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カーテン越しの君
12.印象的な声
しおりを挟む◆ ◆ ◆
「福嶋さ~ん、体調はどう?」
養護教諭の呼びかけと共にカーテンが開き、いつしか入眠していた紗南はその一声で目が覚めた。
「あ、はい。大丈夫です」
ゆっくり身体を起こして右手の甲で目を擦り、もう一方側のベッド方向に目を向けた。
すると、先ほどまで閉ざされていたカーテンは開かれていて、布団は綺麗に敷き直されていた。
そこに彼の姿はない。
きっと、私が眠っている間に教室へと戻って行ったのだろう。
もぬけの殻化したベッドを見た瞬間、先ほどの出来事がまるで夢だったのではないかという錯覚に陥った。
結局、彼に関する情報は上履きのマーク以外は謎めいたまま。
印象的な声だけが脳裏に焼き付いた。
記録表に普通に名前を書いてくれれば、何の気も留めなかったのに。
頭の中は疑問と想像力が湧き立つ一方。
カーテンの奥に塞ぎ込んでいた彼独特の世界は、まるで異空間のように感じた。
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