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第十二章
316.ダイヤモンドのような涙
しおりを挟む「……あのっ。あのね。今から伝えたい事があるの。聞いてくれる?」
「何かな?」
「和葉の元に戻って来てくれて本当に嬉しいよ、おじ……ううん、私の大切なお父さん……」
和葉は涙で視界が歪んでいたが、父親の目をしっかり見つめてストレートに想いを伝えた。
言えた……。
父親にいま一番伝えたかった言葉。
もし、おじさんを『お父さん』と呼んでしまったら、もう二度と会えなくなってしまうような気がしていたから、なかなか言えなかった。
さっきは感情的になっていたから思わず口から飛び出てしまったけど、肉親と知った今は素直に気持ちを伝えたい。
まだお父さんって言い慣れないから恥ずかしいけど、無理して言ってる訳じゃない。
大切な人にだけ伝えたい、大切な想い。
これが、家族としての新しいスタートの合図だった。
父親は、勢い任せだった先ほどとは違って今度は自分の意思で『大切なお父さん』と伝えられると、感銘を受けて目頭に手を当てて声を漏らしながら泣き崩れた。
和葉も普段は笑顔しか見せて来なかった父親の泣き崩れる姿を見た途端、今までの苦労や悲しみが伝わってきて涙が止まらなくなった。
母親に指摘されるほど感情深いところがあるお互いは、やっぱり血の繋がった親子以外考えられない。
過ぎ行く時間と共に気持ちが落ち着いてくると、テーブルに置いてあるティッシュを二枚取って和葉の傍でしゃがんで頬に流れる涙を染み込ませた。
「和葉の涙はダイヤモンドのように美しいね。……でも、暫くお預けにしないとね」
「どうして?」
「いつも輝き続けていたら価値は下がってしまう。だから、次に涙を流す時は特別な日だけにしよう」
「例えば?」
「それは、和葉の結婚式だよ」
「えっ! そんなのまだまだ先だよ。……その前に相手がいないし」
「あはは……。その日が来るまで涙をお預けにするくらい幸せに暮らしていこう。家族三人……いや、もうすぐで増えるから四人でね。だから、今日からはダイヤモンドの価値を下げないように、誰もが羨むような笑顔が絶えない家庭を築いていこう」
父親はこれ以上和葉に涙を流させぬように幸せにすると約束。
そして、和葉はこれから自分がお姉ちゃんになる事を実感すると、胸が熱くなるほど嬉しくなった。
最近は恋愛の悩みで食事が喉を通らないくらい辛い生活を送っていたけど、今は不思議と悩みを吹き飛ばしてしまうくらい幸せを噛み締めた。
和葉は家族という温かみと実感が心の奥底に浸透していくと、不思議と気持ちは落ち着きを取り戻した。
最近は色々な事があってしきりに涙を流していたのに、涙を流す事は全く慣れない。
でも、いま父親と一緒に流した涙は、一歩先を歩み行く為の嬉し涙だった。
そして、和葉は気になっていた最後の質問をする。
「どうして復縁する事になったの?」
父親は私がまだ赤ちゃんの頃に離婚した。
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だから、余計気になっていた。
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