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第十章
266.敦士と栞
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「あんたってさ、清純派っぽくて従順そうに見えるけど結構ズル賢いんだね」
敦士は体育館から校舎へ移動中の栞と、すれ違いざまに冷ややかな口調でそう言った。
突然断定的にものを言われた栞は、一緒にいる友達と揃って足を止めた。
二人同時に振り返り、敦士へと目を向ける。
「あなたは和葉さんのお友達の……」
「よくぞご存知で。じゃあ、話は早いかもね」
敦士は薄笑いを浮かべて挑発的な態度に。
栞は何か話があると察すると、友達に先に教室へ戻るよう伝えて別れた。
敦士が廊下の中央の道を開けるように壁に背をもたれると、栞も同じく端に寄った。
栞は敦士の不機嫌そうな様子からして、悪い予感が過ぎる。
「俺さぁ、好きな子が悩んでると助けたくなっちゃうんだよね」
「……もしかして、和葉さんの事ですか?」
「なぁんだ、俺の事よくわかってんじゃん」
「それで、私に何の用ですか?」
ふてぶてしい態度の敦士と、初っ端から気分が害されている栞。
弾まぬ会話を進めているお互いの目線は、同じく反対側の壁に向けられている。
二人が会話を交わすのは今回が初めて。
しかも、敦士の口からの和葉の名が挙がると、栞の気分は一気に落胆する。
何故なら和葉の存在が、今の自分達に影響を及ぼしているから。
「ついこの前まではさ、拓真って奴と和葉とあんたともう一人の子の四人で、昼休みに中庭で一緒に喋っていたりしたところをよく見ていたのに、あんたは奴と上手くいった途端、和葉と校内ですれ違っても無視ってカンジ?」
「私が和葉さんを無視だなんて、そんな……」
栞は窮地に追い込まれていくと、目線は下がり語尾は小さく消えていく。
彼はピンポイントに攻めてくる。
正直、その件については触れて欲しくなかった。
あの時は無視するような形になってしまったけど、もちろん悪意はない。
もし、自分から声をかけてしまったら、拓真が反応してしまいそうだったから。
正直に言えばあの時だけじゃなくて、今でも神経を尖らせている。
一方の敦士は、和葉と心の距離を置いてるうちに胸がモヤモヤし始めていた。
和葉が拓真と話をしなくなるのは納得いくが、一緒になって無視をした栞の態度が気に食わない。
和葉とは友達関係を解消したが、事をうやむやにしたまま過去を帳消しになってしまうのが嫌で見過ごせなかった。
歯止めが利かないほど募る想いは、やがて余計なお節介へ。
「あんたさぁ……。もしかして、奴の弱みでも握ってんの?」
失礼極まりない攻撃的な質問は、更にエスカレート。
ここまで我慢して聞いていた栞だが、心外な質問に表情を曇らせた。
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