ポンコツヴァンパイアが貧血男子を好きになってもいいですか?

風音

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第四章

35.泊まりに来た澪

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  ーー土曜日。
  場所は自宅マンション。
  今日はお昼から澪が家に泊まりに来ていて、リビングでお土産のケーキを食べている。
  おぼんを持っている母親が私達の前にコーラを置くと、澪は言った。



「ありがとうございます。おばさんと美那ってそっくりですね」

「……え?」

「昔からよく言われるのよ~。美那は母親似だってね」



  澪に指摘された通り、偶然にもおばさんとは顔が似ている。
  だから、初対面の日に不思議な気持ちになったのかもしれない。



「美那が自己紹介の時にカリフォルニアから帰国してまだ1週間程度で言ってたけど、カリフォルニアは長かったんですか?」

「あっ、あの……その質問は……(どうしよ。母親は生粋の埼玉県民だから嘘がバレちゃう!)」

「えっ、カリフォルニアに行ってたのは美那だ……モゴモゴ」
「お母さんっっ!  さっき宅配ボックスに荷物が届いてたかも。取りに行かないとね~」



  嘘を取り繕う為におばさんの口を塞いでリビングを追い出した。
  プロフィールをちゃんと確認しなかったバチが当たって自分の首を絞める事になるとは。
  トホホ……。

  私が警戒深く扉を閉めてイスに座ると、澪はストローを回しながら話し始めた。



「実は……さ。美那に言ってない事があるの」

「えっ、何?」


「この前、怜に気がないって言ったけど、あれは嘘。本当は小学生の頃から好きなんだ」

「うん、知ってた」


「えっ、嘘ぉ!」

「澪が怜くんを見つめてる時はキラキラ輝いてる。最近は澪の「ばーか」が「好きだよ」って聞こえててね。なんか、そんな姿を見てたら羨ましいなって思ったよ」



  頬杖をつきながらニコリと微笑むと、澪は身体から力が抜けてコーラをチューっとひと吸いした。



「怜が美那に気があるって知ってから複雑な気持ちだったんだよね。でも、それは自分が逃げる為の言い訳。結局、恋は一対一だから自分が頑張らなきゃね!」

「そうかもしれないね」


「美那の恋はまだ進んでないの?」

「ん?  私が誰に恋してるって?」


「滝原だよ、たーきーはーら!!」

「えぇっ!  滝原くんに恋なんてしてないよ」



  私は大袈裟に手を振って否定したけど、澪はにやりと微笑む。



「栄養がどうたらこうたらって口実作って毎日お弁当渡してるし」

「そっ、それは……本当に体調がすぐれないから口実じゃないし。(吸血目的なんて言えない)確かに顔はカッコいいと思うし、胸がクスクスする時はあるけど」


「……なに、その胸がクスクスって?  言ってる意味がよくわからないんだけど……」

「あーっ、もういいよ!  何でもないっ」


「わかった、わかった……。美那が言いたくなったらいつでも言ってね。応援するからね」



  澪はそう言うと、食べかけのシフォンケーキにフォークをさして口に含んだ。

  恋かぁ……。
  ううん、ヴァンパイアが人間に恋なんてしちゃだめ!
  7月7日までには人間界を去るし、滝原くんに近付いてるのは吸血目的だし、別にどうこうなりたい訳じゃない。
  ただ、助けてくれる事に感謝してるだけ。

  それに、河合さんに吸血されたくないと思ってるだけ……。

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