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第九章
238.耳を塞ぎたくなるような現実
しおりを挟む頭はガンガンしている。
身体はボーっとした感覚でダルい。
しかも、胃がムカムカして吐き気がする。
この三段階の症状は恐らく二日酔いだ。
しかも、昨日フラれたばかりなのに何故か拓真の家にいる。
どんな経緯を経てここに辿り着いたのだろう。
それに、どうしてブラジャーの中にスマホが?
まさか、制服のブレザーの内ポケットと勘違いしたとか?
ヤバい……。
昨日の事を思い出そうとしても、全く思い出せない。
えーっと……、昨日は拓真にフラれて、失恋の傷に耐えられなくて、祐宇と凛に連絡をして、一緒に飲みに行ってから……。
和葉は覚えてる範囲の記憶から辿っていくと……。
コンコン……
軽いノック音の後に部屋の扉が開くと、拓真はお盆にコップを乗せて部屋に入って来た。
しかし、表情は何故か膨れっ面に。
「……ったく。ようやく目を覚ましたか。水持って来たよ」
「ねぇ、どうして私がここにいるの?」
「お前っ……。昨晩は深夜にあんな騒ぎを起こしといて、何をしでかしたか覚えてないとでも言うんじゃないだろうな」
「えっ……。私、昨晩何かをしでかしたの? もしかして拓真に襲いかかっちゃった? もしかして、私のブラジャーの中にスマホを突っ込んだのは拓真なの? 結構大胆なんだね……」
「くっ……、そんな訳ないだろ。相変わらず平和な奴」
淡々と語る和葉に対して、拓真は以前みたく冷たく突き返す。
昨日別れ言葉を口にした時とは、随分表情が違う。
苦言を口にするほどだから、ひょっとしたらとんでもない事をしでかしちゃったの?
「やばっ! 大事なシーンが一つも記憶に残ってないなんて。私がこのベッドに寝てるという事は、絶対にいい雰囲気になっていたはずなのに。くうぅ……、貴重な一晩だったのに全く記憶がないなんて勿体ない……」
「アホか……」
拓真は、人に散々迷惑をかけた上に前日の記憶がスコンと抜けている和葉にすっかり呆れていた。
しかし、その直後。
近所を巻き込むほどの騒動を起こした事を、延々と聞かされる。
耳を塞ぎたくなるような現実は、残念な事に取り返しのつかないところまで到達していた。
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