ポンコツヴァンパイアが貧血男子を好きになってもいいですか?

風音

文字の大きさ
上 下
42 / 66
第五章

41.本音

しおりを挟む



  ーー翌朝、母親は時間になってもなかなか起きて来ない美那を起こす為に、部屋に入り布団の上から身体をゆすった。



「美那、寝坊してるわよ。滝原くんにお弁当作るんじゃないの?」

「……今日は作らない」


「どうして?」

「どうしてもっ!」



  私は不機嫌な声でそう言って布団を頭まで被る。
  すると、母親の呆れた声が届いた。



「もしかして、滝原くんとケンカでもしたの?」

「……」


「言いたくないのね。なら仕方ない……。登校時間に間に合うようにちゃんと起きて来てね」



  私は布団越しに母親のため息を聞き取った。


  ーーそれから約1時間後。
  学校に到着すると、滝原くんは下駄箱で待っていた。
  彼は私に気づくと真横について「昨日はどうしたの?」と声をかけてきたけど、そのまま靴を履き替えて素通りした。
  普段ならお弁当を渡した後に会話をしながら教室に向かうけど、今日はそこまで辿り着けない。

  それから彼は何度も声をかけてきたけど、私は接触を避けた。


  ーー放課後。
  澪に「バイバイ」と伝えた後、逃げるように教室から出ていく。
  すると、滝原くんは後を追いかけてきた。



「美那、昨日から様子がおかしいよ。美那……、美那……」



  しきりに声をかけ続けきた彼は校門を出た先の一本道で手首を掴み上げると、私は今にも涙がこぼれ落ちそうな目を向けた。



「私にかまわないで」

「どうして?」


「どうしても」

「……じゃあ、怒ってる理由だけ教えて」



  私はまばたきさえ忘れてしまうほど真っ直ぐに見つめてくる瞳と逃げきれない状況に観念して口を開いた。



「実は昨日……、マンション前で怜くんと話してる所を聞いちゃったの。そしたら、滝原くんが私に近付いた理由を言ってて……」

「……」


「怜くんと仲が悪いのはわかってるけど、そこに自分が利用されてるなんて思いもしなかった。きっと、怜くんの件がなかったら私なんて見向きもしなかったんだよね。私は滝原くんを本気で友達だと思ってたし、体調が心配だったし、辛い過去を背負ってるなら一緒に分かち合おうって思ってた。でも、それって全部独りよがりだったのかな……。そう思ったら、全部が虚しく思えて……」



  胸いっぱいに埋め尽くされてた気持ちを吐き出したら同時に涙がこぼれた。
  自分でもびっくりするくらいに……。
  


「それが本音?」



  彼が落ち着いた口調で聞くと、私は無言でコクンとうなずいた。



「ごめん……。昨日は確かにそう言った」



  言動を認めた瞬間、私は心臓に針が刺さったかのように胸が痛くなって再び感情を爆発させた。



「だったら、もう私にかまわ……」
「逃げないでちゃんと聞いて!  ……じゃないと、誤解したまま嫌な気持ちだけが残るから」


「滝原くん……」

「怜の件で近付いたのは、最初の1週間だけだという所も聞いてた?」


「それは……」

「確かに最初はそういう目的で近付いた。これは紛れもない事実で弁解の余地もない。ごめん……」


「…………」

「でも、美那を傍で見ているうちに考えが変わった。食事や身体の心配をしてくれたり、心を支え続けてくれたり。美那が俺の事を考えて気持ちを先回りしてくれた分、感謝していた。……だからあいつに言ったんだ。今は一番の友達だってね」


「滝原くん……」

「昨日はあいつが負けん気で突っかかってきたから売り言葉に買い言葉で答えただけ。……ってかさ、お前も悪い所だけを切り取って不機嫌になるなよ」


「うっ……(確かに)」

「……ってか俺、今すげぇ恥ずかしい事を言ってない?」



  彼はかあぁと顔を赤く染めながら右手で額を押さえていると、その言葉の本気度が伝わって嬉しくなった。



「ううん、そんな事ない。それより、私が大切な友達って本当?」

「うん」


「……ありがとう。嬉しい」



  誤解が解けてホッとしたけど、彼が友達だと証明してくれた一方で胸がズキっと傷んだ。
  なぜなら、私は自己都合の吸血目的で近付いているのだから。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

水やり当番 ~幼馴染嫌いの植物男子~

高見南純平
青春
植物の匂いを嗅ぐのが趣味の夕人は、幼馴染の日向とクラスのマドンナ夜風とよく一緒にいた。 夕人は誰とも交際する気はなかったが、三人を見ている他の生徒はそうは思っていない。 高校生の三角関係。 その結末は、甘酸っぱいとは限らない。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

四条雪乃は結ばれたい。〜深窓令嬢な学園で一番の美少女生徒会長様は、不良な彼に恋してる。〜

八木崎(やぎさき)
青春
「どうしようもないくらいに、私は貴方に惹かれているんですよ?」 「こんなにも私は貴方の事を愛しているのですから。貴方もきっと、私の事を愛してくれるのでしょう?」 「だからこそ、私は貴方と結ばれるべきなんです」 「貴方にとっても、そして私にとっても、お互いが傍にいてこそ、意味のある人生になりますもの」 「……なら、私がこうして行動するのは、当然の事なんですよね」 「だって、貴方を愛しているのですから」  四条雪乃は大企業のご令嬢であり、学園の生徒会長を務める才色兼備の美少女である。  華麗なる美貌と、卓越した才能を持ち、学園中の生徒達から尊敬され、また憧れの人物でもある。  一方、彼女と同じクラスの山田次郎は、彼女とは正反対の存在であり、不良生徒として周囲から浮いた存在である。  彼は学園の象徴とも言える四条雪乃の事を苦手としており、自分が不良だという自己認識と彼女の高嶺の花な存在感によって、彼女とは距離を置くようにしていた。  しかし、ある事件を切っ掛けに彼と彼女は関わりを深める様になっていく。  だが、彼女が見せる積極性、価値観の違いに次郎は呆れ、困り、怒り、そして苦悩する事になる。 「ねぇ、次郎さん。私は貴方の事、大好きですわ」 「そうか。四条、俺はお前の事が嫌いだよ」  一方的な感情を向けてくる雪乃に対して、次郎は拒絶をしたくても彼女は絶対に諦め様とはしない。  彼女の深過ぎる愛情に困惑しながら、彼は今日も身の振り方に苦悩するのであった。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

バレー部入部物語〜それぞれの断髪

S.H.L
青春
バレーボール強豪校に入学した女の子たちの断髪物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

命のその先で、また会いましょう

春野 安芸
青春
【死んだら美少女が迎えてくれました。せっかくなので死後の世界を旅します】    彼――――煌司が目覚めた場所は、果てしなく続く草原だった。  風に揺れて金色に光る草々が揺れる不思議な場所。稲穂でもなく黄金草でもない。現実に存在するとは思えないような不思議な場所。  腕を抓っても何も感じない。痛覚も何もない空間。それはさながら夢のよう。  夢と思っても目覚めることはできない。まさに永久の牢獄。  彼はそんな世界に降り立っていた。  そんな時、彼の前に一人の少女が現れる。  不思議な空間としてはやけに俗世的なピンクと青のメッシュの髪を持つ少女、祈愛  訳知り顔な彼女は俺を迎え入れるように告げる。 「君はついさっき、頭をぶつけて死んじゃったんだもん」  突如として突きつけられる"死"という言葉。煌司は信じられない世界に戸惑いつつも魂が集まる不思議な世界を旅していく。   死者と出会い、成長し、これまで知らなかった真実に直面した時、彼はたどり着いた先で選択を迫られる。  このまま輪廻の輪に入って成仏するか、それとも――――

クズの異世界転生

中二病
ファンタジー
現代日本で高校生だった主人公は夜に散歩していたら赤信号を突っ切ってきたトラックに轢かれて死んでしまい気がついたら赤子になっていた。 トラックに轢かれ死んでしまって転生した直後主人公に天使が念話で話しかけてきた。 その天使はもう少しで主人公を助けてくれる人が来るという、その話を天使が話した少し後、司祭とシスターだろう男女が主人公の前まで来た。 ……しかしその司祭は私欲のために、主人公を助けずに見捨てた……。 そんな状況を見た神は強硬な手段で主人公を助けることにした。 しかし主人公を助けた貴族家やその貴族家が帰属する国の貴族家や王家の内部には敵国と内通する者たちがたくさんいた!しかも問題はそれだけではなく十数年後には魔王が復活してしまうらしい……。 主人公は神から力を貰ったがだからといって簡単に内通者や魔王そしてその他の問題を解決をできなかった……。 なぜなら主人公が転生した世界には主人公と同等に強い人間や主人公より強い人間がたくさんいたからだ……。 そんな世界で主人公は大切な人たちや護るべき人たちを護るために奮闘する。 カクヨム様と小説家になろう様の方でも同じ作品を書いています。

処理中です...