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第十一章
291.話をしに来た栞
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「あっ、あのっ……。お二人は和葉さんのお友達です……よね……」
拓真と別れて失恋の傷が少し癒え始めた、10日後のある日の放課後。
目の下に薄っすらとクマを作って幽霊のような暗い表情をして校門に立っていた栞は、和葉の友達の祐宇と凛を見つけた途端、校門を過ぎた辺りで二人の背中からそう呼び止めた。
栞は和葉がいないタイミングを見計らって二人に声をかける事を予め決めていた。
二人は後方から呼び止める声に気付いて、同じタイミングで振り返った。
「少し話がしたいんですけど、ちょっとだけお時間いただけませんか? ……お願いします」
栞は初対面の二人に緊張すると、ロボットのようにカクカクとした不自然な動きで深々と頭を下げた。
勿論、祐宇と凛は同じ制服を着ている栞に見覚えがなく、互いの顔をチラッと見合わせて軽く首を捻った。
すると、凛は軽く腕を組んで言った。
凛「……ってか、あなた誰? 私達を知ってるようだけど」
祐宇「ちょっと、凛! 知らない子なんだから、もう少し優しい言い方をしてあげないと」
栞「突然ごめんなさい。私は1年の藤田栞と言います。弘崎拓真の元カノです。和葉さんのお友達なら拓真を知ってますよね……」
凛「えっ! 勿論知ってるけど……。その弘崎拓真の元カノが、私達に何の用?」
栞「はい……。お友達の和葉さんについてです」
栞の口から和葉の名前が上がると、祐宇と凛の二人は少し驚いたよう再び互いの顔を見合わせた。
祐宇達は栞に連れられて、駅とは反対方向の徒歩5分ほどのところにある河原へやって来た。
幅3メートルほどの透き通った川には、乱雑に散らばった枯葉がゆらゆらと競い合うように流れている。
ここは、河原に沿って並んでいる桜が春には満開になり、お花見スポットとしても有名な場所だ。
屋根付きのベンチに到着して栞が先に荷物を置いて腰を下ろすと、祐宇と凛の二人もL字型に並ぶベンチに腰を下ろした。
栞は一人、そして祐宇と凛は隣に並んで座る。
夕方ですっかり傾いた日差しは、祐宇達のハイソックスの高さまでしか届いていない。
祐宇はベンチに腰を落ち着かせると、上半身を前のめりにして言った。
祐宇「……で、弘崎拓真の元カノの藤田さんが、どうして私達を呼んだの? 和葉に何か関係ある話?」
栞「あの……。ひょっとして、和葉さんから私の話を聞いていませんか?」
凛「えっ? 和葉の口から藤田さんの話? 私達は何も聞いてないけど……」
和葉に何も相談されていない祐宇達は、栞の存在など知るはずもない。
栞「もしかして、私と拓真の話も?」
凛「一度も聞いた事ないけど」
栞は重ねて尋ねたが、予想外の返答が届いて準備していた話に結びつけずに困惑した様子を見せた。
栞「あの……。まさかとは思うんですけど、お二人は拓真と和葉さんの関係を知らないとか」
凛「ん? 弘崎拓真とあなたと和葉の三人が、何か関係してるの?」
祐宇「えっ、なになに? 関係ってどういう事?」
栞は二人から予想外の返答が届くと酷く驚いた。
一方の祐宇と凛は、先日賭けの話を拓真本人に聞かれてきまずい状況を作り出してしまったが、その間和葉が拓真にどのように接してきたかまではわからない。
祐宇達は、栞が和葉の話を挙げた事に驚いたが、その後和葉と拓真の関係が明かされる事に。
栞は以前和葉に話した内容と同じく、拓真と知り合った頃から最近別れた事。
そして、本気で恋をしていた和葉の話を全て伝えた。
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