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第九章
250.敦士vs拓真
しおりを挟むーー昼休みも残り間近になった頃。
一年生のトイレ前で拓真が出てきたタイミングを見計らって、腕組みをして壁に寄りかかっている敦士が声をかけた。
「あんたさぁ、さっき窓の向こうから俺と和葉を見てたでしょ」
「……別に見てないけど」
「いや、ぜってぇ見てた」
「見てない」
「嘘だ! あんたは教室からずっと俺らを見てた」
「見てない!」
「いいや、見てたって!」
敦士はライバル心をむき出しにしてそう問い詰めた。
責め立てるような言い方をしたのは、先ほど和葉の気持ちを知って平常心ではいられなくなったから。
一方の拓真も、暴走族時代を彷彿させるような、冷たい目つきで反抗心を露わにする。
拓真は敦士を校内で見かけた事はあったが、こうやって話すのは今回が初めて。
だが、そんなやり取りが鬱陶しく思って話に区切りをつけようとした。
「いいや。俺が見てたのは……、渡り廊下の下の手前側にあるウサギ小屋だ」
苦肉の策として飛び出たのは、まさかのウサギ小屋。
敦士は思わぬ変化球に目が点に。
「はぁ? 何であのタイミングでウサギ小屋を?」
「ウサギの……、成長が気になって……」
残念ながら、出まかせの嘘に収拾がつかない。
敦士は、自分達を見ていた事を認めない強情さにもどかしさを感じた。
「まぁいいや。あんたのお友達の和葉って、本当にかわいいよな~」
敦士から和葉の話題が上がった途端、拓真は左頬がピクッと揺れ動いた。
しかし、敦士はその微々たる反応を見逃さない。
「美人だし、身体は細いけど出るところは出てるし、性格は生意気だけど不器用に真っ直ぐで何か放っとけないし」
確かに和葉とは友達関係であるが、最近和葉の周りにうろついて目障りな存在として映し出されていた敦士に友達扱いされるのは何故か腑に落ちない。
無視しようと思って横切ったが、敦士はお構いもなしに続ける。
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