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第十二章
323.嫌味な敦士
しおりを挟む拓真は祐宇と凛の二人と話し合った後から、様々な葛藤が繰り返されて頭の中がパンク状態に陥っていた。
昼休みに一旦気分転換にと思い中庭へ。
花壇のレンガに腰を下ろして、ボーッと空を眺めていた。
天気は快晴。
梅の花がようやく蕾を付け始めたが、ブレザー1枚じゃ肩が竦むほど寒さが身に染みる。
ここは、あいつと坂月さんと俺の三人で昼休みに日向ぼっこをしていた定番の場所。
あの時はあいつの目論見なんて知らなかったから平和で穏やかな時間を過ごしていた。
俺と坂月さんが話をしていると、あいつは話題に入れずいつもヤキモチを妬いていた。
スマホの話題なんて興味がないくせに、無理についていこうとしてるし。
それがつい先日の出来事なのに、今や懐かしく思う。
ーー俺、これからどうしたらいいのかな。
心の解決策が見つからないまま悩みだけが置き去りにされるのかな。
拓真は地面を見つめながらもぬけの殻になっていると……。
「よっ! ノッポの一年坊主くん」
突然左方向から何処かで聞いた事のある男の声が耳に飛び込んだ。
その人物の上履きが視界に入ってから顔を見上げると、そこには最も目障りな存在としている敦士の姿が。
底なし沼に足が飲み込まれていくかのような心が不安定なこのタイミングでやってきた。
正直、こいつは苦手だ。
姿を現す度に余計な置き土産をしてくる。
拓真は敦士が鬱陶しく思うあまりギロリと睨みつけた。
「俺に何か用?」
「別にィ~。今日は天気がいいから中庭をぶらっと散歩してただけ」
「……なら、あっち行ってろ。気軽に話しかけてくるな」
「あんたさぁ、まだ思春期なの? 相変わらず尖ってるねぇ。ツンデレ坊やくん」
敦士は軽く茶化すと、ポケットに手を突っ込んだまま隣にドカッと腰を落とした。
拓真は思わず頬がピクリと引きつる。
「なんだよ、クソジジィ。隣に座ってんじゃねーよ」
「……先輩に向かってクソジジィとは何だ。歳が二つしか違わねぇだろ」
「じゃあ、ガキ扱いするな」
「はぁ……。相変わらずお前とは合わないな」
「そのセリフはそっくりそのままお返してやるよ」
拓真が敦士に嫌悪感を抱いてるように、敦士も拓真が気に食わない。
しかし、敦士には言いたい事があって、校舎で拓真を見かけてから後を追っていた。
「あんた、最近女と別れたんだろ。あの子結構可愛かったのに、どうして別れたの?」
敦士からの質問は、息をつく間もなくストレートにぶつけられる。
「お前には関係ないだろ」
「Noと言わないって事は正解だった? ふぅん……。やっぱり別れたんだぁ」
「くっ……」
敦士は得意げな笑みを浮かべると、拓真は悔しくなって額に青筋を立てた。
しかし、拓真も負けてはいられない。
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