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第一章
5.引っかかり
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「佐川 美那です。アメリカのカリフォルニア州からやって来ました。帰国してまだ1週間程度で不慣れなところもありますが仲良くして下さい。よろしくお願いします」
ーー始業式後の教室で教卓前に立って自己紹介をした。
クラスメイトの目が一斉に向けられた瞬間、ちょっとビビる。
滝原くんが救急車で搬送された後、スマホで今日の予定を確認したら間もなく始業式だと知って、猛ダッシュで学校に滑り込んだ。
そこから自身のプロフィールをゆっくり確認する暇がなかったから目に入った情報だけを伝えた。
すると、自己紹介を終えた途端、中央の列の前から三番目の金髪の男子が机にバンっと手を叩きつけて席を立った。
「うわーっ、かわいい! ねねっ、みんなもそう思うよね! 芸能人みたいでめっちゃかわいくない?」
彼が明るい口調で同意を求めるようにクラスメイトにそう言った瞬間、生徒たちにドッと笑いが生まれた。
それまでは入学したてで緊張していたのか、誰一人喋っていなかったのに。
「いやいや、私なんてそんなかわいくな……」
「しかも、帰国子女! 凄くない? みんなー、仲良くしてやろうなー!」
彼は私の気持ちを置いてけぼりにして付近の男子複数人にハイタッチを始めた。
彼はクラスメイトと初対面とは思えないくらい場の空気に馴染んでいる。
本音を言うと、あまり目立ちたくないから地味に過ごそうと思っていたのに。
やれやれと思いながら彼の斜め前の席に戻ろうして足を進めると……。
ガラッ……
「遅くなりましたー」
前扉から勢いよく扉を開けて入室して来たのは、先程ひったくりから救ってくれた彼だった。
ターゲットは同じ学校の同じクラスだったんだぁ。
時間に余裕がなかったから情報をそこまで確認してなかった。
彼に目線が釘付けになっていると、窓辺に立ってる担任教師は腕組みしたまま言った。
「……滝原くんよね? 職員室で話は聞いてるわ。座席は中央の列の前から二番目だから座ってね。いま名前順に自己紹介してるから」
「はーい」
彼が教室に入って教卓を横切った途端、小声で「さっきの……」と言ったが、彼は目元を微笑ませてシッと唇に人差し指を当てた。
その瞬間、不思議と親近感がうまれて、綿毛で頬をなでるように胸がサワサワした。
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