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第四章
28.壊れそうな心
しおりを挟むーーある日の夕方。
私は自室で鉄分の多い食品リストを紙に書いていると、母親が手に書類を持って部屋に入って来た。
「三者面談の予定の紙を書いておいたからね。……あら? そんなに大きい模造紙に何を書いてるの? 食材の絵?」
「あぁ、これね。滝原くんの家の冷蔵庫に貼ろうと思って鉄分の多い食材リストを作ってるんだ。イラストを書いておけばどの食材の鉄分が多いか一目瞭然でしょ」
「また滝原くん? こんなに一生懸命作ってるって事は、もしかして美那は彼の事が……」
「ちっ、違うよ! ただ、これを見て料理をすれば少しは体調が良くなるんじゃないかと思って」
「まぁまぁ、あたふたちゃって。美那が言うならそーゆー事にしといてあげる」
「お母さんっっ!」
母親は薄笑いをしながら部屋を出て行った。
明日は滝原くんの家で夕飯を作る日。
行くのは週に一度。
それは2人で決めた。
だからその週一度に徹底して栄養を注ぎ込む事にした。
そして、タイミングを見計らって吸血する!
吸血はまだ一度しか成功してないけど、まずは体調回復が優先。
明日彼の家に行けると思うだけで胸がクスクスする。
でも、このクスクスの原因は一体何だろう。
ーー同時刻。
場所は夏都の部屋。
夏都はベッドに転がりながら中学生の頃のサッカー部の写真を眺めていた。
小学生の頃から長年習っていたサッカー。
写真の向こうの自分はユニフォームを着てにこりと笑っている。
しかし、その笑顔は本物ではない。
写真の奥に秘められていたのは卑屈な感情。
中二になって初めて勝ち取ったレギュラー。
でも、前日になって急に下ろされてしまった。
代わりに入ったメンバーは怜。
練習にほとんど顔を出さなかったのに、毎回のようにレギュラーに選出されていた。
体調が悪い日以外は無理してでも参加していたのが無意味だと言ってるかのように……。
次第に怜は顧問の期待を背負う存在になっていた。
だから、俺は……。
夏都は当時の記憶を思い返すとやりきれない気持ちになって、手にしていた写真立てを部屋の角に投げつけてガバッと布団に潜り込んだ。
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