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第十二章
335.二度目の告白
しおりを挟む幼い頃は未熟な母親が原因で。
そして、一年生の頃は一番の親友だと思っていた友達に裏切られてから固い殻に閉じこもっていた。
しかし、大切な仲間や家族に支えてもらっていた事実を知った途端、固い殻を打ち破る事が出来た。
みんなが背中を押してくれたお陰で気持ちの足並みが揃った私は、親友の二人とぶつかり合った日の、翌日の朝。
拓真に初めての告白をしたあの日と同様、再び学校の屋上に立った。
遊びの一環で近付いた事を未だに許してもらえないけど、恋心は信じてもらいたい。
今日は偶然にも運命のあの日と同様、校庭で全校集会が行われる。
本来なら冬場は体育館で行われるが、今は卒業式に向けて改修工事を行なっていて使えない。
もし体育館が使えたとしたら、ステージ上で愛の言葉を口にするつもりだった。
今は足を運んでも話を聞いてもらえないし、今後も顔色を伺いながら拓真のペースに合わせていたら幸せのチャンスを逃してしまうから、あの時と同じく強行突破の道を選んだ。
今回がダメなら、また次回頑張ればいい。
次回もダメなら、更にその次の機会を狙っていけばいい。
やっぱり自分の気持ちを大切にしたいから、諦めという言葉を消した。
本来は男を追いかける性分じゃない。
しかし、弘崎拓真というツンデレ男だけは、自分から追いかけなければモノに出来ない。
拓真はその辺の男と違って簡単に落ちてくれないカタブツくんだ。
現在の時刻は、AM8:45。
今から5分以内に行動を起こさなければ先生達が校庭に現れてしまう。
だから、1分でも無駄にしたくない。
しかし、一度目の告白の時とはひと味違う。
恋心を育みながら度重なる障害を乗り越えて今日まで一生分くらい傷付いてきたから、一皮剥けた分強くなった。
だから、もう気持ちに迷いはない。
拓真に好意を寄せてる事を知りながら想いを伝えてきた敦士には、『一人きりで戦ってる訳じゃない』という事を。
母親に正体を明かされるまで他人だと思い込んでいた肉親の父親には、『焦らずに誠意を尽くす』という事を。
毎週のように愛情たっぷりのご飯を食べさせてくれた拓真のお婆さんには、『失敗は成功への架け橋』という事を。
不器用に愛しながらここまで育ててくれた母親には、『後悔するような失敗をしても、過去を振り返らずに未来に目を向ける』という勇気を。
そして、体調面やメンタル面を心配をしていてくれた親友二人には、『自分らしく自信を持って、最後まで使命を果たす』という力を与えてもらった。
私は自分を大切にしてくれるみんなからの激励の言葉を受け取って、一人一人の言葉を思い返しながら深く噛みしめていた。
和葉は拓真が校庭に来ているかどうかを確認をする為に、屋上に身を隠しながら校庭を覗き込んでみると、生徒達が不揃いに列を作っていた。
それを見た瞬間、緊張で胸が張り裂けそうに……。
黒目を左右させながら不揃いな列に目線を当てると、拓真の姿を発見。
思わず安堵の笑みが浮かんだ。
一度後退してからすうっと大きく息を吸い込むと、握り拳を作って気合いを入れる。
ーーあれは、拓真のハートを狙い始めたばかりの9月中旬。
私はこの屋上に立って拓真に愛の告白をした。
あの時は当然成功するものだと思っていた。
でも、まだ恋愛に発展するほどの気持ちに達していなかったせいか、全校生徒の前でキッパリと断られてしまった。
けれど、拓真はその後に屋上に現れて一度きりのチャンスを与えてくれた。
あの時のチャンスがあったからこそ、恋が始まった。
そして、今日。
これから二度目の告白をする。
ダメ元でも構わないと思ったのは、自分でも抑えきれないくらい恋心が膨れ上がっているから。
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