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第十二章
336.みんなの応援
しおりを挟む屋上に風がビュンビュンと吹き荒れる中、和葉は全校生徒が見える位置まで足を進ませた。
風で髪と服はパタパタとはためいている。
実は高所恐怖症。
告白の緊張もあって足がガタガタ震える。
何度か深呼吸しても心は落ち着かない。
そんな中、整列している男子生徒の一人が屋上に一人立つ和葉を発見すると、指をさしながら大きな声を上げた。
「あっ……、あそこにっ! 屋上に女子生徒が立ってる」
そのひと声によって生徒達は次々と和葉に気付いて、指をさしたり何事かと想像しく騒ぎ立て始めた。
しかし、その女子生徒が以前屋上から告白をした和葉と知ると、先行く展開は目に見えていた。
もはや、自殺と勘違いする者はいない。
大人しく列に並んでいた拓真も男子生徒のひと声で屋上の和葉に気付いた。
嫌な予感がした途端、手で顔を覆う。
「バカッ……、あいつ。それ以外に方法はないのかよ……」
呆れるあまり深いため息が溢れる。
5ヶ月前、この屋上で拓真に告白をした経験のある私に気付いている生徒達は、これから何が執り行われるか薄々気付いたようだ。
野次は飛び交い、笑い声も聞こえる。
でも、第三者の反応なんて拓真一直線の私には関係ない。
ただ自分が一生後悔をしないように、目的を果たしたいだけ。
前回と違う点を挙げるのなら、応援してくれているみんなから受け取った勇気。
告白が二度目という事もあって、中には応援する声もちらほらと聞こえてきた。
その中には友達の声も。
「和葉ーーっ、頑張れーーーっ! 落ち着いて、しっかりと気持ちを伝えてね!」
と、祐宇の声。
「あんたならきっと大丈夫。勇気を出して!」
と、凛の声。
「和葉さん、ちゃんと自分の想いを伝えてねー!」
と、愛莉の声。
「お前ならきっと上手くいく! 自信を持って頑張れよ」
と、敦士の声。
そして、特に何も言わなかったけど、頷きながら温かい眼差しを向けている栞。
今日まで支えてくれたみんなが私の背中を押してくれる。
そして、屋上まで届いたみんなの言葉が勇気に変わる。
和葉はみんなの優しさに感激するあまり、じわりと涙が浮かび上がった。
ありがとう……。
みんなが力を貸してくれたお陰で頑張れる。
今から精一杯気持ちを伝えて恋を成就させたい。
悪い結果に繋がってしまった時の事は後でゆっくり考えればいい。
よし、行こう!
仲間の笑顔に見守られて気合いを入れ直すと、全校生徒が見ている前で屋上から勇気を振りしぼって拓真を目がけて叫んだ。
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