11 / 66
第二章
10.非難
しおりを挟むーー翌日。
モテ男の滝原くんが怜くんから私をかばったという噂が一年生の間で広まっていた。
学校に足を踏み入れた瞬間から私を見てヒソヒソ話を始める女子生徒。
時には指をさされながら。
「ねぇねぇ、来たよ。あの子でしょ? 滝原くんがかばった女子って」
「しかも、知り合いとかじゃないらしいよ」
「ねねね! どんな雰囲気だったって? 誰か聞いた~?」
「何なに~? あの子が原因で初日からイケメン同士のケンカがあったんだって? 見たかったぁ!」
入学2日目なのに朝から女子の目線が痛い。
こうなった理由は、昨日の小さな出来事から発展したケンカ。
人間界では目立たないようにしていこうと決めていたのに、初日の騒ぎで自分の首を絞めた。
トホホ……。
すると、澪が後からちょんちょんと肩を叩いてコソッと言った。
「あんなの気にしなくていいよ。羨ましくて言ってるだけだから」
「うん……」
澪は宥めてくれるけど、他の女子の視線がきつくてほとんどの人が敵に見える。
嫌なところを突っついてくるという事は、新しい友達が出来て心に余裕が生まれたからかな。
滝原くんは影響力のある人。
でも、その人が私のターゲットだから今後は向き合っていかなければならない。
ヴァンパイア界でも嫌な人はいたけど、こうやって自分が標的になるのは初めての事。
やっぱりブリュッセル様が言ってた通り、人間界は地獄なんだね。
目新しい物が多くてキレイなものばかり見ようとしていたからバチが当たったんだ。
私は悔しくて手のひらが痛くなるくらい拳を握りしめていると……。
「……それ、誰の為に言ってんの?」
後方から噂をかき消す声がした。
その声が教室内に伝わると、噂話はピタリと止む。
私が涙目のまま振り返ると、滝原くんは後方扉の前から噂話をしている女子に転々と目線を当てた。
「自分の為? それとも他人の為? 人が困ってる所を見たら助けたいと思うのが普通じゃない? 憶測で話を繰り広げても誰にもメリットはないし、噂された人は嫌な気持ちしか残んないから」
滝原くんは冷静な口調でそう言うと、先ほどまで噂話をしていた女子は気まずそうに黙り込んだ。
すると、後ろから現れた怜くんが横から腕を回して肩を組んだ。
「夏~都~、かぁ~っこいいじゃん。確かに噂された方は普通に嫌だよな~」
怜くんは軽い口調でそう言うが、滝原くんは「うるせっ」と言って腕を振り解いて教室を出て行く。
私はすかさず席を立って追いかけた。
前方扉を出て三メートル先に滝原くんの姿を目に映すと、叫ぶように声をかけた。
「待って、滝原くんっ!」
彼は呼び止められると、背中を向けたまま足をゆっくりと止める。
「どうして助けてくれたの?」
「……別に。当たり前の事を言っただけ」
彼は私の顔も見ずにそう言うと、再び足を進めてその場から離れて行った。
心が窮屈になっていた時に救ってくれた彼。
人に妬まれた経験は初めてだったけど、こうやって気持ちを大切にしてもらう経験も初めてだった。
だから、なんか嬉しかった。
取り残された私は、その場に佇んだまま温かい目で彼の背中を見つめていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
男子高校生の休み時間
こへへい
青春
休み時間は10分。僅かな時間であっても、授業という試練の間隙に繰り広げられる会話は、他愛もなければ生産性もない。ただの無価値な会話である。小耳に挟む程度がちょうどいい、どうでもいいお話です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
アナタはイケメン達に囲まれた生活を望みますか? ▶はい いいえ
山法師
青春
私立紅蘭(こうらん)高校二年生の如月結華(きさらぎゆいか)。その結華の親友二人に、最近恋人が出来たらしい。恋人が出来たのは喜ばしいと思う。だが自分は、恋人──彼氏どころか、小中高とここまでずっと、恋愛といったものとは縁遠い生活を送っている。悲しい。そんなことを思っていた結華は、家の近所に恋愛成就の神社があることを思い出す。どうせ何もならないだろうと思いながらも、結華はそこにお参りをして、彼氏が欲しいと願った。そして、奇妙な夢を見る。
結華は、起きても鮮明に覚えている意味不明な内容のその夢を不思議に思いながらも、まあ夢だし、で、片付けようとした。
が、次の日から、結華の周りで次々と妙なことが起こり始めたのだった──
隣の席の関さんが許嫁だった件
桜井正宗
青春
有馬 純(ありま じゅん)は退屈な毎日を送っていた。変わらない日々、彼女も出来なければ友達もいなかった。
高校二年に上がると隣の席が関 咲良(せき さくら)という女子になった。噂の美少女で有名だった。アイドルのような存在であり、男子の憧れ。
そんな女子と純は、許嫁だった……!?
vtuberさんただいま炎上中
なべたべたい
青春
vtuber業界で女の子アイドルとしてvtuberを売っている事務所ユメノミライ。そこに唯一居る男性ライバーの主人公九重 ホムラ。そんな彼の配信はコメント欄が荒れに荒れその9割以上が罵詈雑言で埋められている。だが彼もその事を仕方ないと感じ出来るだけ周りに迷惑をかけない様にと気を遣いながら配信をしていた。だがそんなある日とある事をきっかけにホムラは誰かの迷惑になるかもと考える前に、もっと昔の様に配信がしたいと思い。その気持ちを胸に新たに出来た仲間たちとvtuber界隈のトップを目指す物語。
この小説はカクヨムや小説家になろう・ノベルアップ+・ハーメルン・ノベルピアでも掲載されています。
物理部のアオハル!!〜栄光と永幸の輝き〜
saiha
青春
近年、高校総体、甲子園と運動系の部活が学生を代表する花形とされている。そんな中、普通の青春を捨て、爪楊枝一本に命をかける集団、物理部。これは、普通ではいられない彼らの爆笑アオハル物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる