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第十章
264.深い悲しみ
しおりを挟む『この先どうするかは自分で考えて。選択を間違わないように、後悔しないように正しい道に向かって進めばいいんじゃない? きっと、その先に答えは待ってるから』
私と同じくらい精神がボロボロだったはずなのに、体調回復を見守った後はキチンと前に進めるよう背中を押してくれた。
最後に宛てた言葉の中に自分にプラスになる事なんて一つもないのに、見返りを求めぬまま元を去って行った。
決別という壁が立ちはだかってしまったとしても、未だに友達として大切な存在だと思っている。
固い絆で結ばれた信頼関係は簡単に断ち切れないから。
もし、男女間の友情が成立するなら、迷いなく敦士の名前を挙げる。
知り合ってからは2ヶ月程度で友達期間としては最も短かったけど、今日まで沢山の深い思い出を残してくれた。
親友だと思っていた沙優が裏切っていると知った去年のあの時よりも、敦士と友達じゃなくなってしまった今の方が断然に辛い。
でも、敦士が友達という対等的な関係を望んでないから、私達は友人にもなれなかった。
和葉は廊下側の壁に背中を密着させたまま敦士との思い出を浮かべながら一人で涙を流していると、壁一枚挟んだ向こうに歩いている敦士と友達二人の会話が耳に届いた。
「ねぇ、今日暇? 学校終わったら繁華街にナンパ行かない?」
「お! いいねぇ。今日はお姉様系いこう」
「……俺、パス」
「はぁ? 女好きな敦士がナンパを断るなんて、あり得ねぇ~」
「今日も和葉ちゃんに夢中ですかぁ?」
「いや……。俺、ああいった純粋なタイプの子って苦手なんだよね。見た目は派手で遊んでそうだけど、一人の男しか見えないような一途な子だったからさぁ」
敦士達の会話が耳にしっかり届いていたけど、それが本心だと思っていない。
何故ならこの2ヶ月間で敦士という人物を知り尽くしていたから。
だから、余計涙が止まらない。
一方の敦士は、和葉の教室に差し掛かる手前で、開いている後方扉から和葉が隠れている姿が見えていた。
だから、敢えて突き放すような言動をした。
和葉に嫌われれば自然と他人に戻っていくと思っていたから。
しかし、こうやって何度も隠れている和葉を目撃してるうちに、意図的に避けられてる事に気付いた。
本当はこれでいいと思っているが、内心はやっぱり和葉が忘れられない。
敦士は日を追う毎に両極端な気持ちに板挟みになっている。
友達と会話をしながら廊下を歩いている敦士の背中から、和葉の走り去る足音が聞こえてくると、敦士は思わずポツリと呟いた。
「大切な人に無視されるって結構辛いな」
「……え。お前、誰かにシカトされてんの?」
「いいや、何でもなぁ~い。……でも、次回のナンパは誘ってね」
「なぁ、敦士。ナンパに行きたいのか行きたくねーのか、はっきりしろよ」
友達関係を解消して傷ついていたのは、和葉だけではない。
敦士も同様、深い悲しみに包まれていた。
しかし、一度心に決めたから信念を曲げるつもりはない。
身も心も後ろに振り返る気のない敦士は、顔と心を正面向けて新たな道のりを歩み始めた。
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