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第十一章
295.大丈夫の意味
しおりを挟む「あの……さ。この前、三人でいる時に下駄箱で拓真に賭けの話を聞かれたじゃん」
「あっ、うん……」
「その時、拓真は話が聞けなくなるほどキレてたから、和葉に追いかけるように言ったら、顔を真っ青にしながら追いかけて行ったよね」
「うんうん。あったあった」
「あの後、本当はどうなったのかな。その後の電話では『大丈夫』って言っていたけど、きっと本音じゃなかったよね」
今まではほとんど接点がないと思っていたから空白の時間を見過ごしていたが、隙間が少しずつ埋まっていくと、和葉の抱えていた現実に直面した。
祐宇は視線を手元に置いて、両手で包み込んでいたドリンクのカップにぎゅっと力を加えた。
「確かに。あの時は片想いしてるなんて知らなかったから、誤解を解いて謝って終わったかと思ってた」
「私達は和葉の言葉をそのまま鵜呑みにしてたけど、本当は大丈夫じゃなかったんじゃない?」
二人は和葉の『大丈夫』と言う言葉を信じてしまったが、先程真実を聞いて和葉が拓真に片想いをしている事実を知った途端心配になった。
ただのお金目的の対象と恋愛対象とでは、『大丈夫』と言っていた意味合いが大きく変わってくる。
二人は今日まで本音を伝えて来ない和葉が、いま一人で悩みを抱え込んでいる事は間違いないと確信した。
「さっき栞ちゃんが和葉の事を話してくれなかったら、私達はこの先もずっと和葉の恋心を知らないままだったね」
「一人で辛い想いを抱えてないで相談すればいいのにさ」
「もしかしたら、本音を言えない事情でもあるのかな。いつも自分の話をはぐらかすし」
「本音を言えない事情って、例えばどんな?」
「……それはわかんない。でも、きっと私達に言えない何かがあるはず」
二人は口を塞いだまま和葉の事を思い描いてる時間は、店内のBGMや騒音すら耳に入らなかった。
そして、30秒ほど沈黙した後、再び祐宇は口を開いた。
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