ポンコツヴァンパイアが貧血男子を好きになってもいいですか?

風音

文字の大きさ
上 下
61 / 66
第八章

60.大切なみんな

しおりを挟む



  ーー朝を迎えた。
  いつも通りの何気ない風景。
  でも、人間界の生活は今日で終わり。
  まだ実感が湧かないから、明日も同じような1日がやってくるような気がしてならない。

  いつも通りおばさんが作った朝ごはんを食べて学校に向かった。
  玄関で笑顔で手を振って見送ってくれるのは今日で最後に。


  90日間、毎日通った学校。
  私にとっては青春の塊だった。
  いい事も嫌な事もあったけど、振り返れば幸せの詰め合わせだったのかもしれない。

  教室に到着してから澪に「おはよー!」とひと声かけると、澪は後からつっついてこう言った。



「何か嫌な事があった?  元気ない顔してる」

「ううん、全然ないけど……。あ!  実はビッグニュースがある」

「えっ、何なに?」


「んふふ……。滝原くんと仲直りしたよ」

「うわぁ、良かったね!」



  澪の顔を見るのも今日で最後。
  でも、お別れの言葉は言えない。

  彼女は親友だった。
  恋には消極的なタイプでいつも自分に自信がなかったけど、恋をしてる事に気付かせてくれたり、一緒に遊んだり、家に泊まりに来てくれたよね。
  彼女のお陰で人間界がすごくいい思い出になった。
  明日から会えなくなると寂しいよ……。



「美那っち、澪、グッモーニング!」



  怜くんは前扉から軽く手を上げて私達に挨拶をする。



「怜くん、おはよー!  滝原くんと仲直りしたってね。滝原くんから聞いたよ」

「うん。美那っちが悩みの原因を教えてくれたお陰だよ。ありがとね。夏都から聞いたって事は、美那っちも仲直りを?」


「うん!  仲直り出来たよ。心配してくれてありがとね!」



  いつも元気を分け与えてくれた怜くん。
  思った事をすぐ口に出しちゃう人だから最初はちょっと苦手だったけど、いつも私の気持ちを理解してくれた。
  私がヴァンパイアだと判明しても嫌な顔をひとつしなかった。


  今晩吸血をしたらどうなっちゃうのかな。
  ミッション達成と同時に身体は消えちゃうんだよね。
  そしたら、みんなの記憶からも消えちゃうんだよね
  
  
  滝原くんとは一生お別れかな。
  これからは、具合が悪くてもご飯を作ってあげたり、傍にいてあげれなくなる。
  もう二度と力になってあげられない。

  私自身もこの恋心を背負ったままヴァンパイア界で暮らしていく。
  叶わぬ恋って、こんなに辛くて苦しいんだね……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やくびょう神とおせっかい天使

倉希あさし
青春
一希児雄(はじめきじお)名義で執筆。疫病神と呼ばれた少女・神崎りこは、誰も不幸に見舞われないよう独り寂しく過ごしていた。ある日、同じクラスの少女・明星アイリがりこに話しかけてきた。アイリに不幸が訪れないよう避け続けるりこだったが…。

そらに光る星~誇り高きぼっちの青春譚~

もやしのひげ根
青春
【完結まで毎日投稿!】 高校2年生の神谷は『ぼっち』である。それは本人が1人が好きだからであり、周囲もそれを察している結果である。 しかし、そんな彼の平穏な日常は突如崩れ去ってしまう。 GW明け、クラスメイトの美少女から突如告白される......のだが、罰ゲームか何かだろうとあっさり断ってしまう。 それなのにその美少女はめげずに話しかけてくる。 更には過去にトラウマを抱える義妹が出来て快適な1人暮らしが脅かされ、やかましい後輩までまとわりついてきてどんどん騒がしくなっていく。 そして神谷が『ぼっち』を貫こうとする本当の理由とは——

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?

なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」 顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される 大きな傷跡は残るだろう キズモノのとなった私はもう要らないようだ そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった このキズの謎を知ったとき アルベルト王子は永遠に後悔する事となる 永遠の後悔と 永遠の愛が生まれた日の物語

転生したらお姫様だった!!

三毛猫
青春
転生したらお姫様だったほのぼの系です是非読んでください

食いしん坊な親友と私の美味しい日常

†漆黒のシュナイダー†
青春
私‭――田所が同級生の遠野と一緒に毎日ご飯を食べる話。

【ショートショート】おやすみ

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

呪縛 ~呪われた過去、消せない想い~

ひろ
ホラー
 二年前、何者かに妹を殺された―――そんな凄惨な出来事以外、主人公の時坂優は幼馴染の小日向みらいとごく普通の高校生活を送っていた。しかしそんなある日、唐突に起こったクラスメイトの不審死と一家全焼の大規模火災。興味本位で火事の現場に立ち寄った彼は、そこでどこか神秘的な存在感を放つ少女、神崎さよと名乗る人物に出逢う。彼女は自身の身に宿る〝霊力〟を操り不思議な力を使うことができた。そんな現実離れした彼女によると、件の火事は呪いの力による放火だということ。何かに導かれるようにして、彼は彼女と共に事件を調べ始めることになる。  そして事件から一週間―――またもや発生した生徒の不審死と謎の大火災。疑いの目は彼の幼馴染へと向けられることになった。  呪いとは何か。犯人の目的とは何なのか。事件の真相を追い求めるにつれて明らかになっていく驚愕の真実とは―――

処理中です...