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第十二章
321.自分の中のルール
しおりを挟む拓真は祐宇と凛の話を聞いた直後から、心の中に小さな漣が立ち始めた。
授業中、机に頬杖ついて窓の外をボーッと外を眺める。
最近ずっと考えてた。
自分の気持ちが何処を向いてるのかを。
バイク事故を起こしてから栞に自分の未来を捧げるつもりだった。
加害者に輝かしい人生なんて無縁だから。
栞が街を離れても罪悪感を背負いながら平坦な人生を歩んでいたはずが、和葉に出会ってから全て狂い始めた。
あいつとは出会いからして最悪だった。
毎日休み時間の度に現れて、ウザくて面倒臭くて自由を奪われた気になって本当に嫌だなって。
でも、不器用なクセに一生懸命だったり。
負けず嫌いだったり。
見かけによらず真面目だったり。
人一倍強い一面を見せてくれたり。
……と思ったら、意外に弱くて脆かったり。
毎日一緒にいるうちに、まるで策略にハマってしまったかのように感情が左右された。
喜怒哀楽の感情を封印していたはずが、いつしか笑顔が生まれていて、やがてあいつの涙や、いつも隣にいる男の存在が気になるように。
どうしてこんな感情が生まれてしまったのかわからない。
俺は自分の中のルールをいつしか自分の手で塗り替えていたようだ。
そんな中、栞は一年ぶりに街へ戻ってきた。
それは、和葉のペースに巻き込まれていた矢先の出来事だった。
栞が現れた途端、少しホッとしてる自分もいた。
何故なら街を去る前から何一つお詫びが出来てない状態だったから。
だから告白を受け入れた。
しかし、事故を起こした時になかったものが今はあって、何もかもが変わり始めた。
最初に犠牲になったのが和葉との時間。
次第に関係は右肩下がりになって互いに距離を置くように。
あいつには農作業を手伝ってもらった恩があるのに、話すらしないレベルまで関係が冷え込んでいるのは良くないと思って、関係改善を目的にあいつの元へ向かった。
ところが、そこで耳にしたのはあいつが賭け金目的で俺に近付いたという事。
その瞬間、何もかもが信用できなくなった。
数ヶ月間に渡って信頼関係を築いてきたからこそ、裏切られた時の気持ちが半端ない。
ところが、和葉の友達の口から伝えられたのは、お金目当てで近付いていたのはほんの数日程度だと言う。
しかも、その話は張本人から伝えられたものではなくて栞から。
どうして栞が金目的で近付いた話を知っていたのか。
その間、どんな話し合いが行われていたのかわからない。
しかも、あいつは保健室に世話になるほど体調を崩していた。
確かに最近少し痩せたな……と。
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