ポンコツヴァンパイアが貧血男子を好きになってもいいですか?

風音

文字の大きさ
上 下
40 / 66
第五章

39.仲直り

しおりを挟む



  ーー翌朝。
  気分が沈んだまま登校した。
  右手には紺色のお弁当袋。
  今日はお弁当を受け取ってもらえるかわからないけど、約束は守りたかった。

  私が泣きそうな顔のまま下駄箱に到着すると……。



「美那」



  先に登校していた滝原くんは寄りかかっていた壁から離れて下駄箱に入ってきたばかりの私の前へ。
  私は彼の姿を視界にとらえると、昨日の自分を反省して口を開いた。
  すると……。


「滝原くん、昨日はごめんなさい」
「昨日はごめん。俺が悪かった」



  2人同時に謝って頭を下げた。



「滝原くん……」

「昨日美那を追い出した後に言い過ぎたと思って反省したんだ。美那が言ってた事はほとんど正解だったから、ついカッとなっちゃって……」


「ううん、私こそ勝手な真似をしてごめんなさい。きっと見られたくないからしまっておいたのにね……。その上、滝原くんの気持ちも考えずに一方的な考えを押しつけちゃって……」

「…………」


「でもね。滝原くんに一つお願いがあるの」

「えっ……」


「1人で辛い想いをするくらいなら話してくれないかな。何も力になれないかもしれないけど、話してみたら窮屈きゅうくつな気持ちが少し楽になるかもしれなから。1人より2人だよ!」



  彼はまぶたを軽く伏せて何かを考えている様子を見せたが、2回うなずいた後にほんのりと口元を微笑ませながら目線を合わせた。



「うん、わかった」



  彼の心が素直に開かれた途端、私はホッと胸を撫で下ろす。



「じゃあ、昨日家から閉め出したバツとして今日美味しいものをご馳走してね!  昨日はご飯作りの途中で帰らされたし」

「いいよ。何食べる?  外食でも行く?」


「ううんっ、滝原くんの家がいいっ!」

「えっ、俺んち?」


「滝原くんの家でご飯が食べたいの。(河合さんはしばらく吸血しないから今のうちに吸血しないとね)だから、二人でスーパーに行って食材を調達しようよ!」

「オッケー。じゃあ、近所のスーパーの『まるや』で夜7時に約束ね」


「うんっ!  あっ、忘れてた。これ、今日のお弁当」

「サンキュー」



  私はお弁当袋をグンと前に差し出すと、彼は受け取る。
  無事に仲直りできた私達は、太陽の光をたっぷり浴びているひまわりのような笑顔になった。

  しかし、サッカーの朝練後にたまたま通りかかった怜がその一部始終を下駄箱の反対側で聞いてた。



「まさか、あいつ……。この前は美那っちのことを普通に友達とか言ってたクセに、俺の気持ちに気付いてそれを逆手に取ったんじゃ……。くぅぅぅ~~っ!!」



  怜は嫉妬心で煮えくり返ると頭を抱えた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

四条雪乃は結ばれたい。〜深窓令嬢な学園で一番の美少女生徒会長様は、不良な彼に恋してる。〜

八木崎(やぎさき)
青春
「どうしようもないくらいに、私は貴方に惹かれているんですよ?」 「こんなにも私は貴方の事を愛しているのですから。貴方もきっと、私の事を愛してくれるのでしょう?」 「だからこそ、私は貴方と結ばれるべきなんです」 「貴方にとっても、そして私にとっても、お互いが傍にいてこそ、意味のある人生になりますもの」 「……なら、私がこうして行動するのは、当然の事なんですよね」 「だって、貴方を愛しているのですから」  四条雪乃は大企業のご令嬢であり、学園の生徒会長を務める才色兼備の美少女である。  華麗なる美貌と、卓越した才能を持ち、学園中の生徒達から尊敬され、また憧れの人物でもある。  一方、彼女と同じクラスの山田次郎は、彼女とは正反対の存在であり、不良生徒として周囲から浮いた存在である。  彼は学園の象徴とも言える四条雪乃の事を苦手としており、自分が不良だという自己認識と彼女の高嶺の花な存在感によって、彼女とは距離を置くようにしていた。  しかし、ある事件を切っ掛けに彼と彼女は関わりを深める様になっていく。  だが、彼女が見せる積極性、価値観の違いに次郎は呆れ、困り、怒り、そして苦悩する事になる。 「ねぇ、次郎さん。私は貴方の事、大好きですわ」 「そうか。四条、俺はお前の事が嫌いだよ」  一方的な感情を向けてくる雪乃に対して、次郎は拒絶をしたくても彼女は絶対に諦め様とはしない。  彼女の深過ぎる愛情に困惑しながら、彼は今日も身の振り方に苦悩するのであった。

水やり当番 ~幼馴染嫌いの植物男子~

高見南純平
青春
植物の匂いを嗅ぐのが趣味の夕人は、幼馴染の日向とクラスのマドンナ夜風とよく一緒にいた。 夕人は誰とも交際する気はなかったが、三人を見ている他の生徒はそうは思っていない。 高校生の三角関係。 その結末は、甘酸っぱいとは限らない。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バレー部入部物語〜それぞれの断髪

S.H.L
青春
バレーボール強豪校に入学した女の子たちの断髪物語

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

バッサリ〜由紀子の決意

S.H.L
青春
バレー部に入部した由紀子が自慢のロングヘアをバッサリ刈り上げる物語

執事👨一人声劇台本

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
執事台本を今まで書いた事がなかったのですが、機会があって書いてみました。 一作だけではなく、これから色々書いてみようと思います。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

処理中です...