロマイはあの軍医、フェーゲラインの事をご存知でしたのですか?」
「あぁ、俺が若い頃、帝国との戦線ではあいつが出てくるのを皆恐れていた」
「貴方も何度か戦った事があるのですか?」
「幸いな事に無かったんだ。ある時を境にフェーゲラインが一切出てこなくなっちまってな。死んだかと思っていたんだがな」
何があったのかは知らねぇが、運が良かった。あの頃に戦っていれば、俺は為す術もなく負けていたことだろう。それほどに奴は強かった。いや、今でも強いのだろう。だからあれほどに俺は苦戦、否、苦戦じゃねぇ。ほとんど負けていたもんだ。
「……恐らく……彼はその時に娘か何を失ったのでは無いでしょうか?」
「ん? なんでそんなこと知ってんだ?」
そういえばあの時の事を詳しく聞いていなかったな。今は時間もあるし、聞いておくか。
一体、気を失っている時に何があったのか、フェーゲラインがどのような事をしていたのか、それを問い掛けることにした。
マリアが言うには、自分が望んだ世界、だそうだ。その世界でマリアは俺と逃げ出して何処かの農村で暮らしていたらしい。
「…………正直に言うと、あの世界は、私にとっては夢のようでした。貴方と共に過ごせたあの世界……ですが、あそこにはアイリスが居ませんでした……」
あの世界に居た時の感情を吐露するマリアは次第に、声色を落としていった。
「私は……アイリスを犠牲にした世界を「良い」と思ってしまったんです。それが私には、私にとっては屈辱で……アイリスにどんな顔をしたらいいのか、彼女の為に全てを捨てたのに、心の奥底で、それを後悔している自分がいるのです」
「……ふぅん、いいんじゃねぇの? それくらいの後悔を持っててもよ」
「……バルトロマイは後悔、ありますか?」
後悔か、悔いの残らねぇように命を使ってきたはずだ。いつ死んでもいいように「死ぬには良い日」を送ってきた。
ふと考える。俺にとっての後悔とはなんだ? アイリスか? いや、それは違うだろう。なら部下か? それも違うだろう。なら、あぁ、後悔なんてない。
「ねぇな。お前を一人残すってのに、後ろ髪を引かれるなんてこたぁねぇんだ」
「貴方らしい、といえば貴方らしいのでしょうね。なんだか悔やんでいる私が馬鹿らしくなってきたじゃないですか、ですので責任をとってください」
「おいおい……」
マリアが俺の上に転がりながら移動してきて、責任を取れという。元気というか、若いというか。こっちはかなり来てんだぜ。
「……バルトロマイ」
マリアは俺のシャツのボタンを外しながら、顔を近付かせてきた。今にも唇が触れ合いそうになった時、部屋の扉がノックされる音がした。音の方を見ると、やれやれ、と言った顔のオスカルが扉を開けた状態でノックをしていた。
「いつから居たんですかっ!」
マリアはまるで猫のように飛び退きながら、シーツの中へと隠れていった。ナイスタイミングだオスカル。
「今っすよ。というか昨晩マリアさんの声結構響いてたんでそこまで気にする必要は──」
「────っ!! 今すぐ行くのでさっさと行きなさい!!」
顔を真っ赤にしてシーツから飛び起き、手に火の玉を作り出したマリアは、それをオスカルに向けながらそう怒鳴った。オスカル、お前デリカシーねぇな。
逃げるようにオスカルは言われた通り、部屋から走り去っていくのを見たマリアは、リンゴのように耳まで真っ赤にして、俺の服に顔を埋めてきた。
「……まぁ、何となくそんな気はしてたがな」
「それはっ、貴方がっ……!」
「俺が、なんだ?」
「っっなんでもありません!!!! もうしりません!! 早く行きますよ!!」
世にも珍しいマリアが見せたガチの照れ姿に、若干胸の苦しさを覚えた。そっぽを向きながら先にベッドから降りたマリアを追いかけつつ、アイリス達が待つ玉座の間へと、ボタンを閉めながら向かう事にした。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説


セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる